1996年4月30日号

(No.112)


                     Nutsの表紙です



『VOICE』

@Nuts編集部さま
 初めまして。Nuts愛読1カ月半の新人です。
 「日本人女性のつきあい方」について、いろいろと討論しているようです が、ある一人の女、私の意見を聞いて下さい。
 「日本人女性が好きなのは、アメリカ人(白人)だけですか?」の問いに ついて。私は、まだNY(アメリカ)に来て、日は浅いのですが、たしかに、 アメリカ人(白人)とつきあってる女性は多いですね(黒人の方も結構いま すよ)。アメリカ人は、たしかにセクシーだし、「かっこいい」と思います (Hの方は、よくわかりませんが)。でも、私の好きな人は、チャイニーズ です。・・・といっても幼い頃からアメリカに住んでいるので、性格は、ア メリカ人ですね。レディーファーストで、いろいろ気が利くし、いつも楽し ませてくれます。・・・ということは、私もアメリカ人が好きなんでしょう か。日本人よりアメリカ人の性格の方が好きですが、外見は東洋人の方が私 は好きです。日本人男性諸君、頑張ってくれ! 
 それと話は違いますが、こっちの日本人の店員さんに冷たい態度をとられ ることが多いのですが、どうしてなんですか?「NYまで来て日本人と仲良く しなくてもいいわ。」と思ってるんでしょうか? おかげで私も日本人に対 して冷たくなりそうです。                      From Spring
@以下にご紹介する文は、あるお坊さんがご自分の講演会の内容を書き起こ したものです。なかなか味わいのある内容ですので、ご本人の了解を得て、 ここに掲載します。じっくりお読みください。
 では、どうぞ。              編集人
『子供は他人が育てる』
 私が甥の結婚式に招かれた時の話である。甥は三流の大学をやっと卒業し、 大阪のちっぽけなスーパーに勤めていたが、そこで知り合った女性と職場結 婚することとなったのだ。
 父親は甥が中学の時に事業に失敗したため不幸な環境に育った。気の毒な ことに、不運は成人してからもついて回り、同僚は店長になっているという のに、ぼんくらのせいか、甥には未だにそんな話はない。しかし、私は商売 人としてはおもしろい男だと、子どものころから目をかけてきた。
 その甥が突然電話をかけてきて、「実は結婚することになりました。結婚 式に出てもらえませんか」といってきたのだ。
   結婚式に出るのは初めてではなかったが、私は、この甥の結婚式ほど感激 させられたことはない。職場結婚だったから、直属の上司が出席していて、 人事課長と名乗る中年のご婦人がマイクを取って、花嫁に祝辞を述べた。
 「今日の貴方は、とても綺麗ですよ。」という優しい思いやりのある言葉 の後で、彼女はこう続けた。「私は、この話を今日この席で申しあげようか、 どうしよかと、今、まだ迷っております。でも、口にしてしまった以上、申 しあげなくてはいけない。ここまで言ったのですから申しあげますが、もし、 お気を悪くされる方がおられましたら、めでたい席に免じてお許し下さい。
 「みつ子さん(花嫁の名)おめでとう。私が貴方に初めて会ったのは、今 から七年前、貴方が十八、高校を卒業してまもなくのころでした。ところが、 貴方が私の部署へ配属されてきたときに、私は貴方を見てびっくりしました。 貴方は何も知らない、全く役に立たない、でき損ないだったからです。
 「あれから七年。今、結婚して、聞くところによると、子供が出来たら会 社を辞めるという。辞められては困るのです。今、私の課では、貴方がいて くれなければ一番困るのです。
 「ところで、こういう貴方に育てたのは私です。私がどんなに厳しく貴方 を教育してきたか、それを今ここで、ご披露したいと思います。みんなの前 で、私がどんなに貴方を叱りつけ、怒鳴りつけたか。貴方は私が叱り終える と、逃げるようにトイレへ泣きにかけ込んでいく。私はその姿を何度も見ま した。今、振り返ってみて、私は貴方に心から感謝したいと思います。私が 叱った翌日、貴方は決まって誰よりも早く出社してきて、私が机に座るなり、 「昨日は有り難うございました。頑張ります。どうぞ宜しくお願いいたしま す。」と、みんなに聞こえるよな大きな声で、私に言ってくれました。
 「できの良い人間ならともかく、私のようにできの悪い人間が、貴方にそ う言われたとき、どれほど救われたことか。私は貴方によって、上司らしい 上司にしてもらったような気がするのです。いつまでも、私に叱られている ときの気持ち、素直なかわいい貴方でいてほしい。これを、貴方に送るはな むけの言葉にさせていただきたいと思います。」
 私は、花嫁をじっと見ていた。どんな顔をして聴いているのか、興味があっ たからである。彼女は、殆ど瞬きをしなかった。そして、上司が話し終わる と、その人の前に行って抱きついた。それは、まるで四つ、五つの女の子が、 母親の膝に取り縋(すが)って泣きじゃくるよな格好であった。
 祝辞の間、瞬き一つせずに上司を見つめていた花嫁の顔を見て、私には分 かったのである。上司が花嫁に「今日の貴方は、綺麗です。」と言った理由 が。若い女性が真剣な顔をしている。それは、誰が見ても美しいものなので ある。
 花嫁は、もう声を上げてわんわん泣いた。その姿を見た私は、今日の末席 に座っている両親でさえ、自分の子にこんな目で見つめられ、こんなふうに 抱きつかれ、泣かれたことがあっただろうかと思わずにはいられなかった。
 子供は親が育てるのではない。実は、他人が育てるのである。最近の親た ちは、子供に「立派な人になれ」とは言わない。何故かと言えば、子供に 「じゃあ、お父さんは立派ですか、お母さんは立派なんですか」と質問され ると困るからである。「周りの人に迷惑をかけない人になってくれ」。これ が精いっぱいのところであろう。
 学校の先生にしてもそうだ。生徒から「先生は立派な人になっているんで すか」と反問されたとき、返答に窮してしまうからである。それで無難に 「みなさんは、人様に迷惑をかけないような人間になって下さい」と言う先 生が多いのではないだろうか。
   しかし、私は、子供に対して、こんなにつまらないことを二度と言わない ようにして頂きたいと思う。何故かと言えば、私たちは他人に一切迷惑をか けずに、一日だって生きていくことは出来ないからである。子供たちにはこ う言って頂きたいものである。
 「お前が大人になるまでには、周りの人たちに、どれだけ迷惑をかけるか 分からない。でも、そんなお前を育ててやろうという人が必ずいる。お前が どんなにバカなことをしても、血迷ったことを口走っても、それを許してく れ、じっと見守ってくれる人がいるんだ。だから、お前が大人になっても、 決して自分独りの力で一人前になったなんて考えちゃいけない。お前の周り のそういう人たちに支えられ、見守られて一人前になるんだから。もし間違っ て、お前が一人前になったら、今度はお前が人を育てなくちゃいけない。お 前は、この世の中で役に立つ人間になりなさい。世のため、人のために役に 立つ人間にならなければいけない」と。
 「世のため、人のため」という言葉は抽象的な響きがあって迷わされる人 が多いが、なかなかリアリティに富んだ言葉である。日常生活の中で、これ を自分のものとして身につけ、常に周りに訴える生き方、価値観を持つこと が大切である。それが、自分をつくり、人をつくる。
 甥の嫁は、いい上司に出会えた。彼女は、自分の子供に「人様に迷惑をか けない人になりなさい」とは言わないだろう。
 私は、何とも言えぬ嬉しい気分になって、式場のホテルを出たのだった。
                              @編集人です。
 最近、インターネット上の「NY Nuts Mailing-list」では、「茶髪くん (”チャパツ”と読む・・・はず。)」の話で盛り上がっております。
 この「茶髪くん」ですが、別にアメリカ人のことではありません。日本人 で、髪の毛を茶色に染めてる若い衆(男の子)のことを「茶髪くん」と呼ぶ らしいです。まあ、日本の人たちが「あの子の彼さあ、”茶髪くん”でさ あ・・・」なんて使い方をする時は、おそらく「髪の毛が茶色である」とい う意味以上のものが含まれているのでしょうが(例えば、”遊んでる”だと か”ちょっと不良っぽいけど、結構マジメ”などという意味)、なにはとも あれ、「茶髪くん」という言葉が、現在、日本には存在するのであります。
 で、先日、わたくしが、イースト・ビレッジの居酒屋に行きましたところ、 この「茶髪くん」と思われる若い衆たちが、結構しましてですね、それを見 て、私、「なるほど。ニューヨークにもいらっしゃいますか。でも、ええカ ンジやね。がんばって、がんばって。」と思いまして、そのことをMailing- list上で書いたのであります。そしたら、アナタ、来ましたよ。私の「ええ カンジやね。がんばって、がんばって!」に対する異論、反論が。
 例えば、「彼らは、遊びほうけている。人生の貴重な時間を無駄遣いして いる。」とか、「なぜみんな”右向け右”で同じ髪の毛の色にしなければい けないのか。」などなど。
 この「茶髪くん」の話、なかなか面白そうです。そのうち、じっくりお話 ししたいと思います。
 話は変わって、次は国際結婚軍団の第2回の集合について。
 集合しましたよ。チャイナタウンでね。今回の参加者は12名。みんなで 丸いテーブルのを囲んで戦争のように食べました。
 この12名の内訳ですが、女性11名、男性1名となっております。要す るに、男性は、わたくし、ひとりだけだったのであります。まあ、別にそれ でもいいのですが、わたくし、ときどき「男の人、欲しいわね。」などと考 えてしまいます。どっかにええカンジの男、おらんかなあ。
 また、参加者からひとつ話がありまして、彼女たちのパートナー、つまり、 ダンナさんか婚約者が、この会の集合に参加したがってるらしいのです。全 員がそうだ、というわけではありませんが、数人の方が、そのような希望を お持ちとのこと。う〜ん、面白い。ちなみに、ウチの場合は、私が「今度、 国際結婚してる日本人の集まりがあるんだ。」と言いましたら、「ケッ!」 と鼻で笑われてしまいました。
 人生、我慢が大切。
 そのうち、「みんな揃って集合」作戦も決行する予定です。
 今週は、こんなもんです。では、また来週。   編集人 
@「映画って、ひとの人生、変えちゃうよなあ」。
 先日、オレは映画「JAWS」を観ながら、ひとり、そうつぶやいた。
 今から十数年前の高校1年の冬、オレは、この映画を観た。実を言うと、 そのせいで、オレは、今、ニューヨークにいる。
 あれは、冬の寒い日のことだった。オレはいつものように、土曜の深夜放 送で映画を観ていた。題名は、「JAWS」。初めて観る映画だった。
 ショックだった。それは、あまりにもリアルだった。その映画を観ながら、 オレはコタツの中で、ひとり震えていた。
 映画が終わっても、その恐怖感はオレのココロを離れなかった。
 映画の後、トイレに入った。でも、股間の下にある水面から、あの7メー トルもあるJAWSが出てきそうで、出すべきモノも出せなかった。
 気分転換に風呂に入った。湯船につかりながら目をつぶると、その風呂が、 あのJAWSのいる海にワープしそうな気がして、慌てて目を開け、風呂から 逃げ出した。
 布団の中に入っても、その恐怖感は、オレの血管を流れ、身体全体に震え として残っていた。
 憎かった。オレをこんなにも恐怖させたサメが憎かった。そんなことを考 えてるうちに、オレは、深い眠りに落ちた。
 そして、次の朝、昨夜の恐怖感をまだ微妙にココロに感じながら、オレは 強く自分に誓ったのである。「よし! オレは将来、サメ狩りの漁師になる ぞ!」と。
 結局、それがキッカケで、オレは琉球大学海洋学科へと進んだ。目的は、 「あのサメどもをやっつけること」。タイとかエビには興味なかった。サメ だけだった。サメだけのために、オレは沖縄に渡り、復讐の牙を研ぎ始めた のだった。
 しかし・・・。
 机の上で勉強していたことは、オレを満足させてはくれなかった。それは、 オレの目的のためにはまったく役に立ちそうになかった。そして元来の人嫌 いも重なって、オレは、ひとり離島に逃げ、海と共に生活し始めた。
 それから、オレの人生には、いろんないろんな事が起きた。タイ式ボクシ ングをタイに修行しに行ったり、インドにガンジス河を見に行ったり、チベッ トに密入国しようとして失敗したり、中国で自転車にひき殺されそうになっ たり、上海から神戸に向かう船の上から飛び降り自殺しそうになったり、ホ ントにいろんな山とか谷とかが、オレの人生に現れた。
 これらの人生のデコボコの続きで、オレは、今、ニューヨークにいる。で も、出発点となったのは、あの「JAWS」だった。言い替えるなら、あの冬 の日に持った恐怖心のせいで、オレは、ニューヨークまで流れてきたのであ る。
 ひとつ付け加えておくと、オレがサメ狩りの漁師にならなかったのは、はっ きり言って、サメが恐かったからである。沖縄の離島で漁師をしてる時、水 中で見事にサメとご対面した。その時に思った。「この方たちに逆らうのは よそう」って。
 そして、先日、「JAWS」の中で、サメ狩りの漁師が、JAWSに痛そうに 飲み込まれていく風景を見ながら、自分の選択が間違っていなかったことを 確信した。
 十数年前のあの冬の日、もし「JAWS」を観なかったら、オレは今頃、ど こで何をしているのだろう。もし観たのが「昼下がりの団地妻・酒池肉林編」 とかいう映画だったら、それからのオレの人生は、一体どんなふうに変わっ ていたのだろう。
  「JAWS」のおかげでニューヨーク。そう考えると、あの憎たらしいJAWS の顔も、少しは愛らしく見えた。
 ちょっと曇り空の日曜の午後、「JAWS」を観ながら、オレは、そんなこ とを考えていた。                                 ひろ

『今週の歌』

「わがチーム その名も”レッドスナッパーズ”                 ちょっと字余り そこは勘弁」                                ひろ

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Hiroyuki Takenaga ---hiro@interport.net