1999年7月13日号(No.278)




目次

*『今週の問題』
*『NYJAは滅びるよ12』
*『VOICE』 ・投書『「いい女の問題」について』 ・投書『私の好きなお母様』
*『今週の歌』
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『今週の問題』

 やはりここは一発、「鼻折りの問題」について語らねばならない。
 ここニューヨークで、腕や足ではなく、顔の真ん中にある鼻をいかにして 折ることができるのか。それをよりによって、インディペンデンス・デーの 土曜日に折らねばならないそのココロとは。それらの質問に今こそ答えよう ではないか。
 私は、先々週の土曜日、プールで鼻を折った。それは私の親戚のうちの プールでの出来事だった。
 最初に説明しておきたい事実がいくつかある。まずその日、プールは緑色 に濁っていたということ。次に、私は自慢じゃないがグッド・スイマーであ るということ。そして最後に、私は勝負には命をかける人間だということで ある。
 私と他2名は、すでにそのプールの中にいた。水面から顔だけ出して、私 はプールサイドに座っている女性軍の中のひとりであるうちのかみさんにこ う言った。
 「潜って向こうとこっち往復したらいくらくれる?」「5ドル」「ディー ル」
 向こうとこっちと言っても、おそらく合計で30メートルぐらいである。 潜水で30メートル。ハナクソだ。
 私はそのとき、ゴーグルを着けていたのだが、それをはずし、親戚から借 りたダイビング用のマスクを顔面に装着した。なぜなら、マスク内の空気を うまく利用してその分長く潜っていようと思ったからである(潜り屋ならわ かる)。
 私は勢いよく壁を蹴った。
 潜水であるから、当然そのスタイルは平泳ぎになる。ビュン。ビュン。 私は快調に飛ばした。
 しかし同時に私はあることに気がついていた。「前が見えんぞ」
 目の前はマミドリだった。それは50センチ先が見えないくらいの濁り様 だった。
 「まあ、手で壁を確認すればいいか」。そんなことを考えながら、私は先 を急いだ。
 しかし、壁にはなかなかたどり着かなかった。「そろそろかな」。なんて ことを考えながら、私は両手でビュンと水をかいた。
 そのときである。突然目の前に壁が現われ、私はそのコンクリートに顔面 から激突したのだ。
 ”グワシッ”。
 私の顔面に衝撃が走った。マスクの中にプールの水が雪崩込んできた。 衝撃のため、肺にためていた空気も口からガボガボ出て行ってしまった。
 私は仕方なく浮上することにした。
 水面から顔を出したとき、プールの向こう側でかみさんが「イエ〜イ、 勝った!」と叫ぶ声が聞こえた。
 鼻からなにやら温かいものが滝のように流れ落ちてくる。それは血だっ た。
 「やべえ、かみさんに怒られる」
   「どうしたの? 大丈夫?」。親戚たちが私に声をかける。
 「ん? 大丈夫よ。ちょっと顔をぶつけただけよ」。私はそう言って、 水面から顔だけ出したまま彼らのほうを振り向いた。
 「ハ、ハ、鼻が折れてる!」。誰かが叫んだ。
 「ナニ?!」。私は自分でも触ってみた。そしたらなんと、私の鼻が完全 に「く」の字に曲がってるじゃないの。
 それから何が起きたかは、別に詳しく書く必要はないだろう。
 かみさんは完全にフリーク・アウトし、親戚たちは慌てて私を救急病院に 運び込み、水着姿でERに寝そべった私はその寒さのためガタガタ震え、「鼻 を折ったヤツが運びこまれたぞ」という噂を聞いた病院の連中が何人も私の ところにやってきて「あ、きれいに折れましたねえ」とコメントを残し、ER に運び込まれて約20分後にサッソウと現われた整形外科のドクターは私を 見るなり「ちょっと写真撮ってもいいかな」とデジカメで写真を撮りまく り、「さて、そろそろ直そうか」というドクターのコメントと同時に再びそ こら中から人々が集まり始め、ドクターは麻酔の後、ピンセットの取っ手の 部分を私の鼻の中に激しく突っ込み、それでガキゴキと鼻をもとあった場所 に戻そうとしたが、力が入ってちょっと行き過ぎ、今度は手でグイグリと反 対側に押し戻し、「まっすぐになったよ」と見せられた鏡の中の自分の鼻は ホントにまっすぐで、わたくし思わず「ホホ〜」と感心、みんなと握手した あとに水着姿でかみさんとご対面、でもかみさん依然フリーク・アウト状 態・・・・というのが、今回の「鼻折り事件」の簡単な顛末である。
 なによりも悔やまれてならないのは、激突の後、水面に浮上したことであ る。あのままターンして、かみさんの目の前で浮上したら・・・。おそらく 救急病院に担ぎ込まれる人間がもうひとり増えることになったはずだ。
 どうせだったら道連れにしたかったな。
                         ひろ
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『NYJAは滅びるよ12』

 さて、「NYJAは滅びるよ」シリーズの第12弾なのであります。今回は、 「日系アメリカ人強制収容所」映画について少し語ってみたいと思います。
 噂によりますと、先週の火曜日にPBSにて「ラビット・イン・ザ・ムーン (月のウサギ)」というタイトルのドキュメンタリーが放映されたようです ね。
 この映画は、第2次世界大戦中の日系アメリカ人強制収容所をテーマにし たものでして、なんと今年のサンダンス映画祭で最優秀撮影賞を受賞しちゃ ったらしいのであります。
 すばらしい。パチパチパチ。
 でもその一方で、私たちNuts軍団には、「また”収容所”映画ですか」と いう思いもあります。もう少し正直に言いますと、「それしかないんか」と いう感じです。
 私たちはここで日系アメリカ人強制収容所に関する映画を作る人たちに 「もうやめたらいいのに」と言うつもりはありません。そういう作品をホン トに撮りたい人は、死ぬほど撮ったらいいと思います。
 ただ、です。日系アメリカ人及び在米日本人の映画屋とか物書きの皆さん も、そろそろ「日系アメリカ人強制収容所」ネタから卒業したほうがいいん じゃないでしょうか。
 確かにそれはひじょーにおもしろく興味深いテーマではあります。ついで に人種問題や反戦ネタも絡んでおりますので、ちょっとカタめのネタがお好 きな日系アメリカ人及び在米日本人の表現者の方々にとっては、これほどい しいネタはありません。
 また、これであれば、「そんなもん撮ってんじゃねえよ」とか「何、つま んねえこと書いてんだよ」とツっ込まれる心配もないですね。「日系アメリ カ人強制収容所」ネタは基本的に「かわいそう」物語ですから、身体障害者 の方々について撮ったり書いたりするのと同じで、「かわいそうな人たちの ことをボクは取り上げているんだよ、エッヘン」的な、なんとなく批判でき ないオーラでそのまわりを包まれておるのであります。水戸黄門のインロウ みたいなもんでして、それを出されたら「へへえ〜」と言うしかないので す。
 だからこれまで多くの日系アメリカ人及び在米日本人の表現者の皆さんが このネタに逃げ込んで来ました。だって、映画とか本の題材とすれば、こん なにおいしいネタないんだもの。オマケに他の人種にはなかなか手が出せな いテーマで、ほぼわしら(日系アメリカ人&日本人)の独占状態。そしたら やっぱ走るでしょ。
 作ったら作ったで、まわりもあんまり邪見な扱いはできないから、それな りに評価してくれます。少なくとも作った時点で合格点がもらえるのであり ます。表現者としても「シリアスなものもいけるんだぜ、オレって」という 見えない勲章を自動的に与えられ、その後の自分の表現者としての社会的展 開上もプラスに働きます。
 というふうなイジワルな見方をしますとですね、「日系アメリカ人強制収 容所」ネタはこれまで日系アメリカ人及び在米日本人の表現者の駆け込み寺 的な役割を担ってきたことになるのであります。
 それって、あんましいいことじゃないですよね。
 「日系アメリカ人強制収容所」ネタを映画や本で題材として取り上げるこ とはひじょーに大切なことだと私たちも思います。正確には、ひじょーに大 切なこと”だった”と私たちも思います。ただ、日系アメリカ人及び在米日 本人の表現者は、そのネタにあまりにも甘え過ぎてはいないでしょうか。
 他にも取り上げるべきテーマはいくらでもありますし、過去を掘り下げる だけでなく、未来を切り開くような比較的明るい作品も作ろうと思えば作れ るはずです。
 それなのに、それなのに、寄ってたかって収容所。すでにアメリカ政府は その罪を認めて、日系アメリカ人への補償を始めているというのに、それで もみんなで収容所。この状況、どうにかならんもんでしょうか。
 今から「日系アメリカ人強制収容所」ネタを映画や本の題材として取り上 げようとしている日系アメリカ人及び在米日本人の表現者の皆さん、アンタ ら単に逃げてるだけなんじゃない。これだけいろんな人間がこのネタについ て映画作ったり本書いたりしてるのに、それでもまだやりますか。他にいい アイデアが思い浮かばないから、駆け込み寺に駆け込もうとしてるんじゃな いんですか。
 日系アメリカ人及び在米日本人の表現者の皆さんは、もうそろそろひとり 立ちすべきだと私たちは考えます。そして、私たち観客あるいは読者側も、 正直に「他にやることないんかいな」と言ってあげるべきだと思います。で ないと、日系アメリカ人及び在米日本人は、うしろ向きのまま21世紀を迎 えることになります。
 過去を考えることはいいことです。でもそれはあくまでも未来に向かうた めの「振り返り」であるべきです。日系アメリカ人も私たち在米日本人も、 もういい加減、前に踏み出してもいいのではないでしょうか。
 ジャッキー・チェンを見なさい、ジャッキー・チェンを。
 今回はこんなもんで。
 では。
                 「週刊Nuts」編集部
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『VOICE』

@投書『「いい女の問題」について』
 No.276の「今週の問題」に対する投書です。
 なかなか痛い所をついてますね。もっともなんです。何を隠そう私は「い い女」友達が沢山いる身です。不思議な現象だとは思いますが、それなりの 理由があるんですよ。貴方の理論とは少し異なりますが。
 まず「いい女」について。
 いい女とは、教養があり、自分を常に磨き、品のある女性のことだと私は 思う。自分を磨く女性だから男・女友達、ボーイフレンド、パートナーにも それなりの教養、価値観を求める。だからいつも一緒にいたいと思う友達を 注意深く選ぶ。
 別に極めてsnobbyだからとか、非社交的とかいうわけではなく、ただ注意 深く、変なところで妥協しない。「余っている」のではなく、自分の目標に 自信があり、それを省みない余裕があるのだ。その「目標」の男性が世の中 に少ないのか(多分ね)、それともそういう男性に会う機会が少ないのか、ど ちらにしても彼女たちの幸せは、彼女たちが「目標」とした男性に会わない 限り、訪れないだろうと私は思う。
 一方「ビッチな女」について。
 ビッチな女とは、女の性格の嫌な部分がさらけ出ている女の事ではないだ ろうか。口うるさい女、悪口を言う女、噂話が大好きな女。しかし、どんな に性格が悪い女でもおそらく根はいい奴ではないかと思う。人間、他人に嫌 われようとして行動することは少ないと思う。(余計な事でも)誰かの為を 思ってとか、好奇心が強いからとか、多分に過激な性格ではあっても、その ビッチな部分を女性的だと魅力を感じる男性がいても不思議ではない。特に 結婚しているカップルの場合、「よくそこまでコミットできるな」と男性の 許容性に感服するが、「捨てる神あれば拾う神あり」で、誰にでもパート ナーに巡り会うチャンスが訪れるものだと希望も大きくなる。でもこれはあ くまでも推論で、私には「ビッチな女」友達が少ない為、実際のところどん な結婚生活が展開されているか分かったものではない。
 結論として、いい女には選択肢が少ないのである。「目標」が高い分だ け、選択の余地がないと思う。しかし、「目標」の男性に巡り会えたとき、 おそらくその男性でいこうと心を決めるのは早いでしょう。ビッチな女につ いては、理解しがたいのでコメントを避けます。ただ言えるのは、ビッチな 女でも好みはあるでしょうし、相手の男性がよっぽど魅力的で、それでいて 鈍感な男でない限り、彼らはカップルとして続かないでしょう(ビッチな女は 我が侭だというアイデアに基いた推測です)。
 何はともあれ、私としては「いい女」友達を応援しています。彼女たちは 独り身でも充分魅力的ですが、彼女たちが幸せになればその魅力は倍増する だろうと思います。
       「いい女」を卒業してやっと彼氏が出来たみーこより
@投書『私の好きなお母様』
 なんでもディズニーの「白雪姫」で彼女の人生が変わったそうだ。その映 画を3才の時観て、それまで絵なんて全く描けなかったのに、突然「まるで 大人が描くみたいな絵が描ける様になったのよ」と言っていた。そんな彼女 はこちらで結婚して30年近くになる。
 私が彼女と一緒に働く様になって6年になる。よくも同じ店で長い事ウェ イトレスをやってるよなあと、自分でも呆れているが、この人が居たから働 き易かったのだ。
 よく彼女と絵の話をする。私も少し絵を描いていたけれど、余りの無能さ にとっくにサジを投げてしまった。でも彼女はこつこつと描き続けていて、 「うずまきを描いたら面白くって眠れなくてねー」と、真っ赤な眼をこすっ ているのを見ると頭の下がる思いがする。嫌なお客さんもつまらんモメ事 も、仕事が終わって一緒にご飯を食べているともうどうでもよくなってく る。ずっとこの人とご飯を食べていられたらなあと思うのだ。
 「ベックリンの『死の島』って不気味な絵ですよねえ」
 「ああ、あれMETの2階にあったわねえ」
 「え.....知らなかったっす」
 「あの絵ね、10年前に私がロスからNYに戻って来た時、まだあるかなあ と思って観に行ったらあったのよ。嬉しかったあ。私の娘達もあの絵が好き でね」
 彼女宅には今、カメのエサ用の10匹$1の金魚が居る。エサにするつも りが飼ってしまっているそうだ。「毎日ね、朝晩フィルターを通した水をか えてやっているのよ」。そう言われた時、透明な水の中をウロコのはがれた 金魚が私の眼の前を泳いで行った様な気がした。
 私は金魚が羨ましかった。
                        修
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『今週の歌』

「”どうやったら プールで鼻が 折れるんです?”
            それもそうだと 聞かれて思う ひろ」

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「週刊Nuts」編集部


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