1997年9月16日号(No.184)


                     Nutsの表紙です



目次

*『Nutsコラム』 ・コラム『考える:1時間45分について』 ・コラム『寄り道』〜イスラエル編2〜 ・コラム『若きOLの悩み−彼女の夢』 ・コラム『タコメーター』〜日本のマスコミの手のひら返し〜
*『グリーンカードへの道・第10話』
*『編集後記』
*『今週の歌』
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『Nutsコラム』

『考える:1時間45分について』
 「NYCから車で、約1時間45分ぐらいだからいいか。」
 なんて感じで、今通ってる大学に入学してから早2年目。1時間45分が あだになった。
 もともと大学に入学するまでは、アメリカなんて行ったことがなかった。 けど、小学生のとき毎年かかさず見ていた、アメリカ横断ウルトラクイズで 教えられたアメリカの偉大さに感動し、”いつかはアメリカにいってやる ぞ。”と、いきこんでた。
 運良く親の仕事の関係で、アメリカに大学生として通う前に、香港に6年 間住むチャンスがあり、その間、英語はマスターできた。が、”アメリカ” という土地にそれまで一度も足をふみいれたことがなかった僕は、大学選び に苦労した。西海岸は暖かくて日本人が多い、東海岸は寒い、そして大都市 は危ないなど、超ステレオティピカルな知識しかなかったため、カレッジラ ンキングなど見て、いい学校をピックした。そして今通ってる大学に受か り、通ってるが、後悔の日々だ。
 初めて大学からカタログをもらったとき、”きれいなキャンパスで緑の多 い街だな。”と感動していたのが甘かった。確かに大学のキャンパスはきれ いだし、勉強するならもってこいの環境かもしれない。が、しかし、自然の 豊かさは町の大きさに反比例するのを忘れてた。
 この町はなにもない。お金をこの町で使う、といったらドミノピザぐらい しかない。定年後にこの町に居座るのは悪くないかもしれないが、まだそう いう年頃でもない。
 アメリカにきてわかった。アメリカ横断ウルトラクイズをみて感動した偉 大さというのは、大都市の偉大さであることが。というわけで今僕は、マン ハッタンのアップタウンにある大学にトランスファーしようと勉強中の毎日 である。
 NYCから車で1時間45分。東京から車で1時間45分とは事情が違 う。。。。
                        大樹
『寄り道』〜イスラエル編2〜
 エイラット市はイスラエルの一番南端にある。年中通してダイビングが楽 しめる紅海やラクダに乗ってピクニックなども体験できる砂漠があり、国内 外からの観光客で常ににぎわっている街である。仕事をとるまではと「願」 をかけて禁煙していた頃にまわってきたのは、EXPO 96 in ポルトガルのCM のための日本人役であった。
 「とにかく水分とるの忘れないでね。」 様々な国籍を持った素人役者達やプロのモデル達が岸と船を行ったり来たり している中、撮影スタッフ達が頻繁に声をかける。
 「あたしね、バリだかタイだかとにかくそれ系の役でぇ、この仕事紹介さ れたのぉ。」
 真っ黒に日焼けした日本人の女の子がちょっと面倒臭そうにしゃべりかけ てきた。イスラエルのテルアビブ市から来たと言う彼女は、それ系の民族衣 装をまとい、撮影のための民族ダンスを指導されていた。
 早朝6時から船にいた自分に夕方5時頃やっと出番がきた。ロンドンから 来たとかいうヘアーメイク担当はバイとホモのコンビで、私の頭にかつらを つける作業にとりかかる。着物らしきコスチュームと鳥の巣の様なかつら、 重りの入ったゲタという出で立ちで現地のダイバー達に誘導された。その撮 影というのは、海中8m下で民族ダンスをするという少々過激なものだっ た。ダイビング・ライセンスがなかった人達は前々から費用スポンサー持ち でとらされていたし、すでにライセンスをもっていた私も勿論予行練習は何 回もやらされていた。だが、しかしである。海に落とされる寸前で私はなん と脱水症状で倒れてしまったのだ。無情にもドクターストップがかかる。
 次の日の朝、三日分のバイト代400ドル程を手にエイラットのホテルを 一足先にチェックアウトする。バスターミナルで一カ月ぶりのタバコを吸い ながら、エルサレム市に戻るためのバスをボゥっと待った。
                     KOBAYASHI
『若きOLの悩み−彼女の夢』
 彼女は23歳、OL。趣味といえるものも特にない。
 小さい頃から、なんとなくいろんなことがうまくいってきた。勉強もそれ なりにできた。学校も楽しかった。彼女の人生、なんとなくうまくいってる 気がしてた。
 4年近く働いた会社に嫌気がさして、彼女が転職を考えたのは半月前。
 面接官が彼女に言った。「あんた,ここで何がしたいの?」
 何がしたいなんて考えたことがなかった彼女は、顔面パンチを食らった気 分だった。
 小さい頃、彼女は、ピアニストになりたかった。小説家になりたかった。 そして、何でもいいからキャリアウーマンになりたいと思った。
 かっこいいと思った。そして、N.Yに行きたいと思った。それが、23年間の 彼女の夢のすべてだった。
 そして彼女は悩み始めた。何がしたいのかが分からなかった。
 英会話にも通ってみた。FENもちょっとだけ聞いてみた。ドラマの中の翻訳 家にあこがれて養成学校のパンフレットももらってみた。閉じたままのピア ノを開けてみた。
 だけど彼女には何も見つからなかった。だって、彼女の夢は、現実感のな いただのあこがれの集まりでしかなかったから。
 そして彼女は、何もできない理由を足りない学歴と薄いお財布になすりつ けた。23の夏だった。
 そして、24の冬、彼女は結婚をきめた。
                       はな
『タコメーター』〜日本のマスコミの手のひら返し〜
 メディアは情報を伝える手段から情報をねじ曲げるモンスターになってし まった。弱者の味方でそれを全て美しく解釈する事がイコール真実、という オセンチな発想だ。この傾向は歴史的な重いテーマから松田聖子に至るまで 当てはまる。
 今、歴史解釈は弱者様の時代です。かつて歴史はその時代の強者によって 書き換えられていると言われていたが、今もそれは同じって事になるんか な。今や弱者権力に勝るものなし。そして聖子ちゃんバッシングの根っこに あるのは、退屈な専業主婦の嫉妬心と男尊女卑にしがみついている男達の防 衛心である。つまりこの人達もやっぱり弱者なのかしらん。
 まあそれもひとつの手段として笑ってやる。しかしあんたら、その意表を 突くような驚異の手のひら返しはやめてくれんか。この前の神戸小学生惨殺 事件でも散々極悪非道な犯人に対して憤りをぶつけていたくせに中学生だと わかった途端、やってくれたよ、手のひら返し。「犯人がかわいそう。気づ いてあげられなかった私達が悪いんです」ときた。私らは皆コケた。これま さしく勘違いの偽善者集団。
 それが正に只今ダイアナ報道でこの集団が燃えに燃えている。「ダイア ナってそんなにスバラシイ人だったなんて知らなんだなー」等というつっこ みができない空気。疑問は非情とされ、良いマスコミ報道を受け入れるのが 良い人間とされる。「おいおい、ここまで美化するか?」と思う私らは鬼か い。
                      マトリョーシカ
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『グリーンカードへの道・第10話』

 それは、この日曜日の朝のことだった。
 インタビューの本格的な内容を書くにあたり、私はその詳細を確認するた めに、かみさんにもいろいろと聞いてみることにした。「朝メシおごるから おねがい。」と、かみさんを近くの日系のパン屋さんまで連れ出し、そこで パンを食いながら、「グリーンカードのインタビュー」に関するインタ ビューを始めたのである。
 「ほら、わしら、最初に誓いの言葉みたいなのに”イエス”って答えただ ろ。あの後、なに聞かれたか覚えてる?」
 「”イエス”なんか言ったっけ?」
 かみさんはカレーパンを頬張りながらそう言った。
 「おめえ、そんなことも覚えてねえのか。」
 「なんで今頃聞いてんのよ。もう一カ月半も前のことじゃない。」
 「使えねえ野郎だなあ。質問に答えてたの、おめえじゃねえか。」
 「ダメよ。分かんない。残念でした。」
 「この根性ナシが。ちっとは思い出せよ。」
 かみさんは、カレーパンを食うのをやめ、しばらくの間、遠い目をしなが ら何かを考えていた。それはまるで、記憶のアルバムを引きずり出し、その 1ページ1ページをペロリペロリとめくっているかのようだった。
 そして、アイスティーを一口飲んだあと、ボソリとこう言った。
 「移民との結婚は、やっぱり金がかかり過ぎたわ。」
 そんなわけで、かみさんに期待した私がバカだった。
 ここから鋭く移民局のシーンに戻る。
 私たちの目の前には、黒人女性の面接官が座っていた。
 年の頃は30半ば。黒人とは言っても色は薄い。髪の毛を後でひとつに束 ね、小柄だが、全体的に極めてきっちりした身なりをしていた。なかなか魅 力的な女性であった。
 失礼な話だが、「移民局の黒人女性面接官」と言われて私がすぐに思い浮 かべるのは、映画「スターウォーズ」に出てきたガマガエルの化け物のよう な悪党の姿であった。ああいう面接官が、机の向こう側に座っていて、私た ちが質問に答える度に「グオッ」とか「ガフッ」とかいう奇妙なウナリ声を 出すような気がしていたのである。
 ところが目の前にいる面接官は、ガマガエルとは似ても似つかぬ、「きれ い」という言葉の使用を許されるような女性だったのである。
 でも、「きれいである」という事と、「グリーンカードをさっさとくれ る」という事は、まったく別の問題である。もしかしたら、その小さな顔の 下には、あの恐ろしいガマガエルのココロが潜んでいて、いきなり「Go back to Japan!」などと言われてしまうかもしれない。油断は禁物であった。
 彼女は、自己紹介の後、書類に書かれた私の名前を読み上げた。
 「タケ・・ン・・ガ、これなんて発音すんの?」
 「タケナガっていうんです。」
   そう言ったかみさんをふと見ると、「人の名前も発音できんのか、このア ホンダラが。」という顔をしていた。油断できんヤツがここにもひとりい た。
 その時、私の目の前には、「踏んだらアウトよ。」の地雷原が、果てしな く広がっていた・・・。
                         ひろ
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『編集後記』

 さて、魔の9月27日がもうすぐやってきます。
 この9月27日、実を言いますと、例の新移民法の「3年&10年国外退 去のお仕置き法」が施行されるデッドラインの日なのであります。
 最近、「3年&10年国外退去のお仕置き法は、なくなるのではないか」 という話をよく聞きますが、今のところ、まだ正式には潰されてないようで す。ただ、すでに永住権を申請してる人に関しては、見逃してくれることが 決まりかけているらしいです。まあ、はっきりしたことは、もう少ししない と分からないですけどね。
 で、今、ちまたには、その9月27日の前あたりに、これまで不法滞在し てた日本人の皆さんが、比較的まとまって日本に引き上げるのではないかと いう噂が流れています。
 「いや、彼らはすでに帰り始めていて、別にその時期にまとまって帰国す るってわけじゃない。」という声もありますし、「様子見のために、まだし ばらく残るって人も多いはず。一概に”みんな帰るよー。”とは言えない し、そういう噂を立てて、多くの人たちを混乱させることにこそ問題がある んじゃないの。」という意見もあります。
 Nuts編集部でも実際のところはよく分からないのですが、ただ、もし「3 年&10年国外退去のお仕置き法」が原因でその時期に帰国する人がいた ら、彼らに今の気持ちを聞いてみたいと思ったのであります。
   これまでの想い出やこれからの希望と不安。時代の変わり目の、ある意味 での「犠牲者」としての彼らの声を、この「週刊Nuts」で取り上げたいと考 えたのです。
 口コミで知り合った人にインタビューするとか、実際 JFK 空港に行って、 そこにいる人たちに直接聞いてみるという方法もあります。でも、それをや る書き手がいないのであります。
 そこでルポライターの募集です。
 上記の内容のルポを書きたいと思う方を現在探しています。1話750 字。何話でもアリ。この「週刊Nuts」に毎週連載します。
 感のいい方はお分かりかと思いますが、ギャラは出ません。それでもやり たいという方を募集します(そんな物好きがいるんかい)。興味のある方 は、Nuts編集部(212-982-3348)までご連絡ください。
 次は「Nuts井戸端会議」のハナシ。
 来たる9月25日(木)午後6時半より日系人会(15 West 44th Street 11th Fl.)にて、1ヵ月ぶりの「Nuts井戸端会議」を開きます。
 内容は、いつも通りの「なんでもアリ」。ただ、今回は、参加する方々に Nutsライターの評判などをお聞きしてみたいと考えております。「どのライ ターさんが好きですか」「その人の文のどういうところが好きですか」「ど の表現が輝いてるて思いますか」「どこを変えればもっと良くなると思いま すか」てなことを聞いてみるつもりです。
 楽しみですのう。
 以上です。
 では、また来週。
                 「週刊Nuts」編集部
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『今週の歌』

「白飯と ノリとしょうゆと みそ汁で
             幸せな妻 ラッキーな我   ひろ」

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「週刊Nuts」編集部


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