1996年12月24日号(No.146)
Nutsの表紙です
目次
*『在外投票問題のミソ』
*『ひとりごと・ボランティアについて』
*『今週の歌』
********************
『在外投票問題のミソ』
さて、「在外投票問題のミソ」なのであります。
カタイ話ですが、一応、分かりやすくは書きます。でも、今回は、かなし突っ
込んだ話をしますので、政治に興味のない方はご注意ください。
では、参りましょう。
皆さんご存じの通り、先月、海外の日本人有志53名が日本政府を提訴しました。
理由は、「海外に住んでるという理由だけで、基本的人権のひとつである選挙権
を剥奪された」というものなのであります。
まあ、これは、私たちの必殺技だったわけです。「この一突きがきっかけと
なり、政府が在外投票制度を作ってくれたりなんかしたら、とってもハッピー。」
という読みがあったのであります。
でも、ここでは、訴訟の件はちょっと横に置いておくのであります。
今回、お話しするのは、この「在外投票問題のミソ」、つまり、「何で制度が
できないか、誰が反対してるのか、何が原因で反対してるのか、制度ができる
可能性はあるのか」についてなのであります。
その「在外投票問題のミソ」を考える時、重要な要素が3つあります。
1)自民党
2)創価学会
3)白川勝彦自治大臣
では、まずは「自民党」から、在外投票制度問題におけるその重要性をご説明
しましょう。
現在、あるひとつの政党を除けば、日本の政党は、すべて「在外投票制度、
さっさと作ろうやないか。」派なのであります。その「あるひとつの政党」と
いうのが、自民党なのであります。
彼らは、別に正面切って、「反対! 反対!」と叫んでおるわけではありませ
ん。基本的には、「まあ、賛成やね。」なのであります。また、彼らは、長年、
与党としてやってきたわけでありまして、その分、この法案を実際に施行する、
つまり、約百万人ほどの海外在住日本人が、実際に投票する難しさというものを
知っております。そのため、「すぐにやっちゃいましょうか。」などと簡単に
発言できないということもあるのでした。
でも、です。自民党の中には、海外に住む日本人に選挙権の行使を認めること
を快く思わない人々も、実際、いるのでありました。で、この人々というのが、
自民党が「在外投票制度、さっさと作ろうやないか。」派に積極的に踏み込め
ない理由なのでありました。
では、彼らは何故「選挙権なんかあげられるか!」などと考えているのでしょ
うか。
ひとつの理由は、彼らが保守思考であるということ。彼らは、「海外に住む
日本人なんちゅうのは、国を捨てた人間なんやから、選挙権なんかあげる必要
ありませ〜ん。」と考えております。よって、彼らは、「在外投票制度反対」。
もうひとつの理由は、「一部の東京出身の自民党議員が海外票の影響を恐れて
いる」ということ。海外に住む日本人が選挙できるようになったとして、その
選挙先が、日本の最終所在地になった場合、その票はおそらく東京に集中します。
なぜなら、駐在員の方々のほとんどは、東京が最終所在地だからなのであります。
そうなりますと、かなりの数の海外票が、東京に流れ込むことになります。
でも、東京出身の議員さんたちも海外にまで選挙運動に出るわけにはいきません
し、かと言って、ほおっておくわけにもいかん、という難しい状況に追い込まれ
るのであります。となると、「そんな面倒くさいものだったら、私たち、いら
な〜い。」と考えるのが人間です。よって、彼らは、「在外投票制度反対」に
傾いてしまうのでありました。
では、そろそろ、自民党の「在外選挙権、簡単にあげません」的姿勢のもっと
も強力な理由をご紹介しましょう。
この秋、ここニューヨークで、自民党の加藤紘一幹事長の講演会がありました。
わたくし、「もしかしたら、何か話せるかもしれないわね。」などと考えまして、
その講演会にノコノコ出かけて行ったのであります。
講演会が終わった後、その会場で軽いレセプションが行われました。問題の
加藤幹事長もそこでいろんな方々と楽しくおしゃべりしておりました。わたくし、
ここぞとばかり、汚ないGジャン姿で彼の近くに忍び寄りまして、「こんち
は〜。」と話しかけたのであります。
その時の会話は以下の通りです。
「はじめまして。わたくし、こちらで在外投票権の運動をしております竹永と
申します。(と言って、名刺を差し出す)」
「あ、そう。なるほど、なるほど。」
「(単刀直入に)加藤さん、ぶっちゃけた話、どうなんですかね。やっぱ
この制度作るのって、難しいんですかね。」
「う〜ん、難しいね。やはり問題は、何と言っても”創価学会”だね。」
「やっぱ”創価学会”ですか・・・。」
「う〜ん、”創価学会”を怖がっている議員が自民党の中にいるからね。彼ら
が反対している。」
「そうですか・・・。」
その後、なんだかんだと話をして、最後に「なにはともあれ、早いとこ作って
頂けるよう、よろしくお願いします。」と言って、私はその場を離れたのであり
ます。
この加藤幹事長、在外投票問題について、かなり知っている様子でした。また、
本人も外交畑出身ということもあり、この問題にはある程度の理解を示していま
した。少なくとも、彼は「反対」ではありません。
さて、本題に入りましょう。
一部の自民党議員が、在外投票制度の実現に反対している最も大きな原因は、
「創価学会」なのであります。正確に言いますと、「海外における創価学会の力」
なのであります。
Nutsの読者の方々も、一部の創価学会の会員が、日本の選挙時に「集票マシー
ン」として動いていることは、ご存知のことだと思います。彼らは、家族、
親戚、友人などに電話して、特定の議員、あるいは、党への投票をお願いしたり
するのであります。要するに、選挙の時は、「政治団体化」するんですな。
こういう創価学会の「選挙時の政治団体化」の風景を常日頃見ている政治家
たち、特に、一部の創価学会嫌いの自民党議員たちは、「わしらが支部も何も
持たん海外で”あれ”をやられたら、こりゃたまらんわな。」と考えるのであり
ました。
これまで私がこの在外投票運動をやってきて感じたのは、「日本の政治家さん
たちの頭の中には、海外の日本人は創価学会に支配されているというイメージが
ある」ということでした。
これは、マスコミ、特に週刊誌などが流すニュースによるものだと私は思い
ます。ほら、よくやってるじゃないですか、「海外の日本人学校は、創価学会の
巣」だとか。そういうワケの分からんニュースの影響で、ありがたいことに
日本の政治家さんたちの頭の中は、「海外は創価学会」のイメージで汚染されて
るのでありました。まったく、この人たちは、マスコミを疑うってことを知らん
のかね。
私は、「海外の日本人の中には、創価学会員はいない」などと言うつもりは
ありません。います。間違いなくいます。海外では、創価学会は、「創価学会
インターナショナル(SGI)」と呼ばれており、その支部は、世界各地にあり
ます。
でも、一方で、それは、「海外に住む日本人のほとんどが創価学会員」という
ことでもありません。その比率でいくと、私は、日本の「会員:非会員」の比率
と大してかわらないと思います。日本にいるように、海外にも創価学会員がいて、
日本にいるように、海外にも非創価学会員がいるのであります。
ただ、海外に住む日本人創価学会員が、選挙時に「集票マシーン」に変身する
可能性を否定することは、誰にもできません。まあ、海外に出てまでそんなこと
をやってる人間に大したことができるとは思えませんが、とりあえず、そこには、
創価学会嫌いの自民党議員にとっての「危険」が潜んでいるのでありました。
よって、彼らは、「在外投票制度反対」なのでした。
ここまでお話ししたことが、「何故、在外投票制度がすんなりできないか」、
要するに、在外投票問題に関する悪い話なのでありました。
では、最後に、いい話をひとつ。
「在外投票問題のミソ」の最後のネタは、「白川勝彦自治大臣」についてです。
私は、この白川自治大臣、かなり脈があるとニラんでおります。「脈がある」
というのは、「この人なら在外投票制度、作れるかもしれんぞ。」という意味です。
ちなみに、この在外投票制度は、自治省の管轄です。
まず、白川自治大臣のプロフィールですが、次のような感じになります。
「自民党議員、東大出、元弁護士、自称”リベラル”、51歳」。派閥的には、
先にお話しした加藤幹事長のグループに属し、噂では、加藤幹事長の側近との
ことでした。
私が、「この自治大臣、なかなかオイシイな。」と思っている理由というのが
いくつかあります。
まず、若いということ。動けますし、考え方もある程度柔軟です。
次に、元弁護士であるということ。元弁護士であるからには、私たちが訴訟を
起こした意図、そして、それに伴なう影響、裁判の結果なども予想がつきますし、
また何よりも、以前、弁護士という市民の側に立つ人間として働いていたという
ことが重要な意味を持ちます。
そして、自称とは言えども、”リベラル”であるということ。この白川自治
大臣が、どのくらいリベラルかと言いますと、それは、先日、発表された「在日
外国人地方公務員制度」に関する白川自治大臣の見解を見れば明らかです。
先月、白川自治大臣は、「在日外国人地方公務員制度については、各自治体に
任せる」という主旨の見解を示しました。私、これはほとんど「革命」だと思う
んですよ。
これまで、在日外国人は、日本の地方公務員にはなれませんでした。川崎市や
高知県などでは、各自治体に先駆けて、在日外国人地方公務員制度の導入の動きを
見せていましたが、日本全体で見た場合は、この動きはまだまだマイナーなもの
でした。
制度反対の理由は、いろいろありますが、基本的には、保守派お得意の
「日本人純血主義」によるものでした。
ところが、です。この白川自治大臣が、それに一気にカタをつけてしまったの
です。要するに、「ま、この件については、あんたたち(地方自治体)に任すよ。
別に悪いことじゃないんだから、やりたいとこは、やったらいいじゃん。」と
いう意味のことを発表してしまったのであります。
案の定、その発表が行なわれた直後、自民党内で反対の声が上がったのですが、
白川自治大臣は、言ったことを引っ込める気配はありませんでした。
ここが非常に大切なのであります。つまり、「無茶ができたり、突っ走ったり
できる」ということが、在外投票制度実現のためには是非とも必要なのでありま
す。
はっきり言いましょう。優柔不断で日和見主義的な人間が、何人自治大臣に
なっても、この在外投票制度はできません。また、私たちが、訴訟を起こそう
とも、海外でどんなに騒ごうとも、自治大臣がアホンダラである限りは、この
制度はできません。つまり、この制度の実現の最大のカギを握るのは、「自治
大臣」なのでありました。
今の日本の政治において、制度やシステムを変えようとする時、一番効果的な
方法は、「生きのいい大臣を担当省に送り込むこと」だと私は考えています。
これは、管直人前厚生大臣の例を見れば明らかです。無茶苦茶なことをやれる
大臣を送り込めば、システムはある程度変わります。
ここ2年ほど、私たちは、「若くて生きのいい自治大臣」というのに恵まれま
せんでした。そして、今、待ちに待った「若くて生きのいい自治大臣」らしき
人物を迎えるに至ったのであります。
噂によると、この白川自治大臣、在外投票制度に非常に積極的姿勢を見せて
いるそうです。すばらしいではありませんか。「在日外国人地方公務員制度」と
いう無茶のついでに、「在外投票制度」という無茶もやって頂きたいものです。
来年に入ったら、この白川自治大臣に対するアプローチを始めます。もし、
彼が、来年に入って、「今年中に在外投票制度、やっつけんど〜」なんて発表を
したら、わたくし、「白川自治大臣がんばって」運動でも始めまっせ。
今は、とりあえず、様子を見ます。
はい。
以上が、「在外投票問題のミソ」話です。年の暮れに、こんなカタイ話をして、
まことに申し訳ありません。でも、屁の話を大々的にするわけにもいかんし、
難しいとこですな。ハッハッハ。(笑ってごまかす年の暮れ。)
てなとこなのであります。
ちまたは、思いっきりクリスマスです。それにしても、今年は観光客が多いの
ではないの。ロックフェラーセンターの近くなんか歩けもしないざます。
でも、こうやって観光客の皆様がお金を落としていくおかげで、私たちニュー
ヨークの住人たちは、のんびりとしたクリスマスとニューイヤーズを迎えること
ができるのでありました。
ですから、目の前をチンタラ歩く観光客の方々に遭遇したとしても、プッツン
切れてはいけません。彼らがゆっくり歩けば歩くほど、ニューヨークは、潤う
のでした。
今週は、そんなところです。
では、また来週。 編集人
*********************
『ひとりごと』
@「ボランティア」について考えてみた。
私は、何の因果か、いろんなボランティア活動に首を突っ込んでいる。理由は、
おそらく、人々から直接的に感謝されたいためだと思う。自分では、そういう
意識はないのだが、無意識のうちに、感謝の気持ちを求めていのだろう。
世の中には、いろんな社会貢献(この言葉はかなり重いが)の方法がある。いい
洗濯機を作るのもひとつの社会貢献だし、安い航空券を売るのも社会貢献である。
でも、それらは、あくまでも間接的な社会貢献である。直接的な「感謝、感謝」
の気持ちに出会うことは稀だ。
私は、それでは満足できないのだと思う。どうぜ感謝されるなら、「感謝の
機関銃」で撃ち殺されるぐらい感謝されたいのだろう。よって、ボランティアと
いう直接的な感謝の得られる活動に首を突っ込む。つまり、欲が深いのである。
だから、最近は、「なんでボランティアやってるんですか?」などと聞かれる
と、「欲が深いからだよ。」と答えるようにしている。
「欲が深いから、ボランティア」。
一応、自分では、納得している。 ひろ
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『今週の歌』
「5年前 黒い海面 見つめつつ
死のうと思った クリスマスイブ ひろ」
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