1998年11月24日号(No.246)




目次

*『Nuts TV作戦10』
*『NY病でおま6』
*『編集後記』
*『グリーンカードへの道・第57話』
*『今週の歌』
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『Nuts TV作戦10』

 さて、「Nuts TV作戦」話の第10弾なのであります。
 かなり前にお話ししましたように、実際にビデオを撮り始めるためには、 まずManhattann Neighborhood Network(MNN)にてカメラのクラスを取 る必要があるのですが、未だにそのクラスがいつ開かれるかわかっておりま せん。この調子では来年になるかもしれませんなあ。
 でもまあ、こればっかりはどうしようもありませんので、MNNからの連絡 をのんびり待つことにいたしましょう。
 では。
                  Nuts電電映営部
     *     *     *     *
『”パブアク”レポート』〜炎のオリエンテーション9〜
 日本にもSnapple(スナップル)ってあったっけ?
 Snappleというのはアイスティーだとかフルーツ系のジュースを出してる アメリカの飲料ブランドのことである。
 このSnappleだが、皆さんご存知のように通常はガラス製のボトルで売ら れている。結構ドッシリした感じのボトルである。
 私たちは普通それをストローで飲む。しかし中にはボトルから直接ゴクゴ クする人もいる。
 今、私の目の前にいるリンダも、そのゴクゴク・グループのひとりだっ た。
 相変わらずの無愛想な答えの後、彼女はSnapple、正確にはSnappleアイ スティーのボトルを口に運び、ストローなしで直接飲み始めたのである。
 私は、その風景をじーっと見ていたのだが、同時にその飲み方に何やら異 様なものを感じていた。
 「何か変だなあ・・・」
 彼女はラッパ飲みの態勢から一度ボトルを下げた。でも、彼女はボトルか ら口を離そうとはせず、それを”くわえた”まま、再びボトルを持ち上げて その態勢へと戻った。
 ゴボッゴボッゴボッ。
 そうなのである。彼女はなんとSnappleのボトルの口をガッポリくわえな がら飲んでいたのである。
 あの〜、スイマセンけど、読者の皆さんの中にSnappleのボトルの口を ガッポリくわえながら飲む人がいたら手を挙げていただけませんか。
 おそらくその直径は約2センチぐらいはあるだろう。
 やってやれないことはないが、かなり息苦しいんじゃないかしらと私は思 うのである。その証拠に、リンダ自身も今にも咳き込みそうな感じで飲んで いた(そこまでして飲むか)。ついでにその苦しそうな顔を見てる私もなん だか息苦しかった。
 彼女はボトルをテーブルの上に置いた後、目の前にあるクシャクシャの ティッシュを左手で取り、口のまわりを拭いた。それが終わると、その ティッシュをポイとテーブルに投げ戻した。
 それから彼女はMNNのことについて説明し始めたのだが、私にとってそん なことはどうでもよかった。私は彼女がまたボトルをつかむのをひたすら 待っていた。
 ラムネや三ツ矢サイダー、あるいはコーラのボトルをくわえながら飲むの はわかる。しかし、彼女の場合はSnappleなのよ。
 突然、Tシャツ姿の白人男性がリンダに質問し始めた。話の感じから言っ て、結構長い質問になりそうだった。
 それを見切ってか、彼女はSnappleのボトルに手を伸ばし、それをグッと つかんで口へと運んだ。そして再びボトルの口をガッポリくわえ、ゴボッゴ ボッと飲み始めたのである。
 ひと息、ふた息、み息。アイスティーの表面が3度はじけるのが見えた。
 私はそれをじーっと見つめながらドキドキしていた。
 「スゴイ、スゴイ」
 彼女はそれが終わると一度ボトルを下げ、鼻で息を整えてから(だって口 はボトルをくわえたままですからね)またラッパ飲みの態勢に入った。
 ゴボッゴボッゴボッ。
 「スゴイ、スゴイ」
 その行為の間、彼女はずーっと質問者を横目で見ていた。いかにラッパ飲 みの状態でも、彼女はそのTシャツ男性から目を離さなかった。
 ボトルをテーブルに置くと、彼女は息苦しそうな顔をしながら例のティッ シュを左手で取り、口のまわりを拭いた。そしてそれを再びポイとテーブル に投げた。
 「飲んで休んで飲んで置いてティッシュで拭いてポイ」行為は、そのボト ルの中のアイスティーがなくなるまで続いた。
 私は、MNNのことなどそっちのけで、そんな彼女をながめていた。
                      ひろ
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『NY病でおま6』

 さて、「NY病でおま」シリーズの第6話なのであります。
 今週は、「日本人気質の問題」についてお話ししたいと思います。
 私たちはですね、いくつかのNY病の症状は、この「日本人気質」に起因し ていると考えるのであります。
 例えば:
・人の意見を聞かなくなる、あるいは、聞けなくなる。
・自分の意見を”絶対”と思うようになる。
・違う意見の存在を許せなくなる。
・権威や権力を求めるようになる。
・日本にいた頃よりもずーっと肩書き主義になる。
・「虎の威を借る狐」になる。
 などです。
 日本人気質と言っても、すべての日本人が同じ気質を持ってるわけがあり ませんし、「これが日本人気質だ、がっはっは」と言い切ってしまうことも かなりむずかしいのであります。
 でも、「アメリカ人に比べるとこういう傾向があるわね」てなことを言う のは可能だと思います。
 私たちが今からお話しするのは、あくまでもそういう意味での、つまり他 の人間集団と比べた場合の「日本人気質」でありまして、「日本人は絶対に こうなのだ」という強い決め付け型の日本人像ではありませんので、そこの ところご注意ください。
 私たちが考えますに、日本人はアメリカ人に比べると、異質なものの中で 生活することに慣れておらんのであります。
 まあ、アメリカという国は異質なものが集まってできた国ですから、それ と表面的には単一民族である日本を比べること自体が間違ってるのかもしれ ませんが、とりあえず日本人は、いろんなものがゴチャゴチャと共存する空 間に住むことに慣れておらんのです(アメリカ人、特にニューヨーカーと比 較するとね)。
 そりゃそうでしょ。日本では右を向いても左を向いても、ほとんどが黄色 い肌をした人たちですし、宗教的に言ってもアメリカほど明確には分かれて ませんからね。
 つまり、一種の「みーんな同じ」的安心感というのがあるのです。
 ところがですね、ニューヨークというのは、その正反対の場所なのであり ます。異なるものたちが世界中からワンサカワンサカ集まってくる街。それ がニューヨークです。
 そこでは通常、「みーんな同じ」的安心感というのは味わえないことに なっております。それはニューヨークの地下鉄に一度乗ってみればわかるこ とですね。だってアナタ、みんな顔の色が違うんだから。
 勘違いのないように言っておきますけど、私たちは別にニューヨーク崇拝 モードに入ってるわけではありません。「日本の地下鉄に乗っても、まわり は黄色人種ばっかりだからダメだ」なんて言ってませんからね。
 日本人がニューヨークにやってきますと、ある種の不安に襲われることが あります。要するに「みーんな同じ」的安心感を味わえないことによって起 こる不安感です。
 それは当然と言えば当然です。まわりを異質なものたちで取り囲まれちゃ うわけですからね。
 多くのNYJJ(ニューヨーク在住日本国籍日本人)はその不安感をなんとか 乗り越え、同時に「みーんな違う」安心感というものに慣れ始めるのです が、その場合でも「みーんな同じ」的安心感を求める気持ちはどこか心の奥 のほうで眠り続けることになります。
 そして、ここニューヨークでの生活の中でさまざまな問題にブチ当たった 時に、その衝撃で今まで眠っていた「みーんな同じ」的安心感を求める気持 ちが起き上がることがあります。
 つまり精神が先祖返りするのです。
 そうなりますと、ニューヨークは非常に住みづらい場所になります。どう 考えてもこの街は「みーんな同じ」的安心感を求めるところじゃありません からね。
 「みーんな同じ」的安心感を求める人間にとって、この街に住むいろんな 人の話を聞くことは、どちらかと言うと苦痛を伴ないます。だって、それぞ れがかなり違うわけだし、自分とは異なる意見に出会う可能性が高いからで す。
 こういう場合は、自分の考えを絶対化し、他の人間の話に耳を貸さないの が、一番の防御方法です。
 また、この「みーんな同じ」的安心感というのは、「何かに属することに よる」安心感に近いものがありまして、「みーんな同じ」的安心感を求める 人たちにも、自分が属する何かを探そうとする傾向がよく見られます。
 この場合の属するものというのは、「権威」や「権力」「肩書き」「組 織」などになります。
 ニューヨークに来たばかりの日本人の方からよく聞くのが、「この街の日 本人は、日本の日本人よりもよっぽど”日本的”よね」という意見です。そ の”日本的”というのは、通常いい意味においての”日本的”ではなく、 「保守的」だとか「権威主義」「肩書き主義」などのネガティブなイメージ での”日本的”になります。
 ニューヨークのような「リベラル」で「実力主義」の街に住みながら、精 神は「保守」「権威・肩書き主義」に突っ走る。日本にいる方には、ちょっ と理解しづらいかもしれませんが、前記の説明をよ〜くお読みになれば、そ れがどうやって起こるかはわかると思います。
 というわけで、以上のような過程を経て、最初に書いた諸症状が発生する のであります。
 で、その解決方法なのですが、私たちNuts軍団にできることは、はっきり 言ってありません。
   「異質なものを受け入れられるよう努力しよう」と言い続けることはでき ますが、その日本人気質を私たちの手で変えることはできませんからね。
 ですから、この問題はそっと置いておきます。
 てなとこです。
 では。
                「週刊Nuts」編集部
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『編集後記』

 ニューヨークの日本食レストランで働くウエイター、ウエイトレスの皆さ ん、お元気でしょうか。仕事忙しいですか。そうですか。いいですね、忙し くて。今、仕事中ですか。ほら、向こうのテーブルでお客さんが呼んでます よ。行ってあげてください。今度はこっちのテーブルのお客さんがチェック くださいって言ってます。とりあえずNutsはポケットにしまっておきましょ う。あとでゆっくり読むっていうのはどうですかね。お風呂の中で読むって いうのもなかなかオツなもんですよ。あ、またお客さんが呼んでます。そん じゃ、また来週お会いしましょう。
                 「週刊Nuts」編集部
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『グリーンカードへの道・第57話』

 「自分が住んでる地区のコングレスマン(下院議員)を探す」
 日本人は、「え〜、それってどうやって探すの〜?」と反応するかもしれ ないが、実際はそんなにむずかしい話ではない。
 だんな、あるいは、かみさんがアメリカ人ならば、普通は彼らが知ってる はずだ。
 アメリカの選挙区は、基本的に共和党と民主党の争いだからして、選挙自 体もわかりやすいし、候補者も通常は2人だけである(そして当選するのは ひとり)。
 日本人が知らないのは、ある意味当たり前である。だってわしらはアメリ カでの選挙権を持ってないからね。
 ただ、中には知らないアメリカ人もいる。うちのかみさんもそのひとり だった。
 かみさんが投票しに行くのに何度か付いて行ったことがある。
 筆記式の日本とは違って、こちらはレバーをカチャンカチャンとやって投 票するのだが、そのレバーの数がやたらと多かったのを覚えている(こっち はいろんな役職の選挙を一度にやっちゃうからね)。
 また、かみさんは盲目的民主党支持者であるため、他の候補者などには目 もくれず、民主党の候補者のレバーをカチャンカチャンやるだけだった。
 「そうなんだよねえ〜。それじゃ、コングレスマンを知らないのも無理な いよねえ〜」
 別に無理なことはないのだが、私はかみさんに対して暴言を吐くことを防 ぐため、自分にそう言い聞かせた。
 そして、私がかみさんに、私たちが住む場所、つまりイースト・ビレッジ を含む選挙区出のコングレスマン探しを頼んで1週間が過ぎた。
 毎晩、夕飯の際に「ねえ、コングレスマン見つかった?」と聞いてたにも かかわらず、かみさんはなかなか動こうとはしなかった。
 「これは一種の復讐だろうか・・・」
 私はそんなことを考えた。
 でも、私は我慢し続けた。
 それから数日経った昼下がり、かみさんが私の職場に電話してきた。
 「見つかったわよ。例のコングレスマン」
 やっと見つかったのである。
 「時間かかり過ぎだよ、おめえ」なんてことを言ったら何をされるかわか らないので、私は「すばらしい。サンキュー、ハニー」とだけ言った。
 そのコングレスマンの名前は、Jerrold Nadler。民主党議員である。ちな みに私たちの選挙区は「8th District」と言うらしい。
 「電話番号もわかったから、明日にでも電話するわ」
 明日電話するというのならそれでいいではないか。無理に「何言ってん だ。サッサと今日電話すんだよ!」などと言って、相手を挑発する必要はな い。
 「プリーズ、プリーズ、ハニー」
 最近、その辺のテクニックの上達が著しい私であった。
 皆さん、ボクのことを猛獣使いって呼んでください。
                         ひろ
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『今週の歌』

「真夜中に かみさんのジュース 盗もうと
         冷蔵庫のドア ”HIRO!”という声 ひろ」

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「週刊Nuts」編集部


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