1997年9月2日号(No.182)


                     Nutsの表紙です



目次

*『Nutsコラム』 ・コラム『ジャパレスの匂い』 ・コラム『Keikoの”ちょっと言わせて世論”その1 - Police』 ・コラム『N.Y.衣心』 ・コラム『道端で哲学ーひとことを考える』 ・コラム『寄り道』〜イスラエル編〜
*『グリーンカードへの道・第8話』
*『編集後記』
*『今週の歌』
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『Nutsコラム』

『ジャパレスの匂い』
 ジャパニーズ・レストランにおける日本人のお客様で礼儀をご存知ない 方々をよくお見かけします。
 高そうなスーツをお召しになり、たぶん高そうな学歴と高そうなお給料を おとりになってるとお見受けする方々が、店に入るやいなや、ご案内もお耳 に入らないのか、ドカドカと勝手にお席をお選びになり、お座りになるやい なや、こちらのお顔も見て下さらず、「ラーメン。」「ギョウザ。」「メン マおおめ!!」・・・・
 無料でお出しするお茶でふくれたお腹をさすりながら、つまようじでスー ハースーハーし、くちゃくちゃのシングルと小銭をお残しになり、とてもお 急ぎのご様子でお店を出て行かれます。
 日本人のいない多国籍軍のうちの従業員には、”ジャパニーズ、お金ある けどマナーないね。”なんてお客様の前では口をつつしむよう、また、お客 様が逃げるようにお店をお出にならなくて済むような十分な tipを置いて下 さるよう、おもてなしをせよと厳しく指導しております。
 しかし、正直申し上げて、”please”や”thank you”とともに自然に出 される”smile”のお客様には、本当にこちらがよい気持ちにさせていただい ております。
 ちなみに私も、日本にいた頃は、居酒屋で席に座るなり、”ビール。”” 枝豆。”でございましたが。
                        Sakura
『Keikoの”ちょっと言わせて世論”その1 - Police』
 初めまして。私、東京下町出身の在米7年目で、ストレス解消には熱い風 呂、庭いじり、読書、映画で心を癒しています。コラム第一弾ということも あり、みんなに馴染みのある(!?)"Police"について云わせて貰います。
 はっきり云ってアメリカのPoliceはあまり尊敬できる対象にはなりませ ん。もちろん警察という職務の重要性は認識していますし、ここNew York CityはこのPoliceの街角パトロールのお陰で犯罪率も下がり、我々も安心し て地下鉄に乗っていられる訳です。
 しかし、アメリカ全体の”ポリス”を観てみると、まだまだ個人的偏見に 満ちた対処の仕方(人種間摩擦)や職権乱用(賄賂、サイド・ビジネス [Adult雑誌で制服を着てポーズをとる],ランチ・タイムにサイレンを鳴らして 自宅に向かう)等のニュースも日常茶飯事に報道されモラルの有無が問われ るところです。
 だいたいポリスとはLaw Enforcementとも云われているように法律の執行 という偉大なる特権が与えられているにも関わらずモラルのエクササイズを する機会が与えられていない点は日本の警官(お巡りさん)にも及ばずと いったように思えます。
 アメリカのPoliceはSWATチーム的(Freeze or we shoot you!)なオペ レーションには素晴らしい力を発揮するようですが市民との間の信頼関係を 築いていくようなCommunity Policingにはやや遅れ劣っているようです。
 また、被害者に対してもいたわりを示すというよりも加害者をいかに有罪 にもっていけるかに力点が置かれ、被害者に対して無神経な質問を浴びせる 等の傾向も見受けられます。
 今後のどのように変化されていくのか期待してみるしかありませんけど ね。
                          恵子
『N.Y.衣心』
 頬を撫でる風が少し冷たくなった今日この頃、もう秋だと感じるのは私だ けであろうか。箪笥の奥から黄色いセーターを引っぱり出して肩にかける。
 それにしてもこの夏、ビレッジの界隈では随分と「下着ルック」を見たも のだ。下着ルックはスリップをそのまま洋服として着る。8月26日付のビ レッジ・ボイスではこの現象を1997年、夏のアメリカ哀しきファッショ ン遺贈と述べている。
 私もさっそく下着ルックに挑戦した。最初は少し恥ずかしい気もするが、 これが慣れると結構快適、「ベッドルームの心地良さを日常生活に取り入れ た」ファッションである。そんな私の下着ルック体験談でもしてみよう。
 ある夏の暑い午後、「憧れの君」から「今から会わない」という電話がか かってきた。まだ彼には公開していない下着ルックに身を包み、自信満々で 家をでた。待ち合わせ場所はミッドタウンのバーニーズ。しかし段々と人々 の視線が厳しくなってくる。不安になりながらもバーニーズに着いた。
 すでに待っていた彼は私を見て鳩が豆鉄砲くらった顔をした。出てきた最 初の一言は「着替えるの忘れたの」。顔から火が出るとはこういう事だと実 感した。それでも「だってこれ今流行っているの知らないの。ほらマネキン だって着ているじゃない。」と抵抗したら「君はこの人達とは違う事に気付 かないの。第一、モノが全然違うではないか。」という応答。確かに私のは 近所の店で10ドルで買ったペラペラで、下手をするとウインドウの洋服は ゼロが2つ多い。意気消失した私に止めの一言、「だらしない、まるで娼婦 ではないか。」がささった。
 多くのお金持ちは自分の美意識がファッションの中心であると信じたい。 そんな気持ちが彼等にブランド品を買わせる。しかし貧乏な人々にもファッ ションを楽しむ権利はある。彼等は自分の収入に合ったファッションを創り だす。
 一体何がニューヨーク・ファッションなのかと考えた、1997年、夏の 哀しきファッション遺贈日であった。
                      マリコ・モリモト
『道端で哲学ーひとことを考える』
 日頃何気なく使っている言葉のひとつひとつの意味について、真面目に考 えたいと思っています。表題に沿い、説得力のある文章を書くのが目標です が、素人ゆえに力不足の点が多々あると思います。文章力の向上のため、こ れに対する意見、批判、感想などをお待ちしてます。
<日本人>
 渡米して、民族の血というものを強く意識した人は多いだろう。それは雑 多な人種を受け入れているこの国が、お互いの外見や文化の違いを比較し分 別させる環境を作っているからだ。人々は、言葉、体格、習慣など、多く の”違い”を当然のように感じながら暮らしている。ここでは日本人も、区 別されたひとつの民族である。
 アメリカ合衆国には約30万人の日本人が暮らす。人それぞれの理由のも と、日本人として生きるのもアメリカ人として生きるのも、個人に任された 選択であり自由である。もともと自由を求めて集まった移民の国だ。だから 人は、誰も拒まない、このおおらかな国に集まって来る。
 だが、時々疑問に思う。ここでの暮らしを選んでいることは、日本人であ ることを否定していると言えるのだろうか。在住の理由のひとつに必ず、居 心地のよさがあるはずだ。在米日本人とはどんな存在か。日本人であるとい う現実を知りながらも、日本よりアメリカを好んでいる人々とだけは言え る。
 この国では、真実を隠して生きることもできる。しかし、日本人としての 自覚と誇りは、常に忘れるべきではない。アメリカにいるからこそ、客観的 に日本人である自分が見える。日本人であり、この国で暮らしているからこ そ出来ることや、するべきことは一体何だろうか。
                       Itsuki Sato
『寄り道』〜イスラエル編〜
 イスラエルを訪れるのはそれで3度目か4度目だった。毎年のように2、 3ヵ月間程の滞在で、その後はNYに移動すると自分の中でかなり強い決心が 予定されていた。それでもいつもわたしの哲学のひとつであり続けている 「予定は予定」が、またちょっと偶然と刺激の重なりでむくむくと頭をだし てきた。結局当初3ヵ月予定の滞在は未定のままで終わり、成田出国時の 400ドル弱の所持金と共にその後1年住むことになる。
 イスラエルの物価は、勿論東京やNYよりは断然安いが、中近東諸国のヨル ダンやエジプト、シリアと比べるとかなり高く、交通と家賃、国内農産物以 外の物は欧米並みに近い。
 今までの「日本と比べてなんでも安〜い!!」どちらかというと旅行者的 気軽な立場から、腰を据えての「住人」になる自分として一番最初に乗り出 さねばならなかったのはVisaとJobの問題であった。
 まずデザイン関係の仕事中心に就職活動を始めてみたものの、どれもこれ も不発で終わる。外国にいて金銭的に苦しいというのは実に不安である。そ の数週間後、イスラエル人の友人の紹介で知り合った日本人男性に日本人関 係の仕事を紹介してもらうことになる。エルサレム市内の病院でリュウマチ 治療を研究している日本の組織団体の手伝いだった。週2日で月3000 シェケル、約1000ドルである。家賃アパートシェアで約300ドル払う ことになっていた私は、ゆくゆくはVisaの手続きもしてくれるというラッ キーなおまけつきのその職につくことになった。
 予定だった3ヵ月が1年に延びたひとつの理由として、2、3ヵ月ではど こも雇ってくれなかったということに気付く。あの滞在の時、もし少なくと ももっと金銭的に観光ツーリストしていたら、自分の「あの予定」は予定通 りになっていたかもしれないなぁと、今だに時々思うのである。
                    KOBAYASHI
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『グリーンカードへの道・第8話』

 やはりグリーンカードのインタビューというのは、誰でも緊張するもので ある。
 待合室のイスに座っていた私の足下に、出生証明書が落ちていた。インタ ビューの際に必要な書類のひとつなのだが、持ち主はそれをきれいに落とし ていったようだった。きっと死ぬほど緊張してて、そのことに気がつかな かったのだろう。
 その落とし物を受付に届けてイスに戻ると、今度は韓国系のお兄さんが、 「誰かこのパスポート、電話のところに置き忘れなかった?」とその待合室 にいる全員に対して聞いてきた。
 私たちの前に座ってた女の子が慌てて立ち上がり、「サンキュー、サン キュー」とそのお兄さんにお礼を言いながら、パスポートを受け取った。
 なにやら、そこにいるみんなが”ハイ”であった。
 そんな”ハイ”な状態の中で、インタビューの方は着実に進行していた。 私の観察によると、インタビューを行なう面接官は、その時、合計で4名い た。その4名が、かわりばんこに出てきて、「なんとかさ〜ん」とインタ ビューされる側の名前を呼ぶのであった。
 私は、ひとりの面接官が、誰かの名前を呼び、獲物を奥に連れ去り、その 獲物たちが再びドアのところに現われるのにどのくらいの時間がかかるか を、じっと時計をにらみつけながらカウントした。それは、平均して約15 分くらいだった。
 インタビューされる側には、その4人の中の誰が自分の面接官になるか は、まったく分からなかった。黒人女性が2名、ラテン系の女性が1名、そ して、白人男性が1名。根性悪そうな顔をした人はいなかった。
 「あのラテン系の女の人がいいなあ。」
 私はとなりのかみさんにそう言った。
 「なんでよ。」
 「だって、おめえもラテン系だべ。そしたら、同じラテンのよしみで、グ リーンカード、ポーンとくれるかもしれねえだろ。」
 「チッ、そんなわけないでしょ。もし、”スペイン語話せますか?”って 聞かれたらどうすんのよ。」
 「そんときは、”ポキート(ちょっとだけ)”つって笑っときゃあいいん だよ。ガッハッハ。」
 「・・・・・。」
 レベルの低い会話が続いていた。
 白人男性の面接官が奥から出てきて誰かの名前を呼んだ。その名は、確か に日本人の名前だった。アジア人女性と白人男性のカップルが立ち上がり、 その面接官の後について奥の部屋に吸い込まれていった。彼等の後ろ姿を待 合室にいた全員が見つめていた。
 「今の女性、日本人だったな。」
 「うん・・・。」
 緊張感が満ち潮のように私たちの身体の中に流れ込み始めていた。鼻の奥 のあたりが、ツーンとしてきた。
 バックを開けて、持ってきた書類をチェックする。それをまたバックの中 に戻し、今度はイスの下に落とし物がないかを確認する。幸い私の出生証明 書は落ちてなかった。でも、誰かがイスの裏にガムをくっつけているのを見 つけた。それは、ピンク色のガムだった。
 パスポートもあった。後は、あの4人の中のひとりに「ミスター・タケナ ガ」と呼ばれるのを待つだけだった。
 「緊張してる?」
 となりのかみさんに聞いた。
 「うん・・・」
 「おれもちょっとな。」
 ツーンとした数分が過ぎ、ドアの開く音が聞こえた。
 「ミスター・タケンアガ。」
 ちゃんと発音せえや、おめえ。
 私たちふたりは立ち上がり、その黒人女性面接官が立つドアに向かって歩 き始めた。後ろ手でドアを締めようとした時、私は最後にもう一度、後ろを 振り返った。
 待合室のみんなが、私のことを見つめていた。
 「それでは皆さん、行ってきます・・・。」
                         ひろ
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『編集後記』

 先週から始まりました「Nutsコラム」のコーナーですが、今のところ約 20名の方々に「Nutsライター」として執筆していただくことになっており ます。つまり、約20コのコラムができるわけです。
 それだけ数がありますと、どれがどれやらさっぱり分からなくなってしま う可能性もあります。そこで、それを防ぐためにライターの皆さんにご自分 のコラム名を決めていただきました。なかなか分かりやすいネーミングに なっていると思います。
 今後、毎週4つから5つのコラムを掲載していく予定です。月イチのもの もありますし、隔週掲載のものもあります。
 また内容につきましても、カタいものからヤワラかいものまでカバーでき るはずです。編集部からの希望としましては、お笑いものがもう少し欲しい ところですね。
 以上です。
 では、また来週。         「週刊Nuts」編集部 
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『今週の歌』

   「Dibi Dibiも AKISUも去った ニューヨーク
               ミニコミ黄金時代が終わる  ひろ」

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