1997年4月22日号(No.163)


                     Nutsの表紙です



目次

*『VOICE』 ・投書「日本語と英語」 ・投書「ある日系食料品店にて」 ・編集後記 ・ひとりごと「続・トイレの問題について」
*『今週の歌』
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『VOICE』

@「日本語と英語」
 先日、Nuts誌上で「英語の方が、日本語よりずっと奥が深い」というよ うな聞き捨てならない投書があった。日本語と英語は全く異なる歴史、文 化を背景にした、全く異質な言語である。文面から察するところ、別に2 つの言語に通暁した専門家というわけでもなさそうなのに(専門家だった ら、もっと致命的だが)、よくまあ、あんな自分の無知をさらけ出すよう なことが書けるものだと感心した。自分の語彙の貧しさと、英語/日本語 の構造的な違いを完全に無視した短絡的な結論と言わざるを得ない。
 確かに日常生活では、平均的日本人よりも、平均的アメリカ人の方がは るかに多くの種類の語彙(単語)を使って生活しているのは確かだと思う。 しかし、語彙に関して言えば、明治時代の小説、例えば夏目漱石や森鴎外 などの文章、または近代以降の俳句や短歌に見られる表現等を見ればわか るとおり、日本語自体が貧しいのではなく、多くの日本語を捨ててきた現 代人の語彙が貧しいだけである(そのかわりカタカナ単語は増えたけどね)。
 また構造的な違いも大きい。日頃、英語の文章を書いたり、訳したりす る時に強く感じるのだが、同じような表現をするのに英語というのは本当 にいろんな単語を駆使する。しかしそれは英語の方が奥深いからではない。 英語という「ルールに厳格」な言葉で、微妙な表現をしようと思えば、使 う単語の数を増やすしかない。いわば必然的な進化の結果なのだ。だから 単語の数は英語の方が多いかも知れないが、「表現」の数はそんなに変わ らないと思う。例えば、二人称単数を表わす場合、英語はほとんどYouだ けである。たまにYaとかYoとかあるが、それは一種のナマリのようなも のである。ところが日本語だと、「あなた、君、お前、てめえ、貴様、 お主、そちら・・・」などと変化する。当然、「You」一語で上記に相当 するニュアンスを出すのは不可能である。するとどうなるか? 付属する 単語の数を増やすことでカバーすることになる。英語はそのようにして 進化してきたと思う。例えば、"My sweetheart" とか"You, son-of-a- bitch"といった具合に。
 また、英語の場合、「1単語あたりの発声時間が日本語に比べ極めて短 い」という点も大きい。各単語が短くてすむから、多くの語彙を駆使した コミュニケーションも可能になるかと思う。実際、"My sweetheart" は、 2単語で3シラブルだが、「あなた」は1語で3シラブルもある。
 もちろん、「時雨」などのように英語にはない言葉もあれば、「のろけ る」などといったように直訳不可能な言葉もある。これは逆の場合でも、 同じだろう。そもそもカタカナ単語のほとんどは日本語になかったわけだ し、経済や哲学といったのも、明治以後の造語なわけで、数の上では明ら かに輸入超過だろう。しかしその分、昔の言葉を捨てていったわけで、そ れを全く無視して、「英語の方が、日本語の方が・・」と叫ぶのは空虚で ある。
                                                                             原口光弘
@週刊Nuts編集担当殿
 ミッドタウンのある日本食料品店に行った。久しぶりに焼きそばでも作 ろうかと、生麺を物色したが、「生物なのでお早めにお召し上がり下さい」 なんて印刷してある割には、どこにも賞味期限が書いてない。隣に置いて ある生ラーメンは「賞味期限15日」とあったが、製造年月日はどこにも ない。同じ場所にあった生うどん、チャンポンなどを丹念にチェックした が、いつ作られていつまで食べられるか不明なままだ。
 しばらくして「賞」という一文字がシールの下からのぞいているチャン ポンを見付けた。原材料を書いた英語のシールが上から貼ってあるのだ。 迷わずシールをはがしてのけぞった。製造97年1月8日、賞味期限97 年1月27日だって。今日は97年4月6日でした。こんなの食べて具合 が悪くなったら、このお店は責任取ってくれるんだろうか? 製造年月日 を明記しないナマ物を売っているこの店の経営方針を疑問に思い、乾き物 だけ買って帰った。
                       みほ
@編集人です。
 さて、事務連絡が2つあります。最初は井戸端会議について。
 来たる4月29日(火)午後6時半より日系人会(15 West 44th Street, 11th Fl.)にて、恒例の「Nuts井戸端会議」を行ないます。くだ らないことを一生懸命に、まじめなことをくだらなく話す場です。参加希 望の方は、編集部(212-982-3348)までご連絡ください。
 続いては、アップル・カップルズのイベントについて。
 井戸端会議の次の日の4月30日(水)午後6時半より、これも同じ日 系人会(住所:上記参照)にて、国際結婚についてのレクチャーを行ない ます。そのタイトルは、「こ、こ、こんなはずでは”国際結婚”」。講師 は、中国人ジャーナリストのカレン・マさんです。
 レクチャーの内容は、そのタイトルの通り、国際結婚における期待と現 実の間のギャップについての話になります。でも、ただ単に「こ、こ、こ んなはずでは」だけでなく、「こんなもんだよ」的な意見も絡めながら、 面白いものにしたいと考えております。
 会費は5ドル。レクチャーは基本的には英語で行なわれますが、質疑応 答は、日本語でもアリです。できれば、日本語と英語のごちゃ混ぜなレク チャーになればいいですね。参加希望の方は、編集部(連絡先:上記参照) までご連絡ください。
 さて、噂によりますと、今度の土曜日(4/26)にクラブ「Tunnel」に てダンスパーティが開かれるらしいのであります。ついでに、「Zap」と か「Akisu」とか「Sannd」などのニューヨーク・ミニコミ軍団が、その イベントのスポンサーらしいでないの。なんじゃい、Nutsは仲間はずれかい。
 そんなわけで、スポンサーとして参加できなかったので、踊り人として かみさんと一緒に遊びに行くことにしました。
 最近、「タンタン」系のラテンの踊りばっかりだったから、たまには、 こういう「ダンダン」系の踊りもやらんとね。いや〜、楽しみやのう。
 ところで、日本からの情報によりますと、先週、新進党と太陽党が共同 で在外投票法案を国会に提出したようです。でも、メディアではちっとも 取り上げられませんでした。十数年ぶりの登場だって言うのにね。この辺 の嗅覚の鈍感さというのは、日本のメディアの特徴ですな。
 今週はこんなもんです。
 では、また来週。             編集人
@先週の続きである。そう、「トイレの問題」である。
 前回の文の反響は、かなりのものであった。会う人会う人が、「ホント にトイレでパン食べるですか?」、「臭くないですか?」などという質問 を私にあびせかけた。でも、中には、「私も時々やりますね。」という心 強いコメントもあった。フッフッフ、やはり私だけではなかったのだよ、 君たち。
 また、「トイレしながら電話する」とコメントした私の友人は、私の 「(電話での)会話の途中に”プー”などという放屁音が入ったら、この 人は一体どう言い訳するのだろうか。それとも正直にその風景を白状する のだろうか。」という問いに、「みんな、知ってるもん。」とあっさり答 えたのである。世の中には、「トイレしながら電話する」ことを容認する 人々というのもしっかり存在するのである。
 さて、先週の文の中で、私は、「トイレの中にカレーパンは持ち込んだ ことはない」と証言した。実を言うと、このコメントが自分でも気になっ ていたのである。なぜなら、世間には、「なんでカレーパンは食べないの? カレーパンもパンじゃなくって?」というイジワルな質問をする人間が必 ずいるからである。
 そこで私は言い訳を考えた。以下にご紹介しよう。
 「私がトイレでカレーパンを食べないのは、突発的な事故を避けるため である。たとえば、貴方がトイレの中で用を足し(ウンコね)ながらカレー パンを食べてるとしよう。カレーパンを食べ終わる前に用を足し終わった 貴方は、おもむろにトイレットペーパーでお尻を拭くのである。で、今日 は何の拍子か、無性にウンコの拭き跡を見たくなる。そして、拭き終わっ たトイレットペーパーを目の前に持って来るのである。片手にはカレーパ ン、もう一方には拭き跡の残るトイレットペーパー。ここで、冷静な判断 ができれば問題は起こらないのである。でも、もし一時的に頭が混乱して、 間違った方を口に頬張ったりしたら、貴方はその後、一体どういう人生を 送るつもりなのか。間違った方を頬張らないって保証がどこにあるってい うの。いや〜ん。」
 世の中、何が起こるか分からんのである。だから私は、トイレでカレー パンだけは死んでも食べたくないのである。
 ところで、この文を書き始めるきっかけとなった、「アメリカ人は、ト イレの中でモノを食ったり飲んだりするのだろうか」という疑問について、 ここで少し考えてみたい。
 ちなみに、私はその瞬間を目撃したことはない。つまり、アメリカ人が トイレで用を足しながら、モノを食ったり飲んだりしてるのを見たことが ないのである。
 そこで、私は、うちのかみさん(アメリカ人)に聞いてみたのである。
 「ねえ、アメリカ人ってさ、トイレの中で食ったり飲んだりする?」
 「なに〜?」
 「だからさ、ウンコしながらモノを食ったり飲んだりするかって聞いて んの。」
 「おめえは、金が無いだけかと思ったら、常識まで無いのか。そんなこ とするわけねえじゃねえか。ったく。」
   「なんだと〜。常識のあるヤツが、てめえなんかと結婚するか。」
 「おめえ、せっかく拾ってやって、グリーンカードくれてやろうと思った のに、なんだその言い方は。」
と、平和な日曜の午後は砕け散り、いきなり交戦状態に突入してしまったの であるが、それはまた別の話なのである。
 なにはともあれ、かみさんが言うには、アメリカ人は、トイレの中では あんまり食ったり飲んだりしないらしい。ただ、私は、かみさんの証言を あんまり信用していない。これだけデカイ国である。必ず私の仲間が存在 するはずだ。
 少し話がズレるが、アメリカ人と日本人の「トイレ」に関するイメージ には、かなりの差があるのではないかという意見がちまたにはある。
 その理由は、こうである。
 まず、アメリカのトイレは、普通シャワーと合体している。トイレする こととシャワーすることが、同じ空間で行なわれるのである。
 日本の場合は、最近アメリカ型を導入しつつあるが、基本的にはトイレ と風呂(シャワー)は、家の中で別々に位置している。であるからして、 トイレには「用を足すところ」というイメージのみが、風呂には「風呂に 入るところ」というイメージのみが植え付けられる。
 アメリカのようにトイレとシャワーが同じ場所にある場合は、明確な 「用を足すところ」というイメージはなく、また同時にその空間の使用頻 度は、日本のように分けて使用する場合よりはずっと高いわけで、そのせ いで「トイレ=いけないところ」というイメージは非常に低く、用を足す 行為に関する罪悪感も日本ほど巨大ではないのである。
 また、この他に、「用を足すスタイル」というのも、お互いの「トイレ」 のイメージに多大な影響を与えている。
 アメリカの洋式便器に座るスタイルと、日本の和式便器にしゃがむスタ イルを比べると、明らかに後者の方が罪が重い。この「罪が重い」という のは、見た目が悪いという意味である。あんなカッコで用を足したりする から、同級生に下からのぞかれて、「あいつのウンコ、こーんくらい太かっ たっばい(熊本弁)。」などと変な噂を立てられることになるのだ。日本 での「ウンコタレいじめ」問題の根底には、日本独特の「トイレ文化」が ズデンと横たわっているのである。だから、日本のトイレには、暗〜いイ メージがついて回ることになるのである。
 以上のように、アメリカ人と日本人の「トイレ」についてのイメージに は、相当なギャップが存在するのである。
 では、日本でのトイレに関する罪悪感を薄めるためには、どんな方法が 考えられるだろうか。
 まず第一に、トイレをすべて洋式に変えてしまう。私たちにあのしゃが む姿勢を作らせる和式便器を抹殺してしまうのである。これによって、そ の日のウンコの太さを他人にとやかく言われる危険性はなくなる。まあ、 これは同時に、人のケツからウンコがニョキニョキ出てくるのを目撃した 時のドキドキ感もなくしてしまうのであるがね。
 次に、トイレで他の作業、例えば、顔を洗ったり、歯を磨いたりなどの 作業を行なうようにするのである。トイレの使用目的の多様化である。そ の意図は、「トイレでは、ウンコ・オシッコするだけよ。」というイメー ジを変えてしまうことにある。
 方法としては、いろんなものが考えられる。先に書いたように、顔を洗っ たり、歯を磨いたりしてもいいし、テレビを置いてもいいし、郵便物をト イレに置くようにしてもいいし、トイレ自体をガラス張りにして、家のイ ンテリアのひとつにしてもいいのである。こういう方法によって、トイレ を「隔離された小空間」というイメージから、「開かれた多目的空間」に 変えてしまうのである。そしたら、「ウンコする」ことの地位も向上する のだよ。
 そんなこんなで、今回は、アメリカと日本のトイレ文化についていろい ろ話したのであるが、私は個人的には、アメリカにも「ウンコタレいじめ」 問題が存在すると考えている。そして、その経験をアメリカ側の「ウンコ タレいじめ」被害者と、日本側の「ウンコタレいじめ」被害者との間で話 し合うことは、お互いを人間的に理解し合うという面において、すばらし い効果を生み出すと信じている。だって、こんなに人間らしいネタはない じゃない。
 いつかそんな人たちを集めてシンポジウムでもやりたいと思う今日この 頃である。
                        ひろ
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『今週の歌』

「”これ、似合う?” 買ったばかりの ジーンズの
           悲鳴聞きつつ ”はい。”と答える  ひろ」
   

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Hiroyuki Takenaga ---hiro@interport.net


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