1997年9月23日号(No.185)


                     Nutsの表紙です



目次

*『Nutsコラム』 ・コラム『おさるさんが行く』 ・コラム『LIFE』 ・コラム『アメリカ模様 Look for America』
*『VOICE』 ・投書「ニューヨーク恋物語」
*『グリーンカードへの道・第11話』
*『編集後記』
*『今週の歌』
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『Nutsコラム』

『おさるさんが行く』 〜メディアの質の低下〜
 先日、ダイアナ元皇太子妃が夭逝しました。この事件以来、小切手ジャー ナリズムの姿が浮き彫りになり、メディアそれ自体を考える時が来ました。
 情報化社会の中でメディアが多様化し、報道合戦が激化するにつれて、メ ディア側はより刺激的で面白い情報を供給するために、たゆまぬ努力をして きました。それ自体は大変喜ばしい事だと思います。けれど、今回の事件の ようにプライバシーを“覗き見る”のは、メディアの本道であるジャーナリ ズムに反しているのではないでしょうか。
 そもそも“ジャーナリズム”って、何なんでしょう?広辞苑によると、 「新聞・雑誌・ラジオ・テレビなどで時事問題の報道・解説・批評などを行 う活動」とありました。販売部数、視聴率に重きを置くあまり、メディアは “ジャーナリズム”の本質を忘れてしまったのではないでしょうか。タブロ イド文化を否定するつもりはありませんが、“ジャーナリズム”という視点 から見ると下の下です。メディアの本流と言われるものの中にも、タブロイ ド文化と迎合しているものもあるので、メディア全体の質の低下というほか はありません。
 一方、メディアを受け取る側にも問題はあります。強い刺激に麻痺し、よ り強い刺激を求めるあまり本質を忘れているように思えます。加えて、溢れ る情報の中で漫然としている人、情報を正確にanalyzeできない人が増えてき ているように思えます。つまり消費者の質も低下しているのです。
 結局伝える側・受け取る側の質の低下がメディア全体の質を低下させてい るのではないでしょうか。ダイアナさんの事件を機会にメディアに携わる 方々、その消費者の方々にこのことについて考えて頂きたいと思います。
 このコラムでは分野を問わずいろいろなことについて話したいと思いま す。政治・経済・恋愛etc....何でもです。この話題をやってほしい、質問、文 句などありましたらe-mailください。メイルアドレスはsl99v@cc.usu.edu です。英語かローマ字でお願いします。
        K
  『LIFE』 〜Vol.1 「 キム」 〜
 キムは“スプラッシュ”のドアを開けた。気だるい空気が中から押し寄せ てくる。木曜日の夜。
 「セックスオンザビーチを」。いつものドリンクを頼んでからマルボロラ イトに火をつける。キムは、この時間が大好きだ。窮屈な大学生活の合間 の、開放される一瞬。そして、新たな出会いにちょっと胸をときめかせる一 瞬。
 木曜の夜はキムにとって特別だ。1週間分のストレスをアルコールで洗い 流し、気の合う仲間達と冗談を言い合い、そしてその夜を一緒に過ごしてく れる人を求めてさまよう・・。
 ああ、とキムはふと考える。祖国のママがこんな私の生活を知ったらどう なるんだろう。祖国ではいじめられ、友達もろくにいなかったキムにとっ て、アメリカは夢のような場所だった。男を喜ばせるのがいかに簡単かを 知ったのもアメリカに来てからだった。
 いいのだ、とキムは思う。キムは人を愛して傷つくのが恐かった。だか ら、その瞬間だけでも、たとえ木曜の夜だけでも、誰かが自分の事を愛して くれる、それで十分なのだ。まわりの女達に自分がビッチと呼ばれている事 をキムは知っている。自分達だって木曜の夜は男の気をひこうと必死なくせ に、バカな女達。
 キムは、自分が今一番欲しいものが何かを知っている。それは、もう2度 と人から馬鹿にされなくなるような、誰にも文句を言わせないような、何 か。それは学歴かもしれない、その後に待ち受けているキャリアかもしれな い、それを手に入れる為だったら何だってする。木曜の夜の男達が私を愛し てくれる限り、私には甘い恋愛など必要ない・・。
 キムはマルボロを吸い終えると、店の奥へと入っていった。
                        TAMIKO
『アメリカ模様 Look for America』
 アメリカとの出会い、それは私が6才の時にさかのぼる。両親に連れられ て行った”卒業”の映画、その内容は理解できなかったが、主題歌が妙に心 に残った。Simon&Garfunkelのサウンド・オブ・サイレンス。小さなEPレ コードを買ってもらい、友達とともにうっとり聞き惚れた記憶がある。英語 で意味が全く分からなかったので、辞書を借りて日本語に訳す無駄な試みを した覚えがある。
 中学に入って彼らのベスト・アルバムを買った。その中に、”America” という曲があった。”All come to look for America...”アメリカに憧れて いたわけではなかったが、人々がアメリカに夢を託す意味が知りたいと思っ た。
 30才を過ぎてアメリカ人の彼と日本で出会った。初めての出会いは別に 衝撃的でも何でもなかったがその後、2年弱私達はファックスと電話でほと んど毎日のように会話した。
 そして、今アメリカにいる。それはあまりにも私の人生の中で自然な流れ だった。この国に住んで5年になるが、 最近つくづく思うことがある。さま ざまな人種がミックスされたこの国に来て初めて生きる意味、そしてその奥 深さに触れられる、と。マイノリテイの一員として暮らすのは日本人として 容易ではない。だが、弱者の立場にいる人間こそたくましく、そして賢くな れるのではないだろうか。
 現在でも、世界中からたくさんの人々が何かを探してアメリカにやってく る。私はやっと、彼らの気持ちをほんの少しだけわかり始めたような気がし ている。
                      景子ハミルトン
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『VOICE』

「ニューヨーク恋物語」
 「グリーンカード」持っていない人は誰もが欲しいと思っているだろう。 ずばり私もその一人である。学生は卒業するまで永遠と授業料を払い続けな ければいけない。労働ビザを持っていてもその会社だけでしか働けない。実 際の話し、人材バンクなどに就職活動にいくと「ビザがなければ話しになり ません。結婚してから、又来てください。」と言われる。抽選も当たらな かった。
 ふとボーイフレンドに日本に帰るとほのめかした。頭の中では「帰っちゃ いけない、ボクと結婚しよう」と言われる筋書だったが、逆に相手にプレッ シャーとなり、”I'm sorry. I can't go though with you.”と言われた。
 そうなると気持ちの規制が利かなくなり、今までの責任を取れ、その為に 結婚しろなんてすごい事が口から出てしまった。こうなると破局寸前、「結 局君もグリーンカードが欲しかったのか、それならゲイと結婚しろ」とき た。こちらも後に引けず、大学の授業料を「ペイ」するから、責任とって ちゃんとした人を紹介しなさいよと憤りの感情が言葉となった。
 数日後、約束の場所に向かう私は本気であった。それはグリーンカードよ りも自分を振った男と意地でも接触を保とう、なんとしても日本に帰るもの かという私の乙女心?だろうか。
 私の夫になろうという人は優しい人であった。彼いわく、グリーンカード を取るまではとにかくペイシェントを持つ事、弟がインタビューで問われる だろう100の質問を知っているから、次回はそれにそってお互いを知り 合っていこう、とまるでドラマの様ではないか。
 そして、結婚式の承認が二人必要で、君のエックスボーイフレンドがその うちの一人だと言った。その瞬間、頭が白紙になり、涙がツーと頬に流れ た。申し訳ないが、やっぱりやめると言い、席を立った。
 頭の中に「終わりを告げた恋にすがるのはやめにして」と竹内まりあの歌 声が流れ出し、気が付いた。自分が欲しかったモノはグリーンカードではな くて、愛であった、と。時すでに遅いし。ニューヨークの地下鉄で泣いた夏 の夕暮れであった。
                     森本真理子
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『グリーンカードへの道・第11話』

 インタビューの際に受けた質問は、たったの2つだった。
 「どうやって知り合ったんですか。」
 「それはいつですか。」
 それだけだったのである。この文を書くにあたり、インタビューの時にど んな質問を受けたのかを一生懸命考えたのだが、結局、思い出したのは、そ の2つの質問だった。なぜなら、それだけしか質問されなかったからであ る。
 私とすれば、もっといっぱい質問されたような気がしてて、それらを ちょっとずつネタとして使っていきたいなあ、などと思っていたのだが、よ く考えたら、アンタ、ネタに使えそうなもんなんか、なーんにもないでない の。
 ついでに、インタビューの際にしゃべっていたのは、ほとんどかみさんの 方だった。その2つの質問に答えたのもかみさんだ。
 「ボランティア先で知り合ったんです。」
 「92年の6月です。」
 かみさんがそう答えて、私たちのインタビューの質問セッションは完了し たのである。
 「映画じゃないんだから、歯ブラシの色なんか聞かれねえよ」と、かみさ んやまわりの人間たちには言っていたのだが、でも念のために、かみさんの 歯ブラシが白とピンクの2色モノであることや、ふたりで最後に観た映画は 「メン・イン・ブラック」であることなんかも、ちゃんとチェックしていた のである。なのに、なのに、「どうやって知り合ったんですか」「それはい つですか」だけなんてヒドイ、ヒドイ、ヒドイ。
 いや〜ん。
 さて、質問の後は、持参した書類のチェックだった。面接官が言う書類を かみさんが次々と手渡していく。
 今朝、リステリンでウガイした私がやることは、ただそこに座っているこ とのみであった。
 「写真ありますか。」
 面接官が聞いた。
 かみさんは、結婚式のアルバムを取り出し、それを差し出した。
 「国連のチャペルで式を挙げたんです。」
   かみさんが言った。でも、面接官は、そのひとことには、まったく反応を 見せず、写真を1、2枚見ただけで、そのアルバムをかみさんに返した。
 「ブチン」。
 かみさんのココロの吊橋を支えるロープが、1本切れた音が聞こえた。そ の吊橋の下には、イカリの溶岩がドロドロと流れているのが、私にはよく分 かった。
 面接官が言った。
 「提出用の写真、ありますか」。
 インタビューの際には、書類と共に、ふたりで写った写真を1枚提出する ことになっていた。ゴソゴソとその写真を探していたかみさんが、突然、私 の方を向いて言った。
 「ないわ。今朝、最後にあの写真を見てたの、アンタよね。」
 また、ロープの切れる音が聞こえた。
 「え? オレ? いや〜、知らんなあ・・・」
 「イクスキューズ・ミー?」
 ロープは、ブチブチブチと切れ続けていた。
 かみさんのイカリが、知らない間に私に向けられていた。ゴクリと飲み込 んだツバには、今朝のリステリンの味がまだ少しだけ残っていた。
                        ひろ
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『編集後記』

 イベントのお知らせが2つあります。
 最初は、「Nuts井戸端会議」について。
 9月25日(木)午後6時半より日系人会(15 West 44th St. 11階)に て、恒例の「Nuts井戸端会議」を開きます。むずかしいことはありません。 単なる井戸端会議だと思ってください。だから、あんまり期待しないでね。 2時間くらい捨てる気持ちでご参加いただければ幸いです。
 もうひとつは、「就職セミナー」について。
 来る10月4日(土)午後2時よりNYUにて、「就職セミナー直前必勝 法!」と題したイベントが開かれます。主催は、FACTA & Cuny's, バルーク 大学日本倶楽部、後援が、日本経済新聞社になります。
 この10月に日本人留学生を対象にした就職説明会がアメリカ各地で開か れるのですが、「それに備えていろいろ準備しよやないか」というのが、こ のイベントのコンセプトなのであります。
 目玉は、なんと言っても、就職説明会の2大巨頭、ディスコ・インターナ ショナルとリクルート、そして人材派遣界の大御所、パソナの3社から講演 者を得たことなのであります。主催者側も「この講演者の組み合わせ、最初 で最後かもしれません。」なんちゅうコピーをチラシの中にさりげなく入れ たりなんかして、「店じまい大売り出し」的雰囲気をかもし出してるのがニ クイですのう。
 てなわけで、詳細は以下の通りです。
「就職セミナー直前必勝法」
日時:10月4日(土)午後2時より 場所:New York University, Law School ラウンジ    (40 Washington Square South) 入場料:5ドル 参加申し込み:212-857-4211 詳細は、http://www.facta.com をご覧ください。
 今年の各就職説明会には、日本からかなりの数の企業が参加するようで す。すばらしい展開ではありませんか。それら日系企業に採用された留学生 たちが、今後どのようにサバイブしていくのか、ここで得た「アメリカ的」 なものをどうやって日本で自分なりに表現してくのか、またそれらを隠さざ るを得なくなった時、どのように切り抜けるのか、それとも、「先祖返り」 してアメリカに来る前よりずっと「日本的」になってしまうのか、あるい は、「アメリカ的も日本的も関係ないもーん」と自分の道をルンルン歩いて いくのか、非常に興味深いところです。
 大変失礼な言い方かもしれませんが、ワクワクしながら見学させていただ きます。留学生の皆さん、日本を食っちゃってください。そして、その新鮮 なウンコで新しい日本を作ってちょうだい。ただ、くれぐれもゲリしないよ うにね。
 で、将来、なにか一緒にできそうなことがありましたら、一発かましま しょか。
 今週は、そんなところです。
 では、また来週。
                    「週刊Nuts」編集部
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『今週の歌』

「皿洗う 我を監視する君よ
          だったらおめえが 洗えバカタレ   ひろ」

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「週刊Nuts」編集部


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