1997年10月14日号(No.188)


                     Nutsの表紙です



目次

*『NYJJの話』
*『Nutsコラム』 ・コラム『Village日記』〜 Vol.2 〜 ・コラム『寄り道』〜イスラエル編4〜 ・コラム『N.Y.衣心』 ・コラム『日本政治の馬々虎々』      〜第3回 「首相のリーダーシップ」強化論の危険〜
*『グリーンカードへの道・第14話』
*『今週の歌』
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『NYJJの話』

 さて、「NYJJ」の話です。
 この「NYJJ」、日本語で言いますと「ニューヨーク在住日本国籍日本人」 のことなのであります。要するに「New York」と「Japanese Japanese」 の頭の文字を取ったものです。作ったのは、私たちNuts軍団です。
 なんでこんなもんを作ったかと言いますと、一般に使われる海外に住む日 本人の呼び名というのが、必要以上にクラいからなのであります。「ニュー ヨークで楽しく明かるくチンタラ暮らそうではないか」をモットーにしてい るNuts軍団としましては、そのクラさが許せないのであります
 通常、私たち海外に住む日本人は、「在外日本人」とか「在外邦人」など と呼ばれています。読んでいただければ分かるように、漢字ばっかりで雰囲 気がカタいのです。
 さらに、「在外日本人」につきましては、同名の『「在外」日本人』(柳 原和子著)という本が晶文社から出ておるのですが、これが徹底的にクラ〜 い内容なのであります。
 この本は、海外に住む日本人108人にインタビューしたノンフィクショ ンもので、一般には非常に評価が高い本なのであります。それは私たちも認 めるのですが、この本に出てくるのは、海外に住む日本人の「つらい・苦し い」ばかりで、「楽しい・笑っちゃうぜ」という部分は、ほとんど顔を出さ ないのです。
 ですから、この本を読んだ人たちは、おそらく「いや〜、海外の皆さん、 大変ですねえ」という感想も持ったと思います。そこには、弾むような楽し さやおもしろさというのは、感じられなかったのであります。
 というわけで、「在外日本人」という呼び名には、そういう「つらい・苦 しい」イメージだけが、こびりついてる可能性があるのです。だからこの呼 び名は使いたくないのですね。
 ついでに、この『「在外」日本人』という本が創った「在外日本人」のイ メージをつぶす必要もあります。これについては、別の機会に書くつもりで す。
 また、もうひとつの「在外邦人」という呼び名につきましても、問題があ るのであります。
 最近の日本の新聞には、「どこかの国で戦争のドンチャン騒ぎが始まった 場合、在外邦人の救出に自衛隊機を使うんですかい、それともアメリカ軍に も手伝ってもらうのかしら、え〜、結局、どうしますの?」という議論が多 く見られます。新聞紙上で「在外邦人」という言葉が使われるのは、ほとん どその件について、と言い切ってもいいぐらいです。
 ここまで言えばお分かりのように、この「在外邦人」という呼び名も最近 急速にクラい雰囲気を抱え込みつつあるのです。私たちニューヨークに住む 日本人にとっては、「自衛隊とかアメリカ軍とか、一体なんの話やねん」と いう感じがするのですが、「在外邦人」という言葉は、そんな私たちの現実 の姿を無視して、「ジャングルの中を逃げまどう日本人たち」とか「自衛隊 機の中で、体操座りしながら”お国に帰りたいよ〜”とおびえている日本人 たち」というイメージを着実に築き上げつつあるのですな。
 大したもんです。
 となると、当然、「在外邦人」もクラすぎるのです。この言葉が、自衛隊 機と一緒に墜落する前に、私たちはパラシュートで飛び降りなければならな いのです。
 トドメに、上記のふたつの言葉、「在外日本人」&「在外邦人」には、 「在外」という表現がついてくるのですが、この「在外」という感覚が、恐 竜的に古いのであります。つまり、「外に在住してる」という鎖国的世界観 なのですな。
 世界中が「ボーダレスじゃー」といってる時代に、いまだに「内に住む、 外に住む」などと言ってる日本人は、ホントにオメデタイとしか言いようが ありません。
 内とか外とかいう視点ではなく、国境をとっぱらって、単純に「どこに住 んでるの」感覚でいくべきなのであります。「在外」ではなく、「ニュー ヨーク在住」「北京在住」「南極在住」、そして、「日本在住」という表現 を使う時期に来ているのです。
 てなわけで、「それでは、私たちの呼び名を私たち自身の手で考え出そう ではないの。まず最初は、ニューヨークに住んでる日本人の名前から行こ か」となりまして、その結果、出てきたのが、「NYJJ(ニューヨーク在住日 本国籍日本人)」だったのであります。
 「横文字に走るよりも、漢字やひらがなで攻めようではないか」「JJとい うのがイマイチよく分からん」という意見もあるでしょう。
 漢字を使用しますと、雰囲気が重くなります。ひらがなは、こういう名称 にはなかなか使えません。また、カタカナは、やたらと長くなりがちです。 だから、英語の頭文字集合体に走りました。
 アメリカには、「チャイニーズ・アメリカン」とか「ジャパニーズ・アメ リカン」という表現があります。日本語で言うと、「中国系アメリカ人」 「日系アメリカ人」という意味になります。
 その言葉の構成についてですが、例えば、「ジャパニーズ・アメリカン」 の場合ですと、私の解釈では「ジャパニーズ=人種」「アメリカン=国 籍」、つまり「人種・国籍」となります。
 これを私たち日本国籍を持つ日本人に当てはめますと、「ジャパニーズ・ ジャパニーズ」になるのです。
 「私たちって、”アメリカン・ジャパニーズ”じゃないの」という質問を 受けたことがあるのですが、上記の「人種・国籍」の法則から行きますと、 私たちはやはり「JJ」なのですね。
 で、私たちはニューヨークに住んでるわけですから、「NY」をつけて、 「NYJJ 」の出来上がりとなったのであります。
 「いや、”NYJJ”はダサい。これはどうだ」という方がいましたら、その アイデアをドンドンお送りください。また、「特にそういう名前をつける必 要はない。日本人は日本人でいいではないか」という意見でも結構です。
 とりあえず、このNutsでは、今後、ニューヨークの日本人のことを 「NYJJ」、そして、海外に住む日本人のことを「JJ」と呼びます。そして、 いつの日か「在外日本人」とか「在外邦人」なんちゅう言葉を絶滅に追い込 みたいと思います。
 フッフッフ、「NYJJ」の登場なのであります。
 そんなところですな。
 では。              「週刊Nuts」編集部
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『Nutsコラム』

『Village日記』〜 Vol.2 〜
 彼とここグリニッジ・ビレッジで暮らし始めた2年目の冬、結婚話が突然 もちあがった。貯金もなくシティ・ホールで式を挙げようと思っていたそん なある日、「ラスベガスで結婚しよう」と彼が言いだし、イエローページか ら30軒以上ものチャペルをプリントして、2人して思わず吹き出した” Chapel of Love”といううさんくさい名のチャペルに決め、早速2月14日 の予約を取った。そんなチャペルは見たことも聞いたこともなく、余計にワ クワクする。ラスベガスの挙式はとてもチープで、セレモニー、リムジン送 迎、ブーケ、写真・ビデオのパッケージで$350ぐらい。
 ラスベガスに着いた日がすでに4日前ということで、マリッジ・ライセン スの申請(24時間オープンのシティ・ホールはまるでカップルが群がるコ ンビニのよう)、チャペルでの簡単な打ち合わせ、それからこれだけはハズ せないウエディングドレスをレンタルすべくコンバーチブルで街中を走りま わった。3軒のレンタルストアをチェックして、あまりの子どもだましのよ うなシロモノに半分泣きそうになってた私を4軒目のお店が救ってくれるこ とになる。まるで私のために作られたかのごとくそのレースのアンティー ク・ドレスは素敵だった。
 式当日、タイ人のメイクのおばさんに「あなたもアジア人だからわかると 思うけど鼻を高く、小顔に見せるメイクよろしくね」とウインク。白人の彼 と比べたら実は私の方が顔がでかい。
 チャペルそのものは、私が勝手に思い描いていた予想を少し裏切ってくれ たけど、アットホームでとても短かな式をおごそかに終えた。ハネムーンも 兼ね、連日連夜遊びまわった揚げ句、いちびって車でグランドキャニオンま で行って疲れ果てた私たちに名ばかりの初夜もハネムーンHもなかったことを 最後に特筆しておきたい。
                       M・P
『寄り道』〜イスラエル編4〜
 ヘブライ語を教えるウルパン学校の先生。
 ひとりづつクラスの端から何やら質問していく。ウルパン先生はヘブライ 語しかしゃべらない。のに、生徒はちゃんと答えている。
 「アングリア」
 「アルゲンティーナ」
 「ゲルマニヤ」
 「ペルー」
優等生の答の「音」で劣等生はウルパン先生の呪文をさぐるのである。
 「Where are you from?」と解読する。なめんなよ、そんくらいの呪文な ら知ってるよん!
 「アニ メ ヤパン」
と、誇らしげに答えるつもりが緊張しすぎて先生が質問する前にしゃべりだ してしまった。しまった...まぬ毛である。
 きたきた!また次の質問がきた。「音」的には何やら数字だな、と探る。 「誕生日を聞いてんのか?」とguessする。8月って呪文はなんつうん だっけ?と頭をひねる。
 「映画になったから有名だよ。」
L.A.から来たという白人のおっさんが英語でボソっとわたしに言った。
 あっそうか、「独立記念日」を聞いてんのね!内心ホっとする。...で も日本の独立記念日っていつなんや?
 「あんた自分の国の独立記念日も知らないの?」「ちゃんと質問わかって のぉ?」
 もたつく私に容赦のない攻撃。悔しい。こういう呪文だけはなんでかすぐ わかる。ロシア移民のその先生ははっきり言って肝っ玉母ちゃん系だ。でも 声はジャニス=ジョップリンだ。「もういいわ!次の人!」
 白人のおっさんがまたボソっとわたしに言った。「日本は昔から独立して るもんね。」ウインク付きだ。
 そうだ!「国立」記念日はあった、ような。いや、「建国」記念日か?  でも、「ちょっと先生!日本はね、建国記念日しかないんだよ!」って、ヘ ブライ語でなんて言うんだ?!
                      KOBAYASHI
『N.Y.衣心』
 2nd Ave. & 9th St. のVESELKAで朝食をとるのが私の習慣である。通り 過ぎ行く人々の服装は次第に黒を増してきた。そんなニューヨーカー達の姿 は、黄葉した景色の中で、冷たい空気とともに心にピリッと辛さを加える。
 ある朝、例の如く、外のテラスに座ってボーっとしているとどこからとも なく美味しい香りが漂ってきた。隣の人が食べているバナナパンケーキの匂 いかと思いきや鼻を近づけたが少し違う。
 よーく耳ではなくて鼻を澄ますと、それは通りすがりの黒いシャネルスー ツを着たマダムから醸し出されていることに私は気付いた。小さくなってゆ く彼女を、逃がしてはいけないと追いかけてしまった。
 「素敵な香りですね。何て名前の香水ですか?」と後ろから突つくと、 "What's?"という顔をしたが、「グリーンアップルとミントを混ぜたものな の、美味しそうでしょ。」と言い、一枚のカードと「香水ぐらいは自分で創 らないとね。」という言葉、そして甘酸っぱい笑顔を残して去って行った。
 21 East 7th Street 『FRAGRANCE SHOPPE NEW YORK』がその香りを 創り出した張本人だ。この店は200以上の香りを揃え、自分の好みに合わ せて調合してくれる。値段はなんと8ドルから。グリーンアップルの香りは アップリフティング、つまり精神向上をさせるそうだ。
 流行というものをファッション界から切り離すことはできない。それで御 飯を食べる人達がいるからだ。それは洋服だけでなく、アクセサリー、香 水、と多くのものが我々の生活に侵入してくる。しかしブランドのラベルに 囚われる前に、自分という人間のアイデンティティーを確立していきたい。
 変わりゆく季節の中、何んとなく自分も変えてみたいと思ったら、まずは 8ドルの香りから始めてみてはいかが?
                     森本真理子
『日本政治の馬々虎々』 〜第3回 「首相のリーダーシップ」強化論の危険〜
 11月末に最終報告をまとめるべく政府の行政改革会議が検討を急いでい るが、郵政事業の民営化や大蔵省の財政・金融分離の是非ばかりが注目さ れ、本当に重要な論点が置き去りにされているように思えてならない。例え ば、閣議への「多数決制」導入の問題だ。
 現在の閣議は「全員一致」で行われているが、これは「内閣の国会に対す る連帯責任」という憲法66条の規定からしても当然のことと思われてき た。しかし、行政改革会議はその中間報告において、この議決方法が「首相 のリーダーシップ」を制約しているとして「多数決制」の導入に言及した。
 しかし、本当にこれは制度の問題なのだろうか。昨年の新選挙制度導入の 時もそうだったが、皆、制度を変えればすべて良くなると考えがちだ。しか し、実際には、ことごとく裏切られ続けてきた。「制度改革」を万能薬と見 るこうした「馬々虎々」な発想はもう止めにしてはどうだろうか。
 そもそも我が国の総理大臣は国会の多数党との一体性が強いため、米国の 大統領に比べてさえその「権限」はむしろ強いとの指摘もある。今の日本の 政治家は、自分たちの器量の無さを棚に上げて問題の原因を制度の不備に求 めているが、本当に変わらないといけないのは政治家自身であり、更に言え ば国民そのものなのだ。
 特に、内閣という行政の指令塔における議決方法は、我が国内閣制度の根 幹であり、その「全員一致」制は行政府の暴走を抑制する「知恵」として ワークしてきた。総理には、「罷免権」(憲法68条)など現行の「権限」 を武器として「リーダーシップ」を発揮していって欲しい。総理に値する本 当の政治家なのであれば。(つづく)
*今回のまとめの詩(うた)
「改革と 制度を指して 言うけれど
      あなた自身は どうなのと思う」   勝人
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『グリーンカードへの道・第14話』

 この話を書き始めて以来、日本の読者からこんな感想をいただくことが多 い。
 「いや〜、アメリカ人になるって大変ですね」
 そこには、私たちをへだてる太平洋のごとき大きなカン違いが横たわって いるのである。
 言っておくが、私は死んでもアメリカ人になるつもりはない。比較的ヤセ 型の私がアメリカ人になることによって、「国民の半分はデブよ」というこ の国の肥満率低下に貢献したいと思わないこともないが、その件について は、「カフェイン・フリー・ダイエット・コーク」に任せておこうと思う。
 人々のカン違いの原因は、この「グリーンカード」の日本語訳、「永住 権」にある。「永住権を取ろうってことは、アメリカ人になるってことじゃ ないの」と日本の読者が考えるのも当然といえば当然なのである。
 私がまだ日本にいた時のことを考えても、その「永住権=アメリカに永住 して、そこの国民になるってことね」の気持ちはよく分かる。そんなもん、 日本にいる人たちに、「永住権」と「市民権」の違いなど分かるわけがな い。
 てなわけで、ここで明言しなければなるまい。私が手に入れようとがん ばっている「グリーンカード」は、正確に言うと「書き換えのいらない労働 ビザ」なのである。それを得ることは、間違っても「アメリカ人になる」と いう意味ではない。グリーンカードさえあったら、この国で働くことも、日 本にピョンピョン帰ることも可能なのよ、ということなのである。
 その「書き換えのいらない労働ビザ」をGETするために、私はかみさんを利 用したのである。(おいおい)
 いや、「利用」という言い方は言葉が過ぎるだろう。私はそれを得るため にかみさんを活用したのである。(同じじゃ)
 「いや〜、アメリカ人になるって大変ですねえ」と思われた皆さん、私は 断じてデブの仲間入りするつもりなどないのです。そんなことしたら、かみ さんに続いてまたひとり、日本人に向かって「黄色いケツの屈折野郎ども が」などとほざく、イマイマしいアメリカ人が増えるだけじゃありません か。
 人間、何事も自分を知ることから始めねばなりません。
 はい。
                         ひろ
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『今週の歌』

「jamjamさん DJたちが さびしそう
         聞き役がいたら きっといいです   ひろ」

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「週刊Nuts」編集部


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