1997年5月13日号(No.166)


                     Nutsの表紙です



目次

*『VOICE』 ・投書「ニューヨークは安全?」 ・編集後記 ・ひとりごと「日本人がアメリカ人に対して持つ劣等感の問題」
*『今週の歌』
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『VOICE』

@昨今、ニューヨークは昔に比べて安全になってきたと言われています。 また実際にNYPDや市の発表する統計などではかなり犯罪発生率が減少し ていることを示しています。
 それに比べて日本はますます危なくなってきたということをよく耳にす るようになりました。でもよーく考えてください。日本が危なくなったと いってもニューヨークほど危ない訳ではありません。
 もちろんニューヨークが日本ほど安全になることなど到底ありえないで しょう。ニューヨークにいる人たちは大体の人がわかっていることですが、 中にはそんなこともわからず、ただ発表された統計を間に受けてニュー ヨークは安全になったと思っている人も多少見かけます。日本にいてNuts を読んでいる人にはちょっと想像できないでしょうが、ニューヨークはま だまだとっても危ない都市の一つです。
 それを説明するのにとてもいい例を見つけたのでちょっとご紹介します。
 先日、午後10時をちょっと過ぎたころにテレビをつけたのですが、そ れから約15分の間に以下のようなニュースが報道されていました。
 まず最初は、川向こうのNJでピザを配達に行った店の店長(24歳)と そのアシスタント(22歳)が射殺された事件。この段階では原因はわかっ ていないが、犯人(18歳)は既に逮捕されていた。この事件に関してピ ザの配達をしている別の男性にインタビューしていたが、彼いわく「この 町では一歩間違えばいつ殺されてもおかしくないので、住所を聞いてその 場所によっては配達に行かない。万が一のためにいつもいくらかのお金を ポケットに別にして入れてある。そして常に周りには出来る限りの注意を 払っている(彼はこれをニューヨーク・センスと呼んでいた)。」という ことだ。こんな思いをしながらピザの配達をしている人が日本には何人い るのだろうか?
 その次はパーティ・シューティング事件。とあるクラブで行なわれてい たパーティ会場でいきなりどこからともなく拳銃が発砲され、十数人が負 傷して病院に担ぎ込まれた。理由は不明。
 3番目は違法で地下室を他人に貸していたアパートが火災になり4人が 焼死。しかしまだ建物の下から死体が発見される可能性がある。出火原因 は限度以上の数の人が住んでいたのではないかと捜査中。
 4件目は放火事件。数人が死亡。放火の原因は不明。
 最後に、2ヵ月前から行方不明になっていた学生の死体が二週間前に ブルックリンの川岸で発見されたが、また新たに行方不明になっていた 他の学生の死体が発見される。行方不明の原因も自殺なのか他殺なのか、 はたまた事故なのかもわかっていない。
 これらは全てニューヨークで24時間以内に発生/発見されたものであ る。この後にはアメリカ各地から殺人、強姦、性的虐待などの事件が次々 と続いた。
 以上のようにあまりにも意味不明の事件が毎日当たり前のように次から 次と起こっているのがこの街である。
 95年に比べて96年は犯罪件数や発生率は確かに3割近く下がりまし た。しかしそのもともとの数字があまりにも大きいため、3割下がったか らといって安全になったわけではありません。ちょっとましになっただけ です。現にニューヨークだけで一日に殺人は少なくとも数件(報告されて いるものだけ)、車泥棒は数十件、強盗/盗難になると数え切れない位発 生している。
 またニューヨークで一日に押収される拳銃の数は、警視庁が日本国内で 一年間に押収するそれとあまりかわらない。
 それ以外にも強姦や傷害など届け出ても犯人が捕まる可能性が低い犯罪 が発生しているが、実数を知ることはほとんど不可能。FBIは一年間にア メリカ国内で発生する強姦の件数は、15000くらいが報告されている が、実数はその7倍くらいあるのではと推測している。
 これを書いている時にちょうど友達から電話がかかってきたのだが、彼 女は去年の終わりにニューヨークに来たばかりで1月から学校へ通ってい る。が、既に3冊も教科書を盗まれたと言って憤慨していた。私からする と、彼女を見ていると教科書位ですんでるならまだ良いほうではないかと 思う。
 長々と書いてきたが、これがニューヨークという街である。たまたま ニュースを見ていてふっと思ったのだが、ニューヨークという所はいいと ころも確かに沢山あるし、魅力的な街でもあることは間違いないが、その 裏にはこのような危ない部分も存在するということを改めて自分の心のど こかに留めておくべきだと。
 また、Nutsの読者にニューヨークに興味のある人が多いということなの で、是非このことを忘れずに心のどこかに留めておいてもらいたいとも思 う。特にニューヨークに来ようと思っている人は「Must know」の事柄だ ろう。
 やはり日本人が被害にあったと聞くといい気分はしないので、少しでも その防衛策の足しにでもなれば、この投書をしたこととNutsという媒体が 存在する意味合いが出てくるのではないかというところです。また何か気 がついたことがあれば皆さんにお知らせします。それではまた。
                      岡野健将
@編集人です。
 まず事務連絡を2つ。
 来たる5月30日(金)午後7時より、国際結婚の会「アップル・カッ プルズ」と合同で、「正しい異文化講座その1”正しいサルサの踊り方” クラス」を開きます。会費は5ドル。場所は、8th Avenue Studio (939 8th Ave. #4Abet. 55 & 56 th st.)。詳しいことは来週説明しますので、 参加したい人は、とりあえずその日は空けといてね。
 次。サルサ教室の前日、5月29日(木)午後6時半より日系人会(15 West 44th St. 11th Fl.)にて恒例の井戸端会議を開きます。参加ご希望 の方は、編集部までご連絡ください。
 先日、私のところにニューヨーク・メッツから、「最近入団した柏田投 手の通訳のための学生インターンを探してんだけど誰か知らない?」とい う連絡が入りました。この情報はすでに「ぶりてんNuts」の方には掲載し たのですが、一応、ここでもご紹介しておきます。ちなみに、タダ働きの インターンです。興味のある方は、編集部までご連絡ください。
 ところで、私のところには、こういう一風変わった情報というのが結構 集まってきます。しかし、スペースや発行日などの都合上、この Nuts に はなかなか掲載できません。それらの情報のほとんどは、「ぶりてんNuts」 の方に回されます。つきましては、何か変わった情報をお探しの方は、そ ちら(http://www.nyct.net/~nuts/)をご覧いただければ幸いです。
 今週はこんなところです。
 では、また来週。            編集人
@「日本人がアメリカ人に対して持つ劣等感の問題」である。
 さて、前回の号の最後に私はこんなことを書いた。
 「結局、どの問題を突き詰めても日本人としての劣等感にブチ当たる。 それならば、わしらは、そろそろ本気で”その劣等感をどうするか”を議 論し始めなければならないのかもしれない。」
 要するに、私は、「どの問題をのぞいても劣等感が顔を出しやがる。と いうことは、日本人には、アメリカ人に対する劣等感がしっかりくっきり あるってことじゃない。だったら、”やっぱりこれも劣等感が原因だった ぞー”なんて言ってるよりは、その劣等感をどう排除するかを考えた方が いいんでねえの。」ということが言いたかったのである。
 文中の「どの問題」というのは、アメリカに住む日本人の間で話題にな る問題のことである。例えば、「アメリカ人男性に簡単にだまされ利用さ れる日本人女性問題」、そういう日本人女性たちが実際にきれいに存在す ると断言してしまった「イエローキャブ問題」、他の日本人を避けてしま う「日本人いやいや病問題」などなど。で、それらの問題の根底には、ア メリカ人に対する日本人の劣等感が寝そべっている、というのが私の考え なのである。
 上記の問題と劣等感の関係をもう少し詳しく説明すると、「一部の日本 人女性のアメリカ人男性に対する異常なまでのあこがれ=アメ男と日女問 題」、「日本人女性がアメリカ人男性とくっついて行くのをヌボ−っと見 とくしかない一部の日本人男性のヤキモチ=イエローキャブ問題」、「ア メリカ社会に属したいと強力に思うことによって起こる焦(あせ)り=日 本人いやいや病問題」という感じになる。
 「うんにゃ(熊本弁で”いいえ”)、そりゃちょっと違うばい。」と言 いたい人もいると思う。確かに日本人の中には、アメリカ人に対して劣等 感を持ってない人もいるわけだし、また、上記の問題の原因は劣等感では ないと考える人もいるはずなのである。
 ただ、ここでは、それらの問題をグダグダ議論するつもりはない。「一 部の日本人は、アメリカ人に対して劣等感を持っている」という仮定のも とに、「では、どうしたらその劣等感をやっつけられるか」ということに ついていろいろと考えてみたいのである。ちょっと乱暴だけどゴメンね。
 さて、本題に入る。
 ここでのテーマは、「一部の日本人がアメリカ人に対して持つ劣等感の やっつけ方」である。つまり、具体的な方法論についてである。であるか らして、理想論や心の持ち方、例えば、「人類皆兄弟。上下関係なんかな い。だから私たち日本人は、もっともっと自信を持って世界をスキップし て回らなくっちゃ。」的な意見や、「劣等感持つなんてダメぞー。心が狭 い証拠さ。すべてのものをあるがままに受け入れる心が必要なんだ。ほら、 心を楽にしてごらん。どんどん心が広がって、世界がすっぽり入っちゃう ぞ。」などという抽象的な方法論は、横に置いておく。ここでのポイント は、「どうあるべきか」ではなく、「どうあるべきか=劣等感のない状態」 にどうやって持って行くか、なのである。
 では、始めよう。
方法1「アメリカに来る」
 ここアメリカにいると思うのだが、日本の日本人に比べると、こちらに 来て住んでいる日本人の方が、アメリカ人に対する劣等感を持たないので ある。なぜなら、在米組は「アメリカ人の実態」を知っているからである。
 アメリカ人の中には、すごいヤツもいっぱいいる。でも同時にしょーも ないヤツもいっぱいいるのである。これは外見に関してもそうだし、中身 に関してもそうなのだ。そういう実態に触れると、それまでありがたがっ てたアメリカ人をナメた目で見るようになるのである。そしたら、劣等感 の方も次第にしぼんでいく。だから日本人は、アメリカに来て、その実態 を垣間見るべきなのである。
方法2「メディアを無視する」
 日本人にアメリカ人に対する劣等感を植え付けている犯人は、「日本の メディア」である。外人モデルを多用したCMをガンガン流したり、アメリ カ人ミュージシャンや俳優を殿様扱いしたり、アメリカ人政治家の相手を している日本人政治家をマヌケ風に映し出したり書いたりしているのは、 テレビや新聞、雑誌などのメディアなのである。だから日本のメディアが 流す情報に触れていると、知らない間に「アメリカ人、偉い!」とマイン ド・コントロールされてしまうのである。
 彼らが一番アブナイのだ。
 よって、日本人は、メディアを無視することを覚えるべきなのである。 メディアは、私たち、つまり、情報を受け取る側をいつもマインド・コン トロールしようとしていることを知り、「その手には乗りませんよ。」と 彼らの攻撃をうまくかわし、「アッカンベー。」とメディアをハナクソの ように扱うことを日本人は実行すべきなのだ。
 メディアに洗脳されてはいけない。
方法3「アメリカを叩く」
 日本人には、アメリカ、あるいは、アメリカ人を本気で批判することが できないのである。これは、政治家もメディアも、そして国民も同じであ る。いつも腰砕けのことしか言えず、ちょっとでも反論されると、「ひ え〜」とビビってしまうのである。これでは、劣等感がなくなるわけがな い。
 また、このビビり方は、すでに日本の伝統になりつつある。要するに、 劣等感が永久に植え付けられようとしているのである。
 これは非常にやばい。
 てなわけで、日本人は、アメリカ、あるいは、アメリカ人を本気で叩く ことを覚えなければならないのだ。
 例えば、アメリカの政治家が、日本に対して何か変な発言をしたら、 「何考えてんだ、おめえ。」と噛みつく。ニューヨーク・タイムズに日本 に関するおかしな記事が出たら、「もう少し勉強しな。」と説教する。ま た、それらの反論に対して、「最近、日本人の中には、新たな反米感情が 生まれつつある」などと言って、相手が逃げようとしたら、「話をそらす んじゃねえ。真剣にやれ、真剣に。」とそれまで以上に強く叩く。
 ここで絶対に必要になるのは、英語での情報発信力である。文句タレる 時は、必ず英語でなければならない。でないと、こっちの言ってることを 相手が自分の都合のいいように勝手に翻訳してしまうからである。
 また、アメリカを叩く場合、在米日本人の存在が、非常に重要な位置を 締めるのである。アメリカに噛みつくのなら、私たちアメリカに住む日本 人が一番に噛みつくべきなのである。なぜなら、太平洋の向こう側の小さ な島からヤイヤイ叫んでるよりは、その腹の中で一寸法師みたいに針でチ クチクした方がいいべ。
 ということで、Nutsの英語版を作りたいのであるが、それはまだまだ 先の話なのよね。
 私はむやみに噛みつけと言っている訳ではない。噛みつくべき時には、 きっちりがっちり噛みつくべしと言っているだけである。なにはともあれ 日本人はアメリカを本気で叩けるようになるべきなのだ。
方法4「アメリカ人と結婚する」
 これは、かなりリスクを伴なう方法ではあるが、その効果は抜群である。
 はっきり言おう。アメリカ人と結婚したら、彼らに対する劣等感など霧 散してしまうのである。霧散どころか、下手をすると、完全にナメナメ状 態に突入してしまうのだ。
 アメリカ人も所詮は人間である。結婚するとそれが死ぬほどよく分かる。 ウンコたれるわ、ゲップはするわ、屁はこくわ。こういう人間の生理現象 をまざまざと見せつけられると、変な劣等感など立ち所に吹き飛んでしま うのである。
 ただ一方で、彼らと裸の付き合いをすると、一種の敬意の念も生まれた りする。「こいつらには、ホントにかなわんな。」と思わされることも多々 あるのだ。私にもそういう経験があるのだが、そんな時、私は「やっぱり 太平洋戦争は間違いだった。」と痛感するのである。でも、その敬意の念 が劣等感へと変化することはまずない。やっぱりそこには、「尊敬」とい う要素が含まれるからだろう。
 とりあえず、今週はこんなもんである。続きは来週にお届けする。
 ところで、念のため言っておくが、方法4「アメリカ人と結婚する」で 「ウンコたれるわ、ゲップはするわ、屁はこくわ。」と書いたが、これは 別にうちのかみさんが、そういうことをするという意味ではない。ただの 例である。
 自分の身を守るために、一応ここではそう言っておく。
                                                   ひろ
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『今週の歌』

 「大皿に 盛られた夕飯 妻とシェア
        油断したなら ”ハイ、それまでよ。”  ひろ」

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Hiroyuki Takenaga ---hiro@interport.net


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