1998年2月2日号(No.204)




目次

*『Nuts世界観光案内復活』
*『Nutsコラム』 ・コラム『日本政治の馬々虎々』〜第11回 大蔵汚職〜 ・コラム『道端で哲学』〜”ダマされた!”2時間の白日夢3〜
*『VOICE』 ・投書『幽霊を見た』
*『グリーンカードへの道・第27話』
*『今週の歌』
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『Nuts世界観光案内復活』

 さて、あの「Nuts世界観光案内」が復活するのであります。
 この「週刊Nuts」紙上に94年から96年1月まで「Nuts世界観光案内」 というコーナーが存在したのであります。最初が「沖縄・北大東島編」、次 が「アジア放浪編」。それぞれをですね、約20話ずつやりました(詳しく はホームページをご覧ください:http://www.interport.net/~hiro/ Nuts/)。
 で、このコーナー、その後プッツン途切れてしまいまして、約2年間冬眠 状態だったのであります。理由は、著者のHiro氏が怠けてたからです。
 実を言いますと、ネタはまだまだいっぱいあるのです。「アジア放浪編」 の場合、正確にはいくつかの小編に分かれておりまして、ここで少しばかり ご紹介しますと、「怒涛のムエタイキック編」「小僧イルカに死体が泳ぐガ ンジス川だぜゴーゴー編」「コロコロ転がるカラコルム山脈編」「ダラダラ ただれるネパール編」「ちょっとそこまでチベット密入国編」「手鼻はやめ ろよ広州上海編」となっております。
 とりあえず復活するのは、「怒涛のムエタイキック編」になります。一 応、毎週掲載していく予定ですが、スペースの関係、あるいは、著者の怠け 具合によって、時々お休みすることがあるかもしれません(いや、必ずあり ます)。その点、予めご了承ください。
 それでは、早速始めることにしましょう。
 復活版「Nuts世界観光案内」、お楽しみください。
                     「週刊Nuts」編集部
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『Nuts世界観光案内』〜怒涛のムエタイキック編1〜
 ムエタイ話の復活である。
 時は今から10年前の1988年10月、場所はタイの首都バンコック。 ここで私はムエタイ、つまりタイ式キックボクシングの修行に励んでいたの である。
 この年の9月まで私は沖縄の離島に住んでいた。離島に住んでいた理由を できるだけクリアーにスルドく説明すると、単に人間が嫌いだったからであ る。
 人間が嫌い、社会が嫌い、大学が嫌い、そして自分が大嫌い。ココロを許 せたのは、沖縄の空と海とそこに住む生物たちだけだった。
 離島では、百姓、漁師、ダイビングなどを仕事としていた。
 そんな私がなんでタイまでやって来たかというと、それはすべてムエタイ のせいなのであった。
 離島時代に読んだ本の中で、私は初めてムエタイに出会った。「餓狼伝」 (夢枕漠著)。格闘家である主人公の放つ蹴りが、ムエタイキックだったの だ。
 特別な理由はなかったが、その時、私はなぜか誓ってしまったのである。
 「ボクもムエタイやっちゃうもんね」と。
 というわけで、沖縄に別れを告げ、私はタイに旅立った。
 人嫌いはどうしたって? 人嫌いは、当然続いていたが、でもなんとなく 自然にも飽き飽きしてきて、サメさんに喰われそうになったりとか、波さん にさらわれそうになったりした経験を通して、自然に対してもケンカ腰で接 するようになってしまい、この辺でちょっとブレイクという意味もあって、 タイに飛んだのである。
 であるからして、この話を深くアンダスタンドするために、そのバックグ ラウンド、つまり「人間嫌いで→離島に逃げた→自然を愛し→と思ったら殺 されそうに→自然も嫌いだ→そういやムエタイってあったな→だったら ちょっくら行ってみるか→でも人間怖い→サンドバッグとお友達になろーっ と」という流れを十分に理解していただきたい。
 以上。
 話は、来週から本格的に始まるのであった。
 ・・・・いきなりお休みだったりして。
                         Hiro
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『Nutsコラム』

『日本政治の馬々虎々』〜第11回 大蔵汚職〜
 ここのところ、大蔵官僚の汚職が次々に暴かれ、なかなか慌ただしい。現 職の大蔵官僚二人の逮捕に続き蔵相の辞任、それに押されて次官の辞 任――。マスコミ各社は当に「大蔵腐敗ここに至れり」という感じでその動 向を追いかけている。
 大蔵省の腐敗が初めて大きく取り上げられたのは、95年3月の東京協和 信用組合にからむ過剰接待問題で、幹部二人が辞職に追い込まれた。当時も 大きく世間を騒がせたが、全く状況は改善されず、挙げ句の果てに逮捕者ま で出した大蔵省――。
 こうした状況を捉えて、ある某新聞社は「大蔵省がここまで追い込まれた 原因は、相次ぐ不祥事をことごとく<例外的な事例>として片付けてきたこ とだ」と偉そうに論じていたが、私、ついついいつもの調子で「そう言うあ んたも、大蔵省を<例外的な事例>として片づけようとしてるやんけー」と 心の中でつぶやいてしまった。
 大蔵省が「自分たちの役所」を守るために<例外的な事例>の論理で問題 を隠微してきたのとまったく同じように、今、日本の社会は、「自分たちの 社会」を守るために<例外的な事例>の論理で大蔵省をたたいている。大蔵 バッシングとは、所詮そういうものなのだ。
 明治37年、内村鑑三は、その著「興亡の因果」において、「経済の背後 には政治がある。政治の背後には社会がある。社会の背後には道徳がある。 道徳の背後には宗教がある。宗教は始め(本)であり、経済は終わり(末) である。宗教の結果は、最後に経済において現れる。興隆する時もそうであ る。敗滅(はいめつ)する時もそうである」と書いた。
 この先哲の言、オウム事件から援助交際の日常化、そして政官の腐敗から 経済の停滞まで、すべて深いところでつながっているんだと私たちに教えて くれている。私は、だから大蔵省を叩かなくていい、と言っているのではな い。ただ、叩けば済むと思っているそこのあなたにひとこと言っておきた い。「次はあんたの番よ」と。
*今回のまとめの詩(うた)
「例外の 論理かざして バッシング
         次はわたしや あなたの番かも 勝人」
『道端で哲学』〜”ダマされた!”2時間の白日夢3〜
 空は高く晴れ上がっている。天気がいい冬の日は空気が澄み切っていて、 いつもと違うような気がする。
 その時の気持ちは、周囲の何もかもが新鮮に見えてしまうような幸せな感 じであった。ありきたりな日常生活の中に起こる変化というものは、いつ だって楽しい。
 新しいことを経験するのは、大きな喜びだと思う。だから、大金を拾いそ の当事者として警察に行くという初めての連続で、気分は高揚していた。警 察なんて入るのだって初めてだ。
 真昼間の道路は混雑している。ストリートをゆっくり移動する車の中で は、今後のそれぞれの金の使い道に対する思いが交錯しているようであっ た。
 そんなはしゃいだ雰囲気の中、大柄な人の妹であるという眼鏡をかけ運転 している人が、突然真面目につぶやいた。
 「でも、ニューヨークの警察っていい加減なところがあるじゃない?私た ちがこのお金を渡したとして、はたしてちゃんと管理するのかしら。」
 確かに、警察のいい加減さはたまに耳にすることだ。しかし、だからと いって、これは自分らでどうにかできる問題ではない。10ドルや20ドル ではない、多分何千ドルはあろうかという大金なのだ。ひと通り全員の顔を 見回し、彼女はまた続ける。
 「いい考えがあるの。専門家に助けてもらって、これを法的に問題なく当 分するっていうのはどう?そうすれば、私たちがせっかく拾ったのを警察に 横領されずにすむし、好きに使えるのよ。」
 それは天使のささやきであった。でもこういった問題に巻き込まれるのは 少し面倒くさい。友人との約束の時間は大幅に過ぎている上、まだ連絡もし ていない。しかしだ。もう少しだけこの人たちに付き合えばタダで手に入る かも知れない大金を、ここで見逃すべきかどうか。こんなことはめったにな いのだ。
 「今日はラッキーだわ」
 他の3人の心はもう決まっているようだった。初めに追いかけて来た大柄 な人など、すでに神に感謝しつつある。
 「あなたはどうするの。時間がなかったらいいのよ。それはあなたが決め ることだわ。」
 その言葉に、自分が去ることによって増える分け前といった下心を感じ て、心は決まった。金というものは、どうして人間の欲という醜い部分を刺激 するのだろうか。でもきっとそれは、人間である限り避けられないものな のだ。
 4人の意見は一致している。届け出る気はない。
 「私が働いている旅行会社のボスが、こういうことに詳しいの。さっそく 相談しに行きましょう。」
 と言ったのは痩せ気味の人だ。しばらく走った後、車はイーストビレッジ のオフィスの近くで止まり、彼女はひとり車を降りていく。降りる前にその 大金を持った彼女は念をおしていった。私を信用してね、と。
 ドアが閉まり、残された3人でふと顔を見合わせる。
 「でも彼女がこのまま戻って来ないってこともありえるのよね。そしたら ダマされたわね、私たち。」
 まだこの状況に現実味がない自分は、そんなこともあるかもしれないな、 などと悠長に思う。だったらそれでいいや。しかしそんな心配は無用だった らしく、しばらくして戻ってきた彼女は嬉しそうだ。
 「私たちはついてるわ。ボスが言うには、このお金から税金をいくらか払 えば、2ヵ月後には自由に使えるらしいの。ちなみに、ここには6600ドルあ るわ。」
 まったく本当に夢のような話だ。
                        Itsuki Sato
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『VOICE』

『幽霊を見た』
 初めての出張で幽霊を見た。
 目が覚めると、部屋に何者かがいて、ごそごそと音を立てていた。誰なん だ?と思った次の瞬間、左足のあたりに、輪郭のぼやけた女性が現われた。 まんまるい大きな目でこちらを見ている。体の自由がきかず、胸の辺りが重 い。必死で横を向いて目をそらしたら、今度は耳もとでぼそぼそとなにやら 囁き始めた。
 と、そこで体が自由になった。体中、とりはだができていた。
 上司にこのことを話すと、「それは水子でしょ」という答えが返ってき た。
 ここまで書いておいてなんだが、あれはおそらく夢だったのだろう。妙に 現実感があったのは、脳が半分だけ起きていた状態だったからだ。僕は幽霊 を信じるタイプではないので、まず他の理由を探してしまう。UFOも僕は 信じない。星座や血液型占いまで信じない。どちらかというと現実主義者な のだ。
 不思議なものを全て否定するというわけではない。以前、「Oリングテス ト」という不思議なテストを実体験した。左手の親指と人差指でわっかを作 り、右手のてのひらに何かを置く。もし体にいいものを置くと、わっかの力 は強くなり、他人の力ではなかなか崩せない。しかしタバコなど体に有害な ものを置くと、わっかは弱くなり、他人が引っぱると簡単に崩れる。つま り、Oリングテストを使えば、体にいいものと悪いものを判別することがで きる。
 と、僕は素直に信じていた。ところがこの間、Oリングを信じていない人に 出会ってしまった。
 ーーーOリングテストの結果は、右手の掌に置いた物質を、「テストに携わ る人がどのように見ているか」によって左右されてしまい、実際にその物質 が体にいいか悪いかを判別することはできない。
 もっともである。でも、そのとき僕は、「いやだな」と思い、おもいきり 不快感をあらわにしてしまった。自分が信じきっていたものが、まるっきり の迷信であるかのような言われかたをしたからだ。これは今まで経験したこ とのない「いやさ」加減だったのだ。
 僕は以前、星座や血液型占いを頭ごなしに否定したことがあった。Oリング を否定されるまで気付かなかったが、僕にそれらを否定された人達も、「い やだな」と思ったのではないだろうか。自分の信じていることを否定される のが、あんなにいやなこととは、今まで気付かなかった。
 人の考えや信仰が理解できないときがある。そのとき、僕たちは少しその 人を見下した気分になる。「あんな非論理的なことを信じるなんて」と。し かし、それと同時に、僕たちも「非論理的なことを信じる」人の一人かもし れないのである。それを忘れてはいけない。
 というわけなんで、出張の時あらわれた女性の方、もしかしたらほんとに 幽霊だったかもしれないんで、いちおう冥福を祈っておきます。
                          雅章

『グリーンカードへの道・第27話』

 お互いスーツを着込んだアジア男とスパニッシュ女が、大声でケンカしな がらブロードウェーを歩いている。周りにいた人たちにとってみれば、それ はそれは奇妙な風景であったに違いない。
 結局、私の「チャイニーズなんて食える気分ではないのだよ。トットと帰 ろうではないかね」という意見が通り、私たちはカナル・ストリートからブ ロードウェーを歩いて北上することにした。
 約1ブロックにひとつのテーマで私たちはアギューした。そして、3ブ ロックほど行く間に、また最初のテーマに戻って同じようにアギューした。
 私たちは、タワーレコードの手前で右折し、ラファエット・ストリートに 出た。そこで、かみさんの友達の弁護士に電話することにした。聞くことは ただひとつ、「労働許可書って、すぐ取れるものなのかしら」ということで あった。
 かみさんの友達であるからして、普通はかみさんに電話をかけてもらうの だが、この時はすでにものを頼める状況ではなく、下手にお願い事でもしよ うものなら、相手を完全に調子こかせ、しまいには「なんだかんだ言ったっ て、あんたは私のGreen Card Boyなんだから、黙っときゃいいのよ、この G.C.B.が」とトドメを刺されるのがオチだった。
 だから、私は自分で電話をかけることにした。
 道の向こう側に公衆電話を見つけた。ラファエットを西から東に渡り、ま ず受話器取って、壊れてないかをチェックする。
 「プーーーーー」
 大丈夫そうだ。
 クウォーターを入れ、それがしっかり飲み込まれたことを確認したあと、 私は彼女のオフィスの番号をプピピプピと押した。
 受付の女性がすぐに出た。そして、私が彼女の名前を告げると、その女性 は乾いた口調で言った。
 「今、ランチに出てます。何かメッセージ残しますか」
 腕時計を見ると、あと10数分で3時になろうとしていた。
 ちっ、まだ戻ってねえのか。私はココロの中でそうつぶやいた。
 「いや、大丈夫。またこちらから電話します」
 私は受話器を戻し、クウォーターがシャコリと落ちる音を聞いた後、返金 口に指を入れて、金が戻って来てないかを確かめた。指の表面に感じたの は、ツルツルした返金口の底のみだった。
 かみさんは、私の2メートル後方で冷たく背を向けて立っていた。その頭 上では、8月の太陽が「スーツなんか着てんじゃねえ」とばかり、ギンギラ ギンギラしていた。
 かみさんのシルエットをながめながら、私は「最近、やせたな」とちょっ とだけ思った。
                        ひろ
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『今週の歌』

「結婚の 理由は何?と たずねられ
           だって She is my best friend  ひろ」

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「週刊Nuts」編集部


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