1997年6月3日号(No.169)


                     Nutsの表紙です



目次

*『VOICE』 ・投書「アメリカ人コンプレックス克服法を読んで」 ・編集後記 ・ひとりごと「外人婿の問題」
*『今週の歌』
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『VOICE』

@Dear 編集人
 ”読めるコミュニティ紙”として毎号Nutsを楽しみにしている在米7年 目のOLです。
 NO.166号に掲げられていたアメリカ人コンプレックス克服法、面白かっ たです。どの方法にもそれなりの説得力があります。1つ感じたのは、方 法3の『アメリカを叩く』を実行する為には、年月をかけた技術(例えば アメリカの国民性を意識した上での鋭い批判力や練り上げた英語力など) が必要とされる為にややアドヴァンスな克服法になると思いますが、最も 効力のある方法になるのでは・・・?! しかし、日本人の美徳でもある 和を重んじる国民性が、批判したり、訴えたり、否定するという行為の邪 魔をする事もあり、その辺のバランスが難しいところではないでしょうか。
 このアメリカ人コンプレックスを克服すれば、もっと在米日本人の結束 も高まり、活気のあるコミュニティが出来ると思います。
 日本人は、他人に迷惑をかけないようにとか、規則破りは世間のヒン シュクのもとである等の暗黙の了解が成立しており、これは単一民族国家 にのみ成立するとされる素晴らしくも絶賛されるべき特徴であって、多民 族国家アメリカではマネをしたくても決して出来ないユートピア的な現象 ですらあるのです。
 日本人は、”まさかこの人に限ってそんな事にはならないだろう”とい うある種の常識的な信頼に基づいて安易に知人程度の人に現金を貸してし まったりする事も無きにしもあらず・・・。しかし、アメリカ人の根底に は性悪説が流れているかのように人間とは放っておけば悪い事に走ってし まうものであると考え、人を疑ってかかる事から始まり、入社するのにド ラッグ・テストをさせられたり、レンタルビデオの会員になる為にクレ ジット・カードとIDの提示を要求される所から始まり、もし何か起こった 時の確固とした裏付けを要求せずには不安でしようもないのである。
 単一民族国家”日本”からUSAに来て、ここで落ち着こうとする日本人 は、まずその国民性の違いに気づき、ギャップを感じ、誰を信じていいの かわからなくなる等、その他もろもろのストレスを感じる者も少なくない と思う。それに耐えられなくなってアメリカを脱出する者もいるかもしれ ない。でも、ここアメリカで自己実現を目指す日本人の皆さんには、どん どん強くなっていって欲しいと思います。
 争わなければならないところでは戦い、理由もなくrude(編注:「無礼 な」)でoffensive(編注:「攻撃的な」)でobnoxious(編注:「不快 な」)な人間には泣き寝入りする必要などなく、相手に自分の受けた傷を わからせてやる事も時には必要でしょう。
 いつか竹永氏がNuts紙上で言っていたように、私は留学生として来米し、 アメリカ人と結婚し、働きだして7年になりますが、私の対日本意識は次 第に”右”に動いてきつつある事は事実です。
P.S. ”質問”<仮定:O.J.シンプソン裁判/日本人バージョン>
 同じマイノリティとして、陪審員の日本人は、明らかに犯罪を犯したと 思われる同胞の日本人を、モラルや合法・違法をよそに、日本人の彼(又 は彼女)の言う”犯っていない”という声明を信じようとし、無罪にもっ ていこうとするだろうか? こういう家族的な結束力は、日本人間には存 在するのでしょうか? 又、そうでなくてもこれから可能なのでしょうか?
 タイ人コミュニティにはあります。
 キューバ人コミュニティにはあります。
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                   Early 30'sのKeikoより
@編集人です。
 最初は、イベントの結果報告から。
 先週の木曜日に、恒例の「井戸端会議」を開きました。参加者は、私も 含めて9名。結構多かったですな。日本からニューヨークに旅行に来てた 方の参加もありました。
 話した内容は、ホントその辺にころがってるようなものでした。そんな ことをグダグダと2時間近くしゃべったのであります。なんとまあ生産性 の低い座談会だこと。
 でも、今後もこの調子で行きます、ハイ。
 続いては、先週の金曜日に行なわれました「正しいサルサの踊り方講座」 について。
 いやいや、盛り上がりましたよ、あなた。19名の参加者と講師のYoshi Yanoさんの生徒さんの合計約30名が参加して踊ったのであります。
 みんな、最初はちょっと「はじゅかしいモジモジ」状態でしたが、身体 を動かしているうちに、そういうカタさも取れ、終わりの頃には、これが また堂々と、そして、派手に踊っておりましたなあ。そして、みんなホン トに楽しそうでした。
 わたくし、そういう風景を見ながら、「やっぱり”踊り”というのは、 人種・民族関係なく、人間をハッピーにさせる何かがあるのね。」とつく づく思いました。
 日本人は、恥ずかしがり屋です。人前で踊ったりすることを苦痛に感じ る人も多いはずです。でも、わたくし、思うのですが、人前で踊らなくて すむことによる安堵感よりも、楽しくリズムに合わせて踊った時の快感の 方が、人間にとっては、ずーと気持ちよくて、健康的なのではないでしょ うか。日本人は、そういうシャキシャキした健康的快感にもっと貪欲にな るべきだと、わたくし、考えるのであります。
 だって、あんた、そっちの方が楽しいのに。
 次は、6月8日(日)の正午から午後4時までジャパン・ソサエティー の前(47th St. bet. 1&2)で行なわれる「日本の祭り」に関するお願いな のであります。
 その祭りを手伝うボランティア軍団、「Nutsオタスケ隊」のメンバーを 探しております。今のところ、約10名ほど集まっております。できれば 20名ほど欲しいですな。興味のある方は、編集部(212-982-3348) までご連絡ください。
 在外投票の件ですが、このままで行くと今国会での成立はかなり難しい のであります。時間がないんですな。一応、与党側は、まだ今国会の成立 に向けて動いておるようですが、スケジュール的にはかなり厳しいのです。
 デッドラインは、6月18日。それまでに、衆議院&参議院をチョチョ イのチョイと通過しなくてはなりません。これがなかなか難しいのです。
 でも、わたくし、まだ諦めてはおりません。この時点でも、「今国会で 成立させる」という考えです。やっぱり物事は、このくらい追い込まれん とおもしろくないからね。
 在外投票法案の件は、この2週間が山場となります。再びこの件に関す る重要人物たちの連絡先(FAX番号)を掲載します。気が向いたらつつい てみてください。
加藤紘一議員(自民党幹事長)・03-3502-5008 村上正邦議員(自民党参院幹事長)・03-3502-8830 村岡兼造議員(自民党国会対策委員長)・03-3502-5815 中馬弘毅議員(衆院「公職選挙法改正に関する調査特別委員会」委員長)・ 03-3593-7126 武田節子(参院「選挙制度に関する特別委員会」委員長)・03-3508-8308
 今週は、そんなところです。
 では、また来週。                        編集人
  @さて、今回は「外人婿(むこ)の問題」である。要するに、私のことな のである。
 私は、いろんな人からよく「ひろさんは、奥さんの家族の中で、一体ど ういう位置にいるんですか?」という質問を受ける。
 このNutsにしょっちゅう書いてるせいで、うちのかみさん家族のことに ついては、多くの方に理解していただいている。かみさんはニューヨーク 生まれのニューヨーク育ち、両親もクイーンズに住み、その兄姉もニュー ヨーク。つまり、私は、ニューヨークの原住民的な家族と結婚したのであ る。
 反対に、私の家族はここにはいない。ということは、ある意味で、私は 「サザエさん」に出てくる「マスオさん」状態なのである。ただ、「サザ エさん」の場合は、少なくとも全員日本人であるが、私の場合は、日本人 は私ひとり。「アメリカ人にぐるりと囲まれたマスオさん」と言ったとこ ろだろうか。  その家族の中で、私が何をしゃべり、どういう振舞いをし、いかにして このアメリカ人たちの中でサバイブしているか、その部分に人々は興味が あるらしい。
 そんなわけで、今回は、うちのかみさん一族の中での私の「外人婿とし ての位置」をご紹介することにしよう。
 まずは、家族の説明から。
 かみさんの家族がどういう人たちであるかを説明するのに、ピッタリの 例がある。アメリカの4大テレビ局のひとつ、NBCに「Seinfeld」という アメリカで一番人気のコメディ番組があるのだが、その中に「ジョージ・ カスタンザ」という背の低い、つるっぱげのキャラクターとその家族が出 てくる。うちのかみさんの家族は、あの「カスタンザ」一家とそっくりな のである。
 私は外見の話をしているのではない。家族の「質」が同じだと言ってい るのである。
 この2つの家族に共通する「質」というのは、簡単に言うと、家族みん なが「すぐにプッツン症」にかかっているということなのである。「さっ ぱりしたヒステリー」という言い方をしてもいいかもしれない。
 例えば、先日、かみさんの両親とかみさんと私の4人でドライブしてる 時に、こういう会話が交わされたのである。話題は、「カリブ海」につい てであった。
義父「おまえたちは、カリブに行ったことがないから、あの海の本当の良 さが分からんのだ。」
娘「ナニ言ってんのよ。私たち、新婚旅行でバハマに行ったじゃない。」
義父「バハマは、カリブではない。あそこは、”キューバの北”だ!」
義母「だから、カリブじゃない!」
娘「そうよ、”キューバの北”ってことは、カリブでしょ!」
義父「ちがーーう! バハマは”キューバの北”なんだ!」
義母・娘「だから、カリブよ!」
 このような会話が、ごく自然に行なわれるのである。
 ちなみに、その時、私が何をしてたかというと、外に広がるクイーンズ の景色を眺めるふりをしながら、笑いをこらえるために、ひとりモダエて いたのである。
 かみさんの家族の「質」がお分かりいただけただろうか。
 それでは次に、かみさん家族及びその親戚の中での「私の評価」につい てお話ししたいと思う。
 かみさん一族は、ラテン系である。ということは、基本となる言語は 「スペイン語」となる。私は、スペイン語を話さないし、聞けもしない。 すると、ファミリー・パーティなどの際に場が盛り上がって、みんながス ペイン語でしゃべり出したりすると、私は完全に「太平洋ひとりぼっち」 状態になってしまうのである。
 その状況の中で私にやれることと言えば、「食う」こと以外にない。 だから、私は、みんなの会話そっちのけで食い物をあさるのである。
 そんなことを繰り返している間に、「あそこの日本人婿は、何でも食べ るらしい」という噂が、かみさんの親戚の間に広がり始めた。しまいには、 義理のオフクロさんなんか、他の親戚に私を紹介する時に、こういうこと を言うようになったのである。
 「これが、義理の息子のヒロよ。何でも食うわよ。」
 わしは、ブタかい。
 でも、この「何でも食う日本人婿」という評判は、親戚一同、特におば さまたちに非常に受けが良く、私がパーティに現われると聞くと、気合い を入れて料理作りに励むらしい。
 ま、これもひとつの愛され方なのである。
 「ブタのように食う日本人婿」といっても、いつも食ってるわけではな い。山のように食べれば、当然、腹いっぱいになるのである。
 そうなると、やる事がなくなる。まわりの女性軍は、だれだれの結婚式 がどうだったとか、どれとどれが別れたなどという話に熱中していて、た とえそれが英語の会話であっても、私とすればまったく興味ないわけで、 油断して鼻クソでもほじったりしたら、あとでかみさんに死ぬほど怒られ るし、いきなり寝るわけにもいかないし、まったく困ったことになってし まうのである。
 こういう時は、大体、義理のオヤジさんと一緒に外に出たりする。別に 何をするというわけでもないのだが、ふたりで道を歩いたり、立ち止まっ たりしながらお話しするのである。
 ただ、こっちは発音が悪い、向こうは耳が遠いと来てるもんだから、 時々、何を話してるのかサッパリ分からなくなったりする。例えば:
私「最近、競馬の方はどうだい?」
義父「そうだな。ホントにいい天気だなあ。」
などという会話になるのである。
 「こっちが話し、向こうが聞く」というカタチが、最も危険なわけであ るから(私:発音悪い、義父:耳遠い)、それを避けるために、「こっち が聞き、向こうが話す」という関係を作り出すために、私は日々努力して いる。
 確かに、オヤジさんの話はおもしろい。「ダテに84年も生きてない な。」と思うこともしばしばである。ただ、他のお年寄りと同様、同じ ことを何度も繰り返して言うクセがある。1、2回ならまだ我慢できるが、 5回も6回も繰り返されると、こっちも眠たくなるのである。
 道を歩いてる時はまだいい。これが車の中でふたりっきりになった時な ど、私は睡魔と戦うのに一苦労なのである。
 前に車の中で油断して寝てしまったことがある。それでも、オヤジさん は、話し続けていたらしく、途中で私が寝ていることに気づき、その時 ちょうど起きた私に向かって、信じられないような顔をしながら、「ヒロ、 おまえ寝てたのか?」と言ったまでは良かったのだが、ヨソ見した隙に 停車した前の車にぶつかりそうになり、ふたりで急ブレーキにのたうち回 り、私はそれですっかり眠気がさめてしまったということもあった。
 私は、他の「外人婿」の方々と自分自身の「家族の中での立場」を比べ たことがない。だから、私の立場がいいのか悪いのかは分からない。
 ただ、居心地はすごくいい。かみさんの家族及び親戚一同、私をまる で元々親戚の一人であるかのように扱ってくれる。「外人であることなん か知ったことかい。あんたは、私らの家族のなのよ。」という態度なので ある。かえって、日本人婿を迎えたことを楽しんでいるかのように思える のだ。
 私のケースだけを取り上げて、「やっぱ、アメリカは懐が深いのう。」 などと言うつもりはない。でも、うちのかみさんの家族を見てると、正直 言って、「この人たちには、かなわんなあ。」という気持ちになる。私 自身、「違う人たち」を愛することにも愛されることにも慣れていなかっ たのだろう。
 かみさん一族の愛に感謝しつつ、「何でも食う日本人婿」だけは勘弁し てほしいと思う今日この頃である。
                                                           ひろ
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『今週の歌』

 「”踊れない 日本人”というウソも
         踊り出しそな サルサ・レッスン   ひろ」
  

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Hiroyuki Takenaga ---hiro@interport.net


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