1998年10月20日号(No.241)




目次

*『NY病でおま』
*『編集後記』
*『グリーンカードへの道・第53話』
*『今週の歌』
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『NY病でおま』

 さて、「NY病でおま」話の始まりなのであります。「NY病」は「にゅー よーく・びょう」と発音していただけたら幸いです。
 いきなり本題に入ってしまいますが、私たちNuts軍団は、ニューヨークに 住む日本人の間に、ある種の精神病が存在するのではないかとニラんどるの であります。
 その症状などにつきましては、後ほどお話しするとして、とりあえず私た ちはその病気を「NY病」と名付けることにしたのであります。
 予定としましては、98年度中にこの「NY病」のことをウダウダ議論しま して、来年のアタマには、その解決策を「1999年の作戦」のひとつとし てブチ上げたいと考えております。
 「週刊Nuts」が創刊されて4年半が経ちました。その間、私たちはニュー ヨークに住むいろんな日本人を見てまいりました。
 で、私たちは、最近、ふと彼ら及び私たち自身のことを「我らNYJJ (ニューヨーク在住日本国籍日本人)は、この数年で”精神的に”どう変 わったのか」という視点で振り返ってみたのであります。
 ここでお話ししようとしているのは、「日本人留学生が増えた」や「日本 語ミニコミが減った」「駐在員がどっさり日本に帰った」などのNYJJコミュ ニティとしての「どう変わったのか」ではなく、あくまでもニューヨークに 住む日本人ひとり一人のココロや精神が、この街に住むことによって「どう 変わったのか」についてになります。
 その結果、つまり振り返った結果、私たちは、多くのNYJJの中に、ある共 通の変化を発見することになったのであります。
 それが「いい方向」への変化であれば、私たちもこんなところでグダグダ 言ったりしないのです。問題は、その変化が「やばい方向」への変化だった ことなのであります。
 コワいですね。
 そして、私たちは、今回見つけた「やばい方向」への変化を「NY病」と呼 ぶことにしたのであります。
 というわけで、そろそろ「NY病」の具体的な説明に入りたいのですが、そ の前に読者の皆さんにいくつかお断りしておかなければならない点がありま す。
1)「これは個人攻撃じゃないのよ」
 こういう類いの話を始めますと、必ず「いいや、私は絶対にNY病などには かかってないぞ! 失礼な!」という意見をいただくのであります。
 私たちは、別に「おまえ、NY病にかかってんだろ。ケッ!」というふう に、読者の皆さんを攻めるつもりはないのであります。また、NY病患者狩り をするつもりもありません。
 ですから、そこのところはあまり敏感にならないようお願いいたします。
2)「NYJJ全員がNY病じゃないのよ」
 私たちは、NYJJ全員がNY病にかかっているとは考えておりません。つま り、私たちがここで言いたいのは、「NYJJ全員がNY病患者じゃー」というこ とではないのであります。
 ところがですね、中には「NY病は存在しない。なぜなら私はNY病患者では ないからだ。はっはっは」というふうに、自分ひとりの例を持ち出して議論 全体をつぶしてしまう方が存在するのであります。
   「私はNY病患者じゃなさそうね」という意見は非常にありがたいのであり ます。でも「私はNY病患者じゃない。だからNY病はこの世に存在しない」的 なものは、できればご勘弁いただきたいと思うのであります。
 時間の無駄ですからね。
3)「”どこにでもあるから存在しない”はナシね」
 これからNY病の症状についてチンタラお話ししていくことになるのです が、読者の皆さんの中には、それらの症状を見て、「な〜んだ、そんなの ニューヨークだけじゃなくて、他の都市に住む日本人にだって見られるじゃ ない。ついでに、アメリカ人にもそんな感じの人いるし。だったらこんなこ と議論しても意味ないんじゃない」とお考えになる方もいることと思いま す。要するに、「どこにでもあることじゃん」のひとことで終わらせてしま う方法です。
 私たち自身も「これって、他の街や人種にもあるよね」と考える部分はあ ります。ただ、私たちがここで注目したいのは、なにはともあれそういう症 状がニューヨークに住む日本人の中に存在する、ということなのでありま す。
 「その傾向はどこにでもある。だからNY病と名付けることは間違ってい る」という意見は大切だと思います。でも、「その傾向はどこにでもある。 だから議論する意味もない」とすることによって、私たちが「NY病」と呼ぶ 症状の存在まで抹殺してしまうのはちと危険ね、と考えるのであります。
4)「”個人の問題だから。ははははは”もナシね」
 こういうココロ系の議論をする際の殺し文句のひとつに、「個人の問題」 というものがあります。
 「ねえ、日本人ってケツの穴が小さいと思わない?」
 「でも、それって個人によるよ」
 「それに比べて、アメリカ人って結構ケツの穴がデカいって思わない?」
 「それも個人によるよ」
 というふうに、「個人」というのを使いますとですね、議論というのはそ こでピタリとストップしてしまうのであります。
 そうなんです。実際、何事も個人次第なのであります。
 日本人なのにケツの穴がデカい人もいますし、アメリカ人にも極小肛門持 ちはいます。
 でも、すべてを「個人の問題」と言い切ってしまったら、今回のNY病のよ うな「ひとつの社会がそこに住む人間にどのように影響するのか」というこ とは議論できんのであります。
 「ニューヨークに住むと怒りっぽくなるよね」
 「それは個人次第ね」
 「NYJJって、結構権威主義者じゃない」
 「それも個人次第」
 勘違いのないようにご説明いたしますと、私たちは、ニューヨークに住む 日本人をひとくくりに「怒りっぽい」とか「権威主義者」などと言ってしま うつもりはないのであります。
 ただ、もしNYJJにそういう傾向が見られるのであれば、キッチリ直視した いですし、その原因を探ってみたいと考えるのであります。
 NY病というものを設定することによって、ニューヨークに住む日本人をス テレオタイプ化してしまう危険性は、十分認識しております。
 でも、私たちは「個人の問題だから」ですべてを済ませてしまいたくはな いのであります。
 以上が、NY病議論に関する私たち編集側からの要望になります。
 それではここから、NY病の症状に関する話に入っていきたいと思います。
 まず最初に、私たちNuts軍団が、「こういうのがNY病の症状よね」と考え る例をいくつかご紹介いたしましょう。適当にズラリと並べちゃいます。
『NY病の症状』
・「なぜ自分は今ニューヨークにいるのか」ということを考えられなくな る、あるいは、考えるのを避けるようになる。
・ニューヨークにおける自分の可能性を直視できなくなる。
・仕事より遊びを重視するようになる。
・日本に帰るのがコワくなる。
・短気になる。
・人の話を聞かなくなる、あるいは、聞けなくなる。
・自分の意見を”絶対”と思うようになる。
・違う意見の存在を許せなくなる。
・言ってることとやってることが矛盾するようになる。
・聞かれてもいないのに、ニューヨークにいることを必死で理由づけしよう とするようになる。
・いかに自分がニューヨークでがんばっているかを必要以上に他の人に強く 訴えるようになる。
・権威や権力を求めるようになる。
・日本いた頃よりもずーっと肩書き主義になる。
・「虎の威を借る狐」になる。
・自分よりも弱い者を見つけては、優越感を味わうようになる。
・クソ真面目になる。
・新しい芽(人物、企画、グループ)をつぶそうとするようになる。
・批判ばかりがうまくなる。
・目が常時「怒り目」になる。
・貧相になる。
・言ってることが宗教っぽくなる。
・物の言い方がニューヨーカー的に乱暴になる。
・社会的成功のみが人生の目的であると考えるようになる。
・ニューヨークの日本人社会でちょっと有名になると偉そうな態度を取るよ うになる。でも、日本の有名人には異常に媚びる。
・一見、物分かりがよさそうだが、よく話すと考え方がコチコチだったりす る。
・何気ないひとことにプッツンしたり、過剰反応したりするようになる。
・人をイジメることに快感を感じるようになる。
・現実から逃げるための恋愛をするようになる。
・アメリカ人の友達がいるということが、人生において非常に重要な要素と なる。
・人が自分をどのように評価しているかが年中気になる。
・人の悪口を頻繁に言うようになる。でも、自分に対する批判には極端に弱 くなる。
 てな感じになります。
 いかがなものでしょうか。
 これらの症状の多くは、私たちNuts軍団自身の精神状態を参考にしたもの になります。つまり、私たちこそNY病のいい具体例なのであります。
 カッカッカ。
 それでは、「NY病」話、華々しくスタートすることにいたしましょう。
                  「週刊Nuts」編集部
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『編集後記』

 今月の「Nuts井戸端会議」についてのお知らせなのであります。
 日時・場所は以下の通りになります。
「Nuts井戸端会議」
  日時:10月29日(木)午後7時ー8時半   場所:CAFE LOON LOON      152 E 25th St. (Bet. Lex & 3rd)
 参加希望の方はあらかじめ編集部(TEL: 212-982-3348)までご連絡く ださい。
 参加される方にひとつお願いがあるのですが、「おもしろくなかったら途 中で帰ろ」という方は、できるなら最初から参加しないでいただきたいので あります。
 井戸端会議はレクチャーではありません。その名の通り、全員参加型のお しゃべり大会なのであります。ですから、途中で人が抜けると全体の話のテ ンションが落ちるのです。
 初めから「この1時間半はドブに捨てる」という気持ちでご参加いただけ れば幸いです。よろしくお願いいたします。
 では、また来週。
                   「週刊Nuts」編集部
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『グリーンカードへの道・第53話』

 このコーナーの読者の方々から、「気軽にコーナーを休むのはよせ」とい うご意見をいただいてる。
 でも、そう言われたら休みたくなる私。
 でもでも、今週は書いてしまう。
 前回お話ししたように、イミグレにおける私の面接官が子供を妊(はら) んで産休かましてくれたのである。
 確かにおめでたい話ではある。しかし、私にとってはあまりおめでたくは ない。
 きっと彼女の机の上には、書類が山のように積んであるに違いない。その 風景を想像するとクラクラしてしまう。
 もし私の指紋がすでにFBIから返ってきてるとしたら、一体誰がその山の中 から私の書類を引っ張り出してくれるのだろう。
 彼女が職場復帰するまで、その書類群には誰もタッチしないような気がす る。うむ、きっとそうだ。イミグレは、旧ソビエト連邦みたいなところだか ら、自分から進んで人の仕事をやるような人間がいるわけがない。
 ということは、彼女が戻るまで、私の書類は眠り続けることになるのか。 もし彼女が、「ちょうどいい機会だから、イミグレ辞めちゃましょ」と完全 にトンズラしたら、その机の上の書類はどう処理されるのだろうか。
 この状況では、以前やったように、彼女に電話して指紋が戻ってきたかど うかを確認することもできない。
 困った。
 知り合いたちは次々とグリーンカードをGetしている。
 私は運が悪いのか。でも、ネタとしてはそっちのほうがおもしろいわけだ し、それはそれでハッピーなのだが、物事には限度というものがある。
 こうなったら、やはり”あの手”を使うしかない・・・
 実をいうと、以前から「ひろさんも私みたいにやったらいいのに」と言わ れていたイミグレ殺しの必殺技があるのである。
 これまでその技を使わなかったのは、私自身がこのグリーンカードGetに関 して「できることなら自然分娩で」と望んでいたためだ。でも、こうなった ら帝王切開でいくしかあるまい。
 自分自身、何を言ってるのかよくわからなくなってきたが、とりあえずそ ういう技が存在するのだ。
 私はその夜、つまり産休の事実を聞いたオムライスの夜に、うちのかみさ んにその技のことを説明することにしたのである。
 ふたりは、サンライズ・マートで買ってきたオムライスを電子レンジでチ ンして食べていた。
 私が言った。
 「ところでグリーンカードのことなんだけどさ」
 「ったく産休なんてふざけてるわよね。で、アンタ、どうすんのよ」
 「いやね、○○○ちゃんと○○○ちゃんが使った手があってね、彼女たち のときはうまく行ったらしくてさ」
 「何よ、それ」
 「それが、またアンタにがんばってもらわんといかんのよね」
 「あたし?」
 「そう、アンタよ」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「まあ、ちょっと説明させてよ」
 と言って、私はその必殺技についてかみさんに熱く語り始めたのであっ た。
 来週、このコーナーをお休みするかどうかは、私だけが知っている。
                       ひろ
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『今週の歌』

「”今週の歌”を必死で 考える
             我を横目に あくびする妻   ひろ」

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