1997年4月1日号(No.160)
Nutsの表紙です
目次
*『VOICE』
・投書「オザケンについて」
・投書「最近の日本のテレビ番組について」
・編集人「ぶりてんNutsについて」
・ひとりごと「”アイツにだけは負けられない。”の問題」
*『今週の歌』
**********************************
『VOICE』
@大阪の就職先の出版社でオザケンの「音楽性」について話し合ったとこ
ろ、さまざまな意見が出た。「あいつを年末のテレビでみたときは、ぶち
切れましたわ」「あれは一種の騒音公害やな」などなど。オザケンに批判
的な意見がたまたま多かったような印象をもった。
私の勤め先は、中央官庁に批判的な人がたまたま多く勤務しているので、
オザケンが東大卒であることの意味についての議論もあった。「東大卒や
から売れてるんやろか」と、わが上司。「うーん。歌が暴力的に下手な”
歌手”オザケンが売り出された背景には、音楽産業に東大卒の人間が増え
ている側面もあるかもしれませんね」と新人編集者の私。
「なるほど。音楽産業の官僚化が進んでおり、そのシンボルとしてオザ
ケンが登場した、というんが君の考えというわけやな。それにしても、オ
ザケン本人が自分の歌唱力をどう思っているのかが気になるところやな」
「うーん。東大卒ですから、自分の実力くらいは知っているんじゃない
んでしょうか。そのうえで開き直って、暴力的に下手な歌を公共の電波で
流して、金を稼いでいると思います。オザケンは、商品の質が低くても売
れればいいじゃないか、という日本特有の資本主義で理論武装しているよ
うな気がします。同じ論理で成功した芸能人の生き方から学んだことを、
愚直なまでに実践しているとも考えられますね。見方を変えれば、アメリ
カのような厳しい批評にさらされた上での、競争原理が日本では働かない
のを知った上で歌っている確信犯ではないでしょうか」
「そうやろうか。相手は東大卒やで。自分の無能に気づかない連中が多
いのは、厚生省や大蔵省のキャリア組をみれば明らかや」
「つまり、本人は自分の歌がうまいと思い込んでいる、と・・・」
「その可能性はあるやろ。無能な東大卒の官僚たちが、自分を有能と思
い込んで好きなようにこの国をいじくりまわした挙げ句、日本を滅亡に導
いているのと同じ構造やな」
「つまり、オザケンは日本の音楽文化が滅んだことを知らせる”使者”
ではないか、と・・・」
「ま、そういうこっちゃ」
石井政之
@最近、友達に録画してもらった日本語放送の「秀吉」を8話まとめて
みた。さすがはNHK制作だけあって良くできていた。
特に私の心に触れたのは、秀吉の母と光秀の母の姿だった。秀吉の母は
典型的な百姓で、光秀の母は教養もある武家の名門の家に育った女性。二
人はまったく違った人生を歩んできた。しかしこと自分の息子のことにな
ると、それまでの人生はまったく関係なく、母として我が子のために自分
の命を賭しても構わないというあの態度には、これでもかと言うほど心を
うたれた。あれだけきれいにそして見事に母の愛を表現した番組は私は見
たことがない、少なくとも覚えている限りでは。8話見終わるまでに何度
も目頭が熱くなり胸がつかえたものだ。この番組から私は母親は大事にし
なくてはということと母は偉大だということを改めて知らされた思いがする。
それに引き替え、私が仕事で携わっている番組(日本で放送されている
もの)のくだらないことと言ったら底無しである。先日もNY TIMESに次
のように出ていた。「日本のテレビ番組は文化紹介や教養のある番組もあ
るが最近の程度の低さはひどすぎる」という様な内容で、そのくだらない
番組の内容を説明していた。
一緒に掲載されていた写真では若い女性が2人並んでビキニ姿で胸の間
に空きカンらしき物を挟んで、それを何とか潰そうとしていた。しっかり
と顔まで写っているこの2人は自分のこの姿が世界中で見られていること
を知っているのだろうかと、見ているだけで余りの馬鹿さ加減に同じ日本
人として恥ずかしくなってきた。
その記事の中であるプロデューサーはインタビューに「今の人たちは生
活の中で精一杯頭を使って生きているので、テレビを見るとき位は頭を使
わないで見れる番組を好んでいる。」と答えていた。
なるほど、視聴者がそれを求めているのなら仕方がないか、と言いたい
ところだがそれではますます物事を考えない人間が増えてしまうのではな
いか。テレビは確かに面白いものであって構わないと思うが、その中に少
しくらいは何かキラリと光るものがあってもいいと思う。そして見終わっ
た後に、脳味噌に焼き付いたものが女性の裸などではなくて何か意味ある
ものがあってもいいと思う。創る側にはそんな状態の頭でも、その頭を使っ
てでも見たくなるくらい素晴らしい番組を創る努力をしてもらいたいもの
だ。
テレビの社会に与える影響を考えると最近の番組の質の低さ、内容の乏
しさ、構成の悲惨さは目に余るものがある。しかしこれを変えることが出
来るのは先のプロデューサーが言っているように、番組を見ている視聴者
である我々しかいない。我々が望めばそれらを変えることが出来るだろう。
プロデューサーは視聴者が見たいものを創るのだから。
このような番組で誤魔化されない様に、また「秀吉」のような得るもの
のある番組が少しでも増えるように皆がもっと厳しい目でテレビ番組に接
することを切に望むものです。皆さんはこれらのことをどうお考えでしょ
うか?
岡野健将
@編集人です。
さて、インターネット上の生活情報掲示板「ぶりてんNuts」の話なので
あります。
なんと今週から、NY版「ぶりてんNuts」の他に、LA版、SF版、シアト
ル版、ボストン版が同時にオープンするのであります。いや〜、散るとき
は、派手に散ろか。
これらの4ヵ所の「ぶりてんNuts」は、基本的にはNY版とまったく同じ
作りをしております。運営の仕方も同じで、一週間に1回、すべての情報を
削除します。
突然、「NYだけじゃなくて、アメリカの他の都市でも、”ぶりてんNuts”
展開させたら面白いんでないの。」などと考えたのには、一応、理由らし
きものがあります。
私が知る限りでは、NY以外の4都市に”ぶりてんNuts”的な機能を持
つ掲示板は存在しません。西海岸の方には、それらしきものや、もっと大
きなククリ(例えば「世界の日本人の掲示板」のような)のものもありま
すが、私から見ますと、それらはすべてが中途半端で、うまく機能してい
ないのであります。
そこで、「ぶりてんNuts」の登場なのであります。とりあえず、便利な
ものが増えるってことは、そこに住む人たちにとって非常にハッピーなこ
とでありまして、ついでに、「ヨソ者には任せておれん。わしらの力でもっ
と便利で、もっとローカル性の強いものを作ろうではないか。」などとい
う動きが起きるのも面白いのではないかと、わたくし、考えております。
ただ一方で、NY以外の「ぶりてんNuts」の将来は、これがかなり前途多
難なんですな。
まず、宣伝方法というのが限られております。現在、NYでは、各日系企
業に対する「チラシFAX作戦」というのを展開しております。「ぶりてん
Nuts」のチラシを各企業にFAXするんですな。ところが、他の都市に関し
ては、これができんのであります。だって、金ないからね。
また、それぞれの都市のローカルな情報を常時こちらから提供するとい
うこともできません。NYに限っては、このNutsを発行してるせいもあっ
て、ある程度の情報は「ぶりてんNuts」の作り手である私たちのところに
も入ってきますし、それを私たち自身が掲示することも可能なのですが、
他の都市に関しては、それができんのであります。
てなわけで、他の都市の「ぶりてんNuts」については、一人前の「生
活情報掲示板」に育て上げるのに、かなりの時間を要すると思います。で
も、何事も始めんとしゃあないからね。
各都市の「ぶりてんNuts」には、NY版から飛べるようになっておりま
す。もし読者の皆さんの中に、それらの都市に住む人をご存知の方がいま
したら、宣伝のほど、よろしくお願いします。
そんなところです。
では、また来週。 編集人
@「アイツにだけは負けられない」の問題である。
このネタは、説明が非常に難しい。なぜなら、私がこれから料理するの
は、こちらの日本経済新聞(以降:「日経新聞」)が、アメリカに住む日
本人向けに出している広告の話だからである。であるからして、その広告
を見たことのない人や、日本に住む人たちには、かなり分かりづらい話か
もしれないが、そういう人でも「ははー、なるほどね。」と分かっていた
だけるように書くつもりである。お付き合いいただけたら幸いだ。
では、本題に入ろう。
日経新聞がこちらの日本人を対象とした日系紙に出している広告の中に
「アイツにだけは負けられない」広告(命名者:私)というものがある。
その広告の外観を具体的に説明すると、まずその広告には、地下鉄の車
内の写真が大きく使用されている。そして、そこには2人の登場人物がい
る。2人とも日本人である。なぜなら、2人ともその写真の中で日経新聞
を読んでいるからである。
ひとりは女性である。スーツを着込んだ彼女は、こちら、つまり、広告
を見る人に対して正面を向くようなカタチで、席に座りながら日経新聞を
読んでいる。
もうひとりは男性である。彼もスーツを着ている。ただ、その写真の中
には、彼の背中と日経新聞を握り締める右手しか写っていない。
つまり、その絵柄というのは、ひとりの日本人女性が席に座って日経新
聞を読んでおり、その手前(広告を見る側からして)でも、ある日本人男
性がこちらに背を向けながら、日経新聞を読んでいるのである。
そして、その写真の中にはこういうコピーが縦書きされている。
「アイツにだけは負けられない。」
この言葉は、前記の両者(女性と男性)の真ん中に書き込まれているの
ではない。背を向ける男性にかぶせるように書いてある。私の印象とすれ
ば、その男性が心の中で思った言葉のように取れる。
てなわけで、この広告から私が受ける印象をストーリー風にまとめると
こうなる。
「今日も出勤。朝、地下鉄に乗る。おや、あそこに座っているのは、同
じ会社のA子じゃないか。手に持って読んでいるのは日経新聞。マジメに
勉強してるんだな。オレも読もう。なんせ、”アイツにだけは負けられな
い”からな。」
まあ、あくまでも私の個人的解釈ではあるが、一応、これが「アイツに
だけは負けられない」広告の全貌なのである。
実を言うと、この広告を見て、私は2種類の感想を持つに至ったのであ
る。
ひとつは、「うむ〜、女性の社会進出もやっと本物になってきたのう。
この男性は、その女性のことを”ライバル”という風に捉らえておる。男
性と女性がビジネスにおいて競争し合う風景。すばらしいではないか。時
代も変わりつつあるのかのう・・・。」というものである。要するに、写
真の中の日本人男性は、その日本人女性をライバル視してるわけで、ビジ
ネスの世界で日本人女性が日本人男性のライバルになるくらいに地位が向
上したというのは、喜ばしきことではないかね、という理解の仕方である。
もうひとつの感想はこうである。「それにしても、”アイツにだけは負
けられない”の”にだけは”が気になるのう。それって、”アイツはオン
ナだから、アイツにだけは負けられない”という意味の”にだけは”なの
かしら。もしかしたら、”他のオトコには負けてもいいけど、アイツはオ
ンナだから、アイツにだけは負けられない”って意味かもしれないし。そ
したら、アンタ、この男性って、ケツの穴小さいんじゃない。ついでに、
こんな広告出す日経新聞なんてサイテーよね。」
日本人男性は、私も含めて、一般にはまだまだケツの穴が小さい。その
ケツの穴の小ささを考えると、こういう理解の仕方も十分に考えられるの
である。
以上のように、この「アイツにだけは負けられない」広告は、まったく
正反対の取り方が可能な広告なのである。ある意味で、わけの分からん広
告なのだ。まあ、広告制作者側が読者にいろいろと考えさせるために作っ
たのであれば、その狙いは当たったのであるが、広告を「メッセージ」の
一種と考えれば、その「メッセージ」はあまりクリアーではなく、読者側
に「お前は一体何が言いたいんじゃ!」という声が出るのも、もっともな
のである。
私が思うに、こういう分かりづらい広告よりは、同じ絵柄を使いながら、
もっと分かりやすい広告を作ったらどうだろか。
たとえば、その同じ写真の中で、向こう側に座っている人が「ウォール・
ストリート・ジャーナル」を読んでいる。そして手前の人が日経新聞を読
んでいる。で、そのコピーが「アイツにだけは負けちゃうかな」である。
また、こういう使い方もある。この場合は、向こう側に座っている人が、
こちらの地元の日系ビジネス紙である「US JAPAN ビジネスニュース」を
読んでいる。そして、そのコピーは、「アイツなんか相手にならない」で
ある。
一方で、US JAPAN ビジネスニュース側としては、こういう逆襲の仕方
もある。向こう側で誰かが日経新聞を読んでいる。こちら側では別の人が
US JAPAN ビジネスニュースを読んでいる。そのコピーは「アイツなんか
ヨソ者さ」。
さらにこれを日経新聞ではなく、他の出版物に置き換えると非常に面白
くなる。
たとえば、その広告の中で、片方が「読売新聞」、もう片方が「朝日新
聞」を読んでいる。そのコピーは当然、「アイツにだけは負けられない」
となる。
これは別に、片方が「OCSニュース」を持ち、もう片方がこの「週刊
Nuts」を持ちながらの「アイツにだけは負けられない」でも、私は一向に
構わない。
最近、NYの破壊的ミニコミである「AKISU」に、その紙上で散々悪口
を言われているエンターテイメント誌「コロン」の場合だったら、向こう
側の人にAKISUを持たせ、こちら側の人にコロンを持たせて、こういう
コピーを付けることができる。「アイツだけは勘弁ならねえ」。
NYの日系メディアに掲載されている広告には、ピリリとパンチのある、
気の利いた広告が見当たらないのである。
世間体だの社の方針だのがあるのもよく分かる。でも、広告はあくまで
も「メッセージ」である。読者を思わずニヤリとさせてしまうようなメッ
セージ力の強い広告を作って欲しいと私は思うのである。
「Nuts広告大賞」でも始めようかしら。 ひろ
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『今週の歌』
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