1999年6月8日号(No.273)




目次

*『今週の問題です』
*『NYJJ2000作戦・その2』
*『グリーンカードへの道・第75話』
*『今週の歌』
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『今週の問題です』

 さて、今週からスタートする「今週の問題」シリーズなのであります。
 以前、似たようなシリーズがありまして、結構評判が良かったのですが、 知らない間に消滅してしまいました。で、ここら辺で復活させることにした のであります。
 復活の原因は、最近読者の方からいただいた一通の投書にあります。以下 にその投書の一部をご紹介します。
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 ところで、私は最近のNuts(ここ1、2年)に今一魅力を感じません。昔 はNutsを取りにマンハッタンまで出かけに行ったものです。身のまわりの ちょっとした疑問を投書で意見交換して、一体感が感じられました。
 最近は軍団の人たちのプロジェクトをあそーと外から見てる感じ。編集部 のひとたちは、疑問投げかけ、刺激与え役で、もっと”書きたいヤツが書 く”投書中心にもどしたらどうでしょうか?と一読者の意見でした。
 ひろさん、もっと書いてね。
                      佐助
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 似たような投書を他の方からもいただいております。
 なぜNutsがここ1、2年おもしろくないのかを説明することは可能です。 その辺のことをキチンとお話しすれば、おそらく読者の皆さんにもきれいに おわかりいただけると思います。
 ただ、それをご説明するのは2、3年あとになります。今は無理です。
 でも、だからと言って「おもしろくないNuts」をこのままにしておくわけ にはいきません。
 てなわけで、今週からこの「週刊Nuts」は、新たな地平線を目指して走り 出すことにいたします。限りなく刺激的かつ脳ミソ揺さぶり型ミニコミであ り続けるよう努力します。
 同時に読者の皆さんも私たちに対して挑戦的な投書をお送りいただけます ようお願いいたします。
 最近、ニューヨークの日本人コミュニティは平和過ぎてアクビが出てしま います。健全なモメ事が起こせるよう、お互い努力して行きましょうよ。
 それでは、早速、復活第1弾の「今週の問題」をどうぞ。
                  「週刊Nuts」編集部
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『今週の問題』

 「ブルーリボン寿司の問題」である。
 先日、私のかみさんの友人(コリアン女性。一応ここでは「ハイジ」とい う名前にしておく)が雑誌「ニューヨーク」のパーソナル・アドで知り合っ た男性とデートをすることになった。
 パーソナル・アドというのは、「こちら白人、シングル、身長6フィー ト、少女観察が好きな好奇心旺盛な30男デ〜ス」とかいう個人が恋人探し のために出してる広告のことである。
 ハイジがその「ニューヨーク」で見つけたのは、「ジューイッシュ」の 「アジア人女性希望」の男性だった。
 この「アジア人女性希望」という点を忘れないでいただきたい。
 彼女は早速彼に連絡を取り、電話で数回話したあと、彼らは実際に会うこ とになった。
 「でも、どうやってアナタだってわかるの?」
 「フフフ、そんなの簡単だよ。胸に赤いバラを差してるのがボクさ」
 などをいう会話をふたりが交わしたかどうか、私は知らない。
 結局彼らは、「ブルーリボン寿司」という寿司屋に行くことになった。 ちなみに、その提案者は彼である。
 その日、ハイジは、彼とのデートが終わったあと、私たち(私、かみさん &その他)と合流して、お茶することになっていた。
   ここでちょっと「ブルーリボン寿司」について説明せねばなるまい。
 この「ブルーリボン寿司」は、日本人の間ではそんなに有名な寿司屋では ない、と私は言い切ってしまう。場所もSOHOにあり、お客もほとんどがアメ リカ人らしい。
 この店の特徴は、その名の通り、寿司にまかれたブルーリボンにある。 ひとつ一つの寿司がブルーのリボンにまかれて出てくるのだ。
 というのはウソである。
 自分の頭の中で、ブルーのリボンをまかれたマグロのにぎりを想像した人 がいたら手をあげなさい。アナタはきっと素直な人間なのね。そのうち、誰 かにだまされるわよ。
 同じSOHOで夕メシをすました私たちは、ハイジと合流するために、「ブ ルーリボン寿司」へと向かった。と言っても、ふたりがお楽しみの最中に 「ども〜」と乱入するつもりなどなく、とりあえず店の前で中の様子をうか がうことになった。
 うちのかみさんが私に向かって「オメエはアジア人だから店の中をブラブ ラしてても怪しまれないだろ。ちょっと行ってこいよ」などと店内への侵入 を主張したが、他の連中が「それはやり過ぎよ」と反対し、その案は却下さ れた。
 その代わりに私が店のガラス越しに彼らを探すことになった。
 彼らはコリアン女性とジューイッシュ男性のカップルである。すぐに見つ かるだろうと私は考えていた。
 実際、そこでアジア人女性と白人男性のカップルを探すのは簡単だった。 なぜなら、その組み合わせ=ア女&白男のカップルが店内には山ほどいたか らである。
 それはある意味、奇妙な風景だった。ア女&白男カップルが7、8組もい るのである。どこを向いてもア女&白男。一体どういうわけなのだろう。
 これはあとでわかったことなのだが、ハイジたちは「ブルーリボン寿司」 が満席だったため、結局そこの近くのイタメシ屋に行ったらしかった。
 だから彼らは「ブルーリボン寿司」にはいなかったのだが、私にとっては そんなことはもうどうでもいいのである。
 「それにしてもあのア女&白男カップルの多さは何なのよ。きっとその理 由があるはずだわ」
 私はそう考え、デカいけど大して脳ミソの入ってない頭を使って、ひとつ の仮説を練り上げたのである。
 ここからが本文のミソになる。
 私の説によると、「ブルーリボン寿司」は、アジア人女性ばかりを狙う非 アジア人男性=アジア人女性専門男(略して”アジ専”)が得意技とするレ ストランなのである。
 彼らは、アジア人女性とのデート、特に初デ(最初のデート)の際にこの レストランを多用すると私は推測する。
 理由は簡単。
 まず「寿司」という要素が考えられる。
 ニューヨークにおいて「寿司」はおしゃれな部類に入る食い物である。 これがミネソタの奥のほうであれば、「野蛮人の食い物」かもしれないが、 少なくともこの街では、「寿司」を自由自在に食えることは、ひとつのス テータス・シンボルになりえるのだ。
 さらに行きつけの寿司屋なんかあった日には、他のアメリカ人から完全に 一目置かれてしまっちゃったりするのである。
 さらにさらに、非アジア人男性がアジア人女性をお相手として迎えた場合 の「寿司でも食べに行こうか」は、「おしゃれな食べ物」というレベル以上 のものを意味する。要するに、「キミたちの文化をボクはしっかり理解して るんだよ」というシグナルをひそかに送れてしまうのだ。
 ただ、あまりにも日本的な寿司屋だと、オーダーの仕方や出てくる料理な どで変なミステイクを披露してしまう可能性があるので、こういうときは非 日本人に開かれた寿司屋を選ぶ必要がある。その点、「ブルーリボン寿司」 なんか名前からして非日本寄りである。サイコーではないか。
 次にこの「ブルーリボン寿司」がSOHOにあるという事実も見逃してはなら ない。
 アナタ、何と言ってもSOHOよ。初デでいきなり、「それじゃ、チャイナタ ウンに行こか」ではイマイチ盛り上がりにかけてしまう。モット・ストリー トのホプキー・レストランかなんかで、ふたりで口のまわりをベトベトにさ せながらスブタに食らい付くのもなかなか味わいのある初デだが、やはり最 初はスローな入り方をしたいところだ。そういう意味で「チャイナタウン」 はちょっと踏み込み過ぎである。
 これがもしミッドタウンにあるレストランの場合でも、女性軍の反応はイ マイチであるに違いない。「この人、いつもミッドタウンでメシ食ってんの かしら。つまんないひと。フン」と来るはずだ。
 コリアンタウンもチャイナタウン同様、濃い過ぎる。
 ビレッジという手もある。これも自分のファンキ−さを前面に押し出した い場合はワークするが、相手がクイーンズの奥のほうに未だに生息するコン サバ女性であるならば、物事はすべてマイナス方向に作用するはずである。
 それぞれの地域が持つ要素を考え合わせた場合、SOHOというのは、かなり おいしい選択であると言わざるをえないだろう。
 「え? SOHO? この人って、いつもSOHOをウロウロしてる人なんだ」
 そんなインプレッションを彼女に与えられればグフフである。
 というわけで、アジア人女性とのデートにおける「ブルーリボン寿司」と いう選択肢の裏には、以上のような計算が潜んでいるのである。
 このNutsの読者の中で、知り合った非アジア人男性にデートに誘われ、そ れが「ブルーリボン寿司」だったりしちゃった人がいたらぜひともご連絡い ただきたい。ついでに、できたらその「ブルーリボン寿司にしようか」とい う提案に「ノー」と答えてほしいのである。そしたら相手はストックの中か ら第2の「ブルーリボン寿司」を挙げてくるはずだし、それが一体どのレス トランであるか、私はとっても知りたいのである。もし第2の「ブルーリボ ン寿司」を教えていただければ、私は再びそのレストランを取材し、読者の 皆さんにご報告するつもりだ(ワシは単なるヒマジンかい)。
 「ブルーリボン寿司の問題」でした。
                       ひろ
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『NYJJ2000作戦・その2』

 さて、久々の「NYJJ2000作戦」なのであります。
 このコーナーは、2000年つまり来年に向けて、ニューヨークの日本人がこ んなこと始めたらいいわね、こんなふうになってほしわ、こんなものが欲し いわね、ということをグダグダ話すところなのであります。
 前回は、「ニューヨークにもお好み焼き屋が欲しいの」という話でした。
 というわけで、早速今回のテーマをご紹介しましょう。
『そろそろニューヨークでもカレーライス屋を始めねばならぬのう』
 カレーライス。そう、私たち日本人の心のふるさと、あのラブリーなカ レーライスの専門店が欲しいわ、という話なのであります。
 ニューヨークにお住まいの方はあまりご存知ないかもしれませんが、ロス には日本風カレーライスの専門店がございます。その名も「カレーハウ ス」。ストレートなネーミングがなかなかよろしいですね。
 この「カレーハウス」ですが、ウワサによりますと結構にぎわってるらし く、ついでにアメリカ人客も来てるっていうんですから驚いちゃうじゃない ですか。
 こういう話を聞きますと、「ニューヨークも負けておれんわい」と考えて しまいます。考えてしまいませんか? シカゴには負けてもいいけど、ロス にだけは死んでも負けたくないとか思いませんか? 少なくとも私たちNuts 軍団は、ロスに対して燃えるような対抗意識を持っております。深い理由は ありません。何事もライバルがいるほうが楽しいですからね。
 しかしながら、「日本食の進化度」については、ニューヨークよりもロス のほうが先を走っておるのも事実です。「日本食の進化度」というのは、 「どのくらい日本的な日本食レストランが存在するか」というものでして、 寿司もテリヤキチキンもギョウザもラーメンもカツ丼も出してしまう百貨店 的な日本食レストランがあるところは「日本食の進化度」が低く、そば屋と かトンカツ屋とかお好み焼き屋とか日本風の洋食屋などの専門店がある土地 は「日本食の進化度」が高いのであります。
 その「カレーハウス」の例を見ればわかるように、ロスというところはア メリカで一番「日本食の進化度」が高い土地でして、オマケに牛丼の「吉野 家」が約50軒もあったりするんですから腹立たしいじゃないですか。
 ロスの話はこれぐらいにして、そろそろニューヨークでのカレーライス屋 の展開について考えてみたいと思います。
 カレー屋作戦において私たちが重要視したいのはですね、その店は日本人 だけを対象とするレストランではなく、アメリカ人もごっそり取り込んでし まうのよ、という点なのであります。
 日本人だけを対象にしておりますと、日本が不景気の際、要するに今の状 態ですね、こういうときにその影響をもろに受け、レストランの中に閑古鳥 がカーカー飛んでしまうのであります。
 そんな軟弱なレストラン体質では、ニューヨークでサバイブできません。 ですから、日本食の専門店をやる場合でも、アメリカ人客の必要性をきっち りと認識し、「私たちのお客様は、日本人とアメリカ人よ」の両刀使いで人 生を歩んでいかねばならんのであります。
 というわけでポイント(1):「日本人だけじゃなくて、アメリカ人も来 い来いカレー屋を目指す」
 続きは来週お話しいたします。
 では、また来週。
                 「週刊Nuts」編集部
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『グリーンカードへの道・第75話』

 私はアパートの2つ目のドアの前に立ったまま、その封筒を開けた。中か ら出てきたのは、白いカードだった。でも、それがグリーンカードであるこ とは間違いなかった。
 「やっぱり緑じゃねえんだ」
 以前、誰かに「グリーンカードはグリーンではない」という話を聞いたこ とがあった。だからグリーンなカードが送られてくるなんて、最初から考え てもいなかったが、ただ「ホワイトカード」というのは予想しない展開だっ た。
 そのカードには、2年以上前に撮った私の顔写真があった。その顔がやた らと若々しくて、私は、グリーンカードが来るのを待ちに待ったこれまでの 時間の長さを考え、そしてこの2年半のかみさんとの結婚生活を振り返っ た。
 「苦労したのね、ボクって」
 その「グリーンカード」をながめながら、私は右手に持ったカギでそのド アを開け、階段への通路を奥へと歩いた。
 うれしさは意外に込み上げてこなかった。それよりもホッとしたという感 じだった。これでかみさんに移民扱いされることもなくなるだろう。他人に 私を紹介するときによく使ったセリフ、「こいつ、最初、密航船でロング・ アイランドに上陸したんです。ちなみにその船の名前は”ゴールデン・ベン チャー号”っていうんです」ともオサラバだ。
 3階まで来たときに5階にある私たちのドアのロックが”カチャ”と開く 音が聞こえた。
 「かみさんはどんなふうに反応するだろう」
 階段の吹き抜け部分から5階のあたりを見上げながら、私はそんなことを 考えていた。
                     ひろ
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『今週の歌』

「添い寝とか 腕枕とか そんなこと
         どうでもよくなる そんな暑さね ひろ」 
   

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