1998年9月15日号(No.236)
目次
*『Nuts TV作戦3』
*『日本の祭りです』
*『Nutsコラム』
・コラム『道端で哲学』〜正しいこと〜
*『編集後記』
*『今週の歌』
***********************
『Nuts TV作戦3』
さて、「Nuts TV」作戦の第3弾なのであります。今回も先週に引き続
き、ひろ氏によるパブリック・アクセス報告を掲載いたします。お楽しみく
ださい。
また、この報告を読んで、「おれもやってみたいべな」と思われた方は
「Manhattan Neighborhood Network(MNN)」のほうに直接電話してみ
てください(Tel:212-757-2670)。次のオリエンテーションの予定を教え
てくれるはずです。それとホームぺージもありますので、詳細はそちらでも
分かると思います(http://www.mnn.org)。
では。
Nuts電電映営部
* * * *
『"パブアク"リポート』〜炎のオリエンテーション2〜
3階のミーティング・ルームに集合した私たち。そんな大人数ではない
ね。一応数えてみると、1、2、3・・・、15、16と。今回の参加者は
16名だった。
みんな席に着いたあと、引率者がひとり一人名前を読み上げる。なかなか
自分の名前が呼ばれなくて焦ってしまう。「もしかして、ボクってリストに
入ってないわけ?」と思ってた時、引率者が参加者の名前が載った紙をにら
みつけながら、「これって、ど、ど、どう発音したらいいんじゃ」という顔
をしているのに気が付く。「ハ、ハ、ハ、ハイロ・・・ハイロ、タケ
ン・・・」。すかさず私は手を挙げた。「イエス」 。Hiroをハイロと読んで
いたのである。気持ちはわかるが、違うよ、キミ。
スーツを着ているのは、見るからにジューイッシュなおやじと私のふたり
だけだった。他の人たちは、皆ジーンズや短パンなどのカジュアルなカッ
コ。ついでにその引率者も短パン姿だった。うむ、仕事のあとにテレビ番組
制作の説明会を受けにくるような変態はそんなに多くはないようだ。ここで
はスーツ組は明らかにマイノリティである。
まずその引率者が自己紹介する。施設の中を見学する前に名前だけは聞い
ていた。彼の名前はリック。年の頃は40代後半か。所属は白人。髭づら。
人のよさそうな人物である。
みんなに何種類かの書類を配ったあと、彼はパブリック・アクセスの歴史
やMNNのシステムについて慣れた口調で話し始めた。
ここで彼が語ったことのすべてを説明する必要はないだろう。というわけ
でズンズン先に進む・・・というのも何だから要点だけ紹介すると、パブ
リック・アクセスができたキッカケは、ケーブル会社が地面を掘り起こして
ケーブルを設置するのはいいけど、その地面の上に住んでる人もいるんだ
し、ただケーブル引きまくるだけじゃなくて、そこに住む人たちにも何か還
元したほうがいいんじゃない、例えば視聴者が参加できるチャンネルをいく
つか無料で提供するとかさ、え? ホントにいいの? チャンネルくれちゃ
うわけ? ラッキー、ということらしい。
ちなみに、現在MNNが所有するチャンネス数は4つ。タイム・ワーナー・
ケーブルのチャンネルでいうと、16、34、56、57になる。
各チャンネルでは、朝7時から深夜3時まで一般の人たち(正確にはMNN
でオリエンテーションを受けたマンハッタン住人たち)が作った番組が放送
されている。
ついでに、このMNNの運営費はどうなってるかというと、マンハッタンに
住むケーブルテレビ契約者たちが毎月ケーブル会社に払う金額の中から、自
動的に25セントがMNNに支払われる仕組みになっている。ひと月25セン
トなら、年で3ドル。ケーブル会社によって年50セントぐらいの誤差があ
るが、それは無視して強引に計算すると、要するにマンハッタンに住むケー
ブルテレビ契約者数×3ドルが、MNNの年間の運営費となるのである。
自宅にケーブルを入れてない、つまり毎月の25セントを払っていない私
は、その話に多少の気恥ずかしさを感じながらも、「こりゃ、わたくし、ボ
ロ儲けですな」とひとりほくそ笑んでしまった。カッカッカ。
むずかしい話はこのくらいにして、再びミーティグ・ルームの風景に戻る
ことにしよう。
私たち16名の中に、やたらと頻繁に発言する人間がふたりいた。ひとり
は白人+Tシャツ、もうひとりはヒスパニック+ポロシャツである。
発言するのはいいのだが、その内容が真空状態でむなしくなってしまう。
どう好意的に聞いても、それは一般常識の確認及び自分の知識の自慢でしか
なかった。
彼らがいう。「それは・・・だからですよね」。リックが答える。「そう
です」。再び彼らがいう。「・・・というタイプのテープでは・・・という
方法を使うんですよね」。再びリックが答える。「そうです」
アメリカの大学の授業には、こういうくだらない質問をしたり、自分が
知ってる専門知識をここぞとばかり自慢する人間が、必ず2、3人はいる。
彼らはいつも堂々と手を挙げ、人が気絶するような平凡な質問や、思わず歯
が浮いてしまう自慢話をクラス全員の前でヌケヌケと展開してしまうのであ
る。大学に通ってた頃、私は彼らのような学生に頻繁に遭遇し、その度に殺
意を抱いた思い出がある。
それにしても、なんでアンタら、そんなつまらん質問しかできんわけ?
もっと他に聞くことはないのかね、とスルドく突っ込みたくなるところだ
が、しかしながら、このような人物の存在を寛大に許す、このアメリカの懐
の深さにも、同時にある種の感動を覚えてしまうのである。
これが日本であれば、おそらくその場にいたほぼ全員が、「くだらねえこ
と聞いてんじゃねえよ」視線を彼らに送ったことだろう。でも、この国で
は、あくまでも発言することに意義があり、日本のように「こんなこと言っ
たら時間の無駄かな、みんなの迷惑になっちゃうかな」などと、発言の内容
にまで細かく気を使い過ぎて、結局何も言えなくて終わる、ということはあ
んまりないのである。その証拠に、いつも私以外の人間は、彼らの発言をま
るで当然のような顔をして聞いていた。彼らのココロの広さを私もきっちり
見習うべきである。
というわけで、私は、そのミーティング・ルームにおける彼らの発言に対
して、できるだけ寛大なお耳を持つように努力した。
「ふーん、なるほどね。それって誰でも知ってることだけど、そういうふ
うに改まって言われると、なんとなく新鮮な響きがあるよね。へー、キミっ
てビデオ業界のこと、結構詳しそうだよね。その専門用語、ボクにはわから
ないけど、まあいいさ。キミが幸せであれば。あ、そんなことまで聞いちゃ
うんだ。それもモロ常識で、キミ以外は誰もそんなこと聞かないだろうけ
ど、ボクはじぇんじぇん気にしないよ。おっと、そんなことも知らないん
だ。キミってもしかしたら、ちょっとボケてるかもしれないね。おー、そう
来ますか。いや〜、参りましたねえ。さすがのボクもそろそろ限界に来てる
かなあ。あー、それを言いますか。ははははは・・・・・えーかげんにせん
かい、このボンクラがー! てめえなんか、うち帰ってカベ相手にしゃべっ
とればいいんじゃー、アホンダラー!」
ハー、ハー、ハー。
いかん、いかん、思わずプッツンしてしまった。
ひろぴー、反省。
ひろ
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『日本の祭りです』
皆さん、今年も「日本の祭り」がやってくるのであります。
去年は6月に開催されましたが、今回はこの9月27日(日)に行なわれ
ます。場所はJapan Societyの前、47丁目の1と2の間。正午にスタート
し、午後4時までとなっております。
以前にもお話ししましたように、この「日本の祭り」は、数年前までイー
スト・ビレッジでやってた祭りをミッドタウンのJapan Societyが引き取っ
たものなのであります。
祭りがミッドタウンに移動した件に関して、「なんでそのままイースト・
ビレッジでやらないの?」という声がチラホラ聞こえてくるのですが、はっ
きり申しまして、イースト・ビレッジで再び祭りを開催するのは、ほぼ不可
能であると私たちは考えるのであります。
実際、イースト・ビレッジの祭りは、開催しなくなったのではなく、開催
できなくなったのです。その理由はいろいろあるのですが、結果として、そ
の「開催できなくなった」祭りをミッドタウンのJapan Societyが拾ってく
れた、というのが現実の姿なのであります。
また、Japan Societyの祭りについて、「イースト・ビレッジの頃みたい
に一般の人も参加したりできないからつまんなーい」という意見もあるよう
ですが、正確にはイースト・ビレッジの祭りのほうが異常だったのでありま
す。
その辺で行なわれてるストリート・フェアを見ればわかるように、それら
の参加者のほとんどはプロの物売りの人たちです。つまり、一般の人が祭り
で物や食べ物を売るのは、普通かなりむずかしいのであります。なぜなら、
今回の「日本の祭り」のようなストリート・フェアに出店する場合は、その
ための許可書をわざわざ申請しなくてはならないからです。また食べ物を売
る時は、食品衛生の免許を所持しておく必要があります。
ですから、以前のイースト・ビレッジの祭りで、カレーやいなり寿司を食
品衛生の免許ナシで売ってたのは、ホントは違法だったのですね。あれは、
何か食品に関する事故が起きたときは主催者側(=ニューヨーク青年会)が
全責任を負うという、ひじょーに変則な条件下で行なわれていた祭りだった
のであります。
で、もうひとつ、ちまた、特にイースト・ビレッジ辺りで耳にする噂のひ
とつに、「またイースト・ビレッジでやるんだったら協力してもいいけど、
ミッドタウンでやるんだったら関係ないし、手伝う気もしなーい」というも
のがあります。
こういう意見を持つ人たちのことを私たちはVSA、Very Small Asshole
(極小肛門)と呼んでおります。言ってることちょっと小さくないですか
ね。
私たちは、イースト・ビレッジで始まってミッドタウンに移動したこの祭
りはニューヨークに住む日本人全体の財産であると考えております。
ニューヨークに住む他の人種に比べ、断然自己主張なヘタクソな日本人が
やっとここまで作り上げた「日本の祭り」じゃないですか。マンハッタンに
おいて、この祭り以上に「Japan」を非日本人に対して押し出すイベントは存
在しないはずです。そしたら、イースト・ビレッジでやるとか、ミッドタウ
ンに移ったとかは関係ないでしょ。
日本人というのは、その性質として、大して意味のない「所属」にこだわ
る傾向があります。今回の場合は、イースト・ビレッジかミッドタウンかと
いう「所属」ですね。で、そういう屁のような「所属」にこだわることに
よって、もっと大きなサイズの「所属」=「日本人であること」をすっかり
忘れてしまうのであります。
特にその傾向は、ニューヨークに長く住む日本人に顕著に見られます。か
えってイースト・ビレッジの辺りでブラブラしてる日本人若い衆のほうが、
変なこだわりなど持たずに、物事をしっかり見据えてたりするのです。
ニューヨークに長くいると、人間、VSAになってしまうのでしょうか。
さて、グチはこのくらいにして、本題に入りますと、私たちNuts軍団で
は、今回の「日本の祭り」を手伝ってくれるボランティアを募集してしまう
のであります。年齢、性別、人種は問いません。誰でもOK。一応、祭り全体
の手伝いと、Nuts軍団が出すテーブルの面倒を見てほしいわ、と考えており
ます。Nutsテーブルでは、「週刊Nuts」及び「ぶりてんNuts」のバックナ
ンバーを無料配布する予定です。
興味のある方は、「週刊Nuts」編集部(TEL:212-982-3348)までご連
絡ください。
では。
「週刊Nuts」編集部
********************
『Nutsコラム』
『道端で哲学』〜正しいこと〜
先日、近所のランドリーで、乾燥した洗濯物を畳む段階だったときのこ
と。私が2つ使っていたドライヤーのうちの、片方は先に止まりその洗濯物
も畳み終え、そしてもうひとつのドライヤーは、あと1分ほど時間が残って
いた。私は畳むための台に寄りかかって、ぼんやりといくつかのドライヤー
の回転を眺めながら、“ピーッ”という終了の音が鳴るのをを待っていた。
そのとき、今乾いたばかりらしい洗濯物をカゴに入れたアメリカ人女性
が、私に話しかけてきた。
「そこの台を使ってもいい?」
だけど何十秒とたたない後で、その台を再び使う必要があると思った私
は、
「私の洗濯物ももうすぐ終わりそうなんです」
と答えた。嫌がらせで言ったつもりはなかったが、この女性に台をゆずっ
た後で、また待たされそうなのが気になったというのはある。この日、ラン
ドリーは少し混んでいて、いつもより余計に時間がかかっていたから、早く
終わらせて部屋に戻りたかったのも本音だ。
しかし、そんな私の気持ちを知るよしもないその女性は、きつい目で私を
睨みつけた。
「でも今は使ってないでしょ」
その言葉があまりにも正論で、そしてその人の言い方があまりにも自信に
満ち溢れていたので、私は瞬間的に「そうですね」と答え、その台をゆずっ
てしまった。そうしてその女性は何も言わずに、当然のようにそこで洗濯物
を畳み始めた。そのとき、ドライヤーが終了を告げる音が、私の背後で
“ピーッ”と鳴り響いた・・・。
私はこの体験を、「だからアメリカ人って傲慢でいやなんだ」というひと
ことで済ませるつもりはない。あのとき、確かに私は少しずるい考えを持っ
ていたし、そしてその台は使っていなかった。その人の態度は正しいとは思
わないが、言ったことは全く正しいことであった。
だけど、頼むとか待つという考えはなさそうなその人の、正しさを貫き通
そうという精神に、私は閉口し驚いた。そしてこのことから気がついたの
は、アメリカに住んでいると、こんな思いをすることが実際よくある、とい
うことだ。
個人的な見解だが、アメリカ人には「正義感」という言葉がよく似合う。
人々のそんな特徴は、いい意味で強く、親切だが、反対に言えばおせっかい
で強すぎる。だけど、正しいことを自信を持って行動できること、これは称
えるべきものだと思う。アメリカが発展的なのは、遠慮して口ごもっている
日本人とは違う、言うべきことを積極的に発言して進んで行く、その精神の
せいなのだろう。実際、こそこそせず、堂々と胸をはって正しく生きれれ
ば、それはとても素晴らしいに違いない。
だけど私は、そんな「強く正しい」人たちと親しくなることができない。
それは多分、自分がそんな性格の人間ではないからで、その人たちの「正し
さ」に後ろめたさ、または疑問を感じてしまうからだ。私は「正義」は好き
だが、正当化された「正しさ」は好きではない。なぜなら、間違っていない
ことが正しいことだとは、必ずしも言えないと思うからだ。
あのときランドリーで、あのアメリカ人女性に「正しさ」を主張されたと
き、正直に言って私はくやしかったが、でもそういう「正しさ」にはやはり
納得がいかない。正しいことをしていればいい、という訳でもないし、「正
義感」には、例えば「罪悪感」のような、感情の何かが欠如していると思
う。それならなぜあの場で、強気に「あと何十秒でドライヤーが終わる」と
いう私側の「正しさ」を主張できなかったのだと言われると、何も言えな
かったりするのだが。やっぱりあの人は正しくて、私はただの負け犬なのだ
ろうか・・?
さと いつき
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『編集後記』
今月の井戸端会議のお知らせです。9月30日(水)午後7時よりCAFE
LOON LOON(152 E 25th St. bet. Lex & 3rd)にて行ないます。参加希望
の方は、「週刊Nuts」編集部(TEL:212-982-3348)までご連絡くださ
い。
今週は、『グリーンカードへの道』はお休みしました。
では、また来週。
「週刊Nuts」編集部
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『今週の歌』
「ビル・アンド・モニカの情事が 本として
出版される この国に拍手 ひろ」
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