1998年2月24日号(No.207)




目次

*『LAJJ & SFJJシリーズ・お住まいはどこですか』
*『Nutsコラム』 ・コラム『弱肉強食』〜切実でないあたし〜 ・コラム『道端で哲学』〜”ダマされた!”2時間の白日夢6〜
*『VOICE』 ・投書『ミスターチェンの問題』     〜2月10日号のナッティピンクさんについて〜
*『グリーンカードへの道・第30話』
*『今週の歌』
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『LAJJ & SFJJシリーズ・お住まいはどこですか』

 さて、「LAJJ & SFJJ」シリーズ第2弾、「お住まいはどこですか」なの であります。
 一応、最初はですね、LAのこことあそことそこに日本人がいっぱい住んで て、ついでにSFのそことあそことここに日本人が住んでるの、とかいう話だ けをするつもりだったのですが、ニューヨークに住んでる人間がそんなこと 聞いてもちっとも嬉しくないわけでして、そこで私たちもココロを改めて別 の手段でLAJJ & SFJJの「住」についてご説明したいと思うのでした。
 ちなみに、ニューヨークで日本人がいっぱい住んでるところと言えば、ま ず「イースト・ビレッジ」、駐在員軍団がいっぱい住む「ウエストチェス ター・スカースデール」、もうちょっと外に逃げたところで「グリニッ ジ」、そして最近とってもホットな「アストリア」、そんなところでしょう か。
 では、まずはLAから始めましょう。
 皆さんご存知の通り、LAというところはやたらとだだっ広いのでありま す。その中で、LAJJの「住」について考える時にムクムクと出てくるのは、 「トーランス地区及びその周辺」なのであります。
 このトーランスという地区には、日本人が山のように住んでおります。で も「山のように」という説明だけでは、イースト・ビレッジとかウエスト チェスターとちっとも変わらんわけでして、では何が違うかと申しますと、 トーランスの場合、その日本人の数、その日系ビジネスの数と規模、その日 本語の露出度が、前記の2ヵ所とはまったく比べものにならんくらい多く大 きく、そして高いのであります。
 簡単且つ強烈な例を上げますと、このトーランス(もしかしたらその隣の 地区かもしれないけど)には、横10メートル、縦2メートルほどの巨大な 日本語のカンバンが存在します。
 これは長距離電話会社の「Telecom USA」のカンバンなのですが、こいつ がどっかのビルの上にデンと腰を下ろしておりまして、道を車で走っており ますと、視界にズーンと入ってくるのであります。
 私たちの知る限りでは、これほどの視覚的破壊力を持つ日本語カンバン は、ニューヨークには存在しません(もしあったら教えてください)。
 日本人カスタマー獲得のために、そのようなジャンボ・カンバンを掲げる 「Telecom USA」の戦略の裏には、このトーランス地区及びその周辺の、 ニューヨークに住む私たちには想像もつかないほどの日本人密度という要因 が横たわっているのであります。
 また、その日本人密度の濃さは、日系食料品店の数と規模にも忠実に表わ れております。
 ニューヨークに住む日本人にとって、川向こうにあるヤオハンは限りなく 巨大な、そして大変ありがたい日系食料品店なのであります。ここでは、ヤ オハンに行くこと自体が一種のイベント化しております。
 ところが、トーランス辺りには、あれぐらいのお店がゴロゴロあります。 こちらのヤオハンがハナクソに見えるのです。おそらく、その辺りに住む日 本人の中で「わーい、わーい、今日はヤオハンに行くんだもーん」とお喜び になる方は皆無でしょう。
 確かに、LAの方が土地代も安く(=でっかい店が建てやすい)、車の所有 率も使用頻度も高い(=買い物やお出かけしやすい)のですが、それにして もあの多さデカさは何なのでしょうか。
 ニューヨーク近辺にある日系食料品店すべての売り場面積を合わせても、 向こうのお店2軒分ぐらいにしかならないはずです。
 これを単に土地代とか車とかJA(日系アメリカ人)の数とかで納得してし まうのは、あまりにもイージーなような気がします。
 それらの入れ物(日系食料品店)が存在できるってことは、入る物(客) もそれに比例するぐらいたくさんたくさん存在しているってことなのであり ます。きっと、このトーランス地区及びその周辺には、私たちNYJJが持つイ メージを超越した数の日本人たちがうごめいているのです。
 次は、SFについて。
 SFの場合、LAのトーランス地区及びその周辺のようなスーパー日本人密集 地は存在しません。
 大体3ヵ所ぐらいに日本人がギュッギュッと集まって住んでいるようなの ですが、別にバカデカいカンバンがあるわけでもなし、巨大な日系食料品店 がそこにもあそこにもあるって状態でもないのであります。
 その意味で、日本人の濃さのレベルはニューヨークとかなり近いものがあ ります。ただ、決定的に違うのは「Jタウン」があるないのその点になりま す。
 SFにはJタウンがあります。そこには、日系の商店街やモール、JJあるい はJAシニアの方々のための老人ホームがあったりします。
 これが、ニューヨークにはないのです。それぞれの都市での日本人の住み 具合、根付き具合、自己主張具合を考える時、この差はひじょーに大きなも のとなります。
 SFのJタウン、そしてLAのリトル・トーキョーにつきましては、来週じっ くりお話ししたいと思います。
 で、今週も「Nuts世界観光案内」はお休みです。
 いやいや、申し訳ありません。
 では。
                     「週刊Nuts」編集部
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『Nutsコラム』

『弱肉強食』〜切実でないあたし〜
 あたしは24で大学4年生だ。昔から夢だった映画を勉強している。
 彼女は言う。
  ーつまり君は恵まれている。NYにいるんだもの。
ーいや、どこに行くかじゃなくて、何をするかですよ。あたしなんてただ大 学に行ってるだけで、この年でまだすねかじりですよ。
ーいいじゃない。かじれる内にかじっとけば。その内返す時がくるわよ。
ーいやぁ、英語も下手だし、留学してたなんていえないですよ。
ーでも、もう卒業でしょ。大丈夫ってことよ。
ー卒業なんて、毎日学校にいってれば、誰でもできるんですよ。
ーそうかなぁ。で、これからどうするの?
ー一応、プラクティカル取って、次の学期もう一クラス取って、インターン して、で夜はバイトですかね。
ーいいじゃない。やりたい事がわかってて。
ー全然ダメなんですよ。いくら稼げるかもわかんないし。
ーまだ親は仕送りしてくれるんでしょ。
ーいや、あやしいですね。してくれても、もう2、3ヵ月ですね。
ーいいじゃない。十分よ。着実に動き始めたじゃない。
ーいやぁ恐いですよ。こんなんで社会にでるの。人付き合いもうまい方じゃ ないし、なんか緊張してしまうんですよね。イマ、ホントに何がやりたいか もわかんなくなってきてるし、一応、現場にいれたらなんでもいいとか思う んだけど。日本かアメリカどっちにいたいかもわかんなくなってきてるし、 もう24なのにこんなんで。なんか人には器ってもんがあるんじゃないです か。あたし程度じゃあ、とか思うんですよね、なんか。
 コーヒーを飲んで彼女は言った。
ーアンタ、暇なのよ。
                        I
『道端で哲学』〜”ダマされた!”2時間の白日夢6〜
「あとがきにかえて」
 ニューヨークが嫌いになりかけていた。自分をダマした人達と、彼らが住 むこの狭くて汚ない街の何もかもが許せなかった。
 どうして自分はここにいるのだろう?このままこの街に嫌悪感を持ちなが ら暮らしていくのか?
 自分には帰れる場所があると思っていた。祖国は安全で平和で、言葉や差 別の問題もない。ここでの生活のように、いつも気を張っている必要は全然 ない。
 社会と人間の醜い共存の部分に初めて触れた、詐欺の体験はそれくらい衝 撃的だった。地球上で生きて行く為には、お互いを背きダマしあうことだっ て時には利用しなければならないのだ。確実に信用できるのは自分自身だけ だということだろう。他人の不信感と、危険なこの街への不満がつのってい た。
 あの日、詐欺師のひとりに突然尋ねられたことがある。「あなたは神を信 じるか」と。そして彼女は言った。「私はいつでも信じてる。」
 あの質問にどんな意図があったのかは解からない。だが、言葉とは状況に よって本来の意味を無くし、ただの嘘にもなり得る。たとえそれが「神」 だって利用価値はあるのだ。
 数週間後、こんな風に考えていた自分の愚かさを知ることになる。
 偶然に計画していたヨーロッパ諸国を巡る旅で、アメリカという国を外側 から見れたことが、自分を見つめ直すきっかけとなった。
 初めて目にする西欧の風景は新鮮で美しく、発見と驚きの毎日だった。い やなことを忘れられるだろうと期待し、意気揚々と出かけたはずだった。し かし意外なことに、強いられたのは国と文化と人種の比較と、自分の立場の 再考だ。
 西欧人の子供たちが自分を見る目つきに、ふと気がついた。まるで異様な ものを見るような好奇心の目だ。ここでは自分は日本人ではなく、ただの異 国人だ。彼らにとっては未知の世界の人に違いない。
 日本で自分は、どんな目で外国人を見ていただろう。自分がそんな立場に 立ったときのことを、アメリカという雑多な人種の国では知ることができな かった。文化と人種の入り混じった特別の国では、「違い」という孤独さに 気がつけなかった。大勢の「違い」の中の「違い」、それはただの共感と安 心になる。
 自分は形さえまともに整っていない、人間と呼ぶのにも愚かなものだ。そ んな自分がどうして他人の人生に意見したり批判したりできるのだろう。そ れぞれの様々な生き方があり、それはすべて人間社会の一部として機能して いるのだ。自分はそれのどんな一部分として生きれるだろうか。
 こんなニューヨークも、まだまだ捨てたものではない。
                        Itsuki Sato
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『VOICE』

『ミスターチェンの問題』 〜2月10日号のナッティピンクさんについて〜
 ミスターチェン問題はかなり深いものですね。ナッティピンクさんのキビ シー批判を読んで、超ビックリでした。だって、そこまですごい人種差別が テーマになってるなんて100%思いませんでした。
 そこであわててバックナンバーを読みなおしました。その結果はひとこ と、”このおばはん(若かったらすいません)、考えすぎや”でした。
 で、次に、どうしてこういう意見が出たのか考えました。そして、行きつ いたところは、この人が人種差別について意識しすぎなのでは、と。本当に 人種差別などしていない人は流してしまうようなことを、この人はついてい るのでは、と。これが偽善者というものなのかしら、とも思いました。
 確かに人種差別している人が”ミスターチェン”と呼ばれたら、そりゃぁ イカることでしょう。しかし、人間として見下だされてると感じた人もやっ ぱりイカるでしょ。で、他の国を見下だすことより先に、自分の出身国を誇 りに思っている人もやはり別国の名で呼ばれりゃイカるでしょう。いずれに しても、見当違いの名前で呼ばれたら誰でもイヤな思いすると思います。例 えば、私の名前はあきこなのに、よしこさん、とか呼ばれても、そりゃぁム カつきますよね。ってなわけで、完全に人種差別が原因だぁ!と思いこんで るこのナッティピンクさん、もう少し丸く世界が見れないものでしょうか?
 アンド、人種差別の話から男女差別にまで発展してるんですけど、男女差 別はいいんでしょうか?いずれにしろ差別はよろしくないのでしょ。しか も、前例3人について全て男と決めつけているようですが、少なくとも Sakuraさんとやらは女の方のような気がしました。
 この人は自分のことを棚にあげて、人の事ばかりいってますよね。自分こ そ「うすっぺらな自尊心」、「意味のない優越感」の持ち主なのでは?
 あげ足をとってますけど、もう一つダメ押しさせて頂くと、”同じ日本人 女性としてはずかしい限りですわっっっ”てなところでしょうか?
 まぁ、こういう論争があると、私の大好きなNutsがどんどん楽しくなりま すよね。
 もっと嵐をおこせ、Nuts!!!
                   Neutralのつもり
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『グリーンカードへの道・第30話』

 ラファエットを北上して、アスター・プレイスに出た私たちは、そこで右 折し、セント・マークスへと向かった。
 午後3時前のイースト・ビレッジには、比較的静かな時が流れていた。そ の中を、まるで凪の水面を切り裂きながら突き進むシャチのように、私たち はセント・マークスの南側の歩道をズンズン歩いていった。
 道端には、昼間っからホームレス風の若者及び年寄りたちがウダウダして いた。
 「ビール飲みてえから金くれ」
 彼らの前を通り過ぎようとした時、ジベダに座り込んだ小僧のひとりが私 たちに向かって言った。
 かみさんは見向きもしなかった。というよりは、彼はきっとかみさんのイ メージの中では、すでにその強烈な右フックを食らい、鼻と唇と耳タブにぶ ら下がる銀色のピアスを全身の力を込めて引きちぎられてるに違いなかっ た。
 私は彼をチラリと見た。その時、私の喉元にはこんな言葉が肺からせり上 がってきていた。
 「金やるから、おめえの市民権くれや」
 でも、私はその言葉を飲み込み、視線を前方に戻し、歩き続けた。
 一方には、スーツ着込んでグリーンカード頂戴とイミグレまでお願いにい く人間がいて、もう一方にはビザの心配もグリーンカードの心配もいらない くせに、お天道さんの下でジベダに座り込んで「ビール飲みてえから金く れ」などとほざくホームレス願望のガキがいて、ちっ、世の中、うまいこと ズレてるもんだ・・・
 歩きながら私はそんなことを考えていた。
 かみさんと私はもうすぐセカンド・アベニューに出ようとしていた。
 道の向こう側には、今から数時間前にその前を通ったGAPのウィンドウが 見えた。そこには、普段よりもずーっと距離を開けて歩くふたりがいた。
 午後1時過ぎにあのウィンドウに写っていた私たちの顔には、ある種の 「外」のものに対する緊張感がはり付いていた。しかし、今、ふたりの顔に 見えるのは、「内」の緊張感、つまり、「ただ今ケンカ中」のサインだっ た。
 突然、ウィンドウが途切れ、私たちはセカンド・アベニューに出た。
 今来たセント・マークスをふと振り返ると、あの小僧が通行人に手を差し 出してるのがずっと向こうに見えた。
 クソったれが・・・・                       ひろ
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『今週の歌』

「かみさんが マンゴーアイスを 食べたいと
            突然いい出す そんなSUNDAY ひろ」
 

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「週刊Nuts」編集部


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