1999年7月27日号(No.280)




目次

*『今週の問題』
*『NYJAは滅びるよ13』
*『編集後記』
*『グリーンカードへの道・第78話』
*『今週の歌』
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『今週の問題』

 「コリアン風日本食」の問題・その1である。
 まずは、今週の日曜日、私がニュージャージーのヤオハンに行ったときの 話。
 皆さんご存知のようにヤオハンには日本食があふれている。それは、そこ で売られている商品だけでなく、店内にある日本食屋や喫茶店などのことも 含む。
 ふと見れば、お好み焼きを焼いてる。その向かいは、お総菜屋さん。喫茶 店にはフルーツ・パフェを食ってる客がいる。
 日本から遠く離れたこの地に住む私たちにとって、ヤオハンはそこにいる だけで幸せな気分にしてくれるラブリーな空間である。「あれも食べたい、 これも食べたい」という気持ちを抑さえつつ、「今日は何を食べようか なー」てなことを考えるのが楽しかったりする。
 で、今回私がそのヤオハン・ツアーのおやつに選んだのは、「かき氷」 だった。正確には、私と一緒にいた日本人の女の子が、「かき氷食べたい」 と言ったため、そういう選択になったのだ。
 コリアン経営と思われる甘いもの屋(ジュースとかアイスクリームを売っ てる)の正面に「かき氷」という看板があり、そこには、かき氷の上にアズ キ、そしてその上に小倉アイスが乗っている絵が描いてあった。
 「これはなかなか魅力的な重層構造だ」。
 私はその絵を見たとき、心の中でそうウナった。
 日本風に言うと、「金時」になるのだろうか。いや、小倉アイスが乗って るから、そう呼ぶわけにもいかない。でも、小倉アイスというのは、アズキ とアイスを混ぜ合わしたものであるからして、原料的には「金時」にかなり 近い。となれば、やはりそれは「金時」か・・・。
 そんなことを考えながら、私は「小倉アイスのかき氷を2つ」と日本語で オーダーした。
 「テン・ダァーラー」とコリアンのおばさんが英語で答える。
 1皿5ドルとな。結構なお値段ではないか。
 私は10ドルを払い、問題の「かき氷」が現われるのを待った。
 そのコリアンのおばさんが両手に真っ黒な皿を持って私たちの前を通り過 ぎる。で、おばさんはその「真っ黒」の上にスクープですくった小倉アイス をワサリと乗せた。
 「も、も、もしかして、あの”真っ黒”はアズキではないか」
 おばさんは小倉アイスの上にさらに何かを乗せようとしていた。
 そして最終的に問題の「かき氷」は、私たちの前にその姿を現わしたので ある。
 その「かき氷」の重層構造を簡単に説明すると以下のようになる。
 まずボトムの部分に敷き詰められているのが「氷」になる。これは一応、 依然は「かき氷」だったのだろうが、「かき氷」状態になったあと、長いこ と冷凍庫か何かに保管されていたため、先祖返り、つまり「氷」の歯触りに 戻りつつあった。
 その上に乗っかってるのがアズキである。アズキはアズキでいいのだが、 問題はその量だった。それは、最下層部の「氷」のおよそ2倍ほどあった。 「氷」が完全にアズキに押し潰されていた。
 アズキの上に積まれたのが、「金時」の親戚の小倉アイス。そしてさらに その上にはスイカとバナナの切れっぱしが乗っかっていた。
 私の人生の中で、これほど食欲をそそらない「かき氷」に会ったのは、 それが初めてだった。
 それは明らかに醜かった。真っ黒なアズキの上にムラサキ色の小倉アイ ス。その上に赤いスイカと肌色のバナナ。「氷」部分は、表面上はまったく 見えなかった。
 また、その構成物のバランスに大きな問題があった。何と言ってもアズキ が多すぎるのである。ついでに、どういうふうに煮たのか、そのアズキはや たらと歯ごたえがあったりして、まったりというよりは、どちらかと言う と、水分がきれいに抜けてごわごわしていた。
 でも、私は食べた。小倉アイスとアズキと氷の量的バランスを考えなが ら、その結果、アズキだけを食うことになりながらも、私はその「かき氷」 にスプーンを刺し続けたのである。
 食べ終わったあと、私は心の中で自分自身にこうクエッションした。
 「このかき氷にリピーターというのは存在するのだろうか」
 ちなみに私は2度とあの「かき氷」は食わないだろう。それは、マズいも のに対して比較的寛大な私にそう言わせてしまうほどのマズさだった。
 そして私は同時に思ったのである。
 「これを”かき氷”だと言っていいのだろうか。こんなマズいものを堂々 と”This is KAKIGOHRI”と言って、アメリカ人に出していいのだろうか。 その結果、アメリカ人が”日本人っていうのはこんなマズいもん食ってんの か”なんて思っちゃっていいのだろうか。でも意外と”これ、おいしいね” とか言いながら食っちゃったりしたら、日本人としてちょっぴりサビしいん だけど、それはそれでいいのだろうか・・・」
 あの店のコリアンのおばちゃんが、どういうつもりでその問題の「かき 氷」をクリエイトしたのか、私は知りたいと思う。もしかしたら、コリアで はそういうものを堂々と売っているのかもしれない。コリアンの人たちに とっては、それが”おいしい”「かき氷」なのかもしれない。いや、”おい しい”と言ってるのは、アメリカ人客なのかもしれない。でも下手をする と、誰も”おいしい”なんて思ってないのかもしれない。みんな1回は食う が、そのあとは誰も食おうとしないのかもしれない。私たちがその「かき 氷」をオーダーしたとき、コリアンのおばちゃんが「ホントにそれでいい の?」的なちょっと意外そうな顔をしたのは、その人気のなさを知ってたか らかもしれない。
 かもしれない・・・かもしれない・・・かもしれない・・・
 すべては「かもしれない」なのだが、私はここでひとつだけはっきり言い たいことがある。あれは「かき氷」ではないし、「かき氷」と呼んでもほし くもない。
 私は、非日本人の方々が日本食を作ったり売ったりすることに関しては、 基本的にイケイケ派である。でも同時に、ワケのわからんものを「これは日 本食です」と売られることにはひじょーに反発を感じる人間でもある。
 「それもひとつの日本食の進化したカタチなんじゃないの」と私に意見す る人もいる。それはそうだ。アメリカでカリフォルニア・ロールが生まれた ように、日本食はさまざまな人々によってさまざまなカタチに生まれ変わっ ている。それは、日本食の層を厚くするものでもあり、日本人にとってはす んごく喜ばしきことなのだが、ただ一方で、「日本食に乱れが生じている」 と見ることもできる。日本人がこれまで築き上げた食文化が、ヨソ者にぼろ ぼろにされてしまいそうな嫌悪感及び恐怖感。日本食の幅が広がる喜びと共 に、そういうものも私は感じるのである。
 コリアン風日本食に対する以上のような複雑な思いが、今回のテーマであ る。次号では、コリアン風寿司にフォーカスしてみたい。
                     ひろ
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『NYJAは滅びるよ13』

 さて、飽きもせずに「NYJA(ニューヨーク在住日系アメリカ人)は滅びる よ」シリーズの第13弾なのであります。でも、そろそろ終わるわよ。
 今回は、先日ニューヨークのブライアン・パークで開催された「盆踊り」 大会について少し語ってみたいと思います。
 この「盆踊り」大会は、アップタウンにあるニューヨーク仏教会が中心と なってやってるイベントでありまして、毎年夏にミッドタウンのライオンが 座ってる図書館の裏のブライアン・パークにて開催されております。正確な 数字はよくわからんのですが、今年で数十回目を迎えるとっても歴史のある 日本系催し物なのであります。
 ただ、「日本系催し物」とは申しましても、これはニューヨークの日本人 コミュニティよりは日系アメリカ人コミュニティに近いイベントでありまし て、Nuts読者の中には「そんなイベントがあるんかいな」とお思いの方も少 なからずいると私たちは見ております。
 てなわけで、私たちNuts軍団は7月11日の日曜日、朝もはよからブライ アン・パークに行ってきたのであります(と言っても午前11時ぐらいから だけど)。
 イベント自体は、午後1時からだったのですが、私たちとしましてはその 準備の風景というのをどうしても見たくて、午前中からスタンバっておりま した。私たちが注目していたのは、「どういう人たちがボランティアとして 参加しているか」という点でした。先に申し上げましたように、この「盆踊 り」大会は、どちらかと言いますと日系アメリカ人色の強いイベントであり まして、「それならば当然ボランティアの人たちも日系アメリカ人が多いは ずよね」というのが当初の私たちの読みでした。
 ところが、です。その場にボランティアとして現れたのは、非日系の方々 (日本人も含まず)がほとんどだったのであります。
 日本絡みのイベントのボランティアの大半が非日系であるという現実を、 皆さんどうお考えになりますでしょうか。「それだけ日系のイベントが現地 の人たちに受け入れられてるのよ」と取るか、あるいは「日系アメリカ人& 日本人は一体何をやってますの」と突っ込むか、判断の分かれるところです が、これまで日系アメリカ人及び日本人に対して、「おめえら、もうちょっ とコミュニティのこと気合い入れてやれや」と言ってきた私たちNuts軍団と しましては、当然後者の思いが心の中を駆け抜けてしまうのであります。
 それは、なかなか悲しい風景でした。白い人や黒い人が一生懸命、提灯を 飾ったり、紅白の横断幕を張ったりしておるのです。昔から長いこと続いて る「盆踊り」大会であるにもかかわらず、ついでにそれは力一杯日本絡みの イベントであるにもかかわらず、日系アメリカ人&日本人はほとんどいない と来てるじゃありませんか。
 私たちはそのとき、やっと気がついたのです。
 「NYJAはすでに滅んどるよ」と。
 この「NYJAは滅びるよ」シリーズを始めて以来、私たちNuts軍団はニュー ヨークの日系アメリカ人コミュニティをいろんな角度からながめてきまし た。私たちは、「どこかを刺激すれば、このコミュニティは再び息を吹き返 すんじゃないかしら」と信じながら彼らのことをあーでもないこーでもない と書いてきました。
 でも、その途中で、私たちはなんとなくイヤな予感がしていたのです。
 そして今回、「盆踊り」大会に行って、私たちが漠然と感じてたことがほ ぼ事実であることを確認してしまっちゃったのであります。
 NYJA、正確には戦前アメリカに引っ越してきた日本人たちの子孫軍団で構 成される「ニューヨーク旧日系移民」グループは、すでに滅んでおります。 このグループは、これから誰がどんなにモガいても生き返ることはないで しょう。
 ただ、俗に「新移民」と呼ばれる比較的最近アメリカにやってきた日本人 の子孫軍団には、まだ光があります。彼らは全体的に若く、ひとつのコミュ ニティをオーガナイズするだけの力は今のところありませんが、少なくとも NYJA社会におけるオンリー・ホープだと私たちは考えております。
 次回は、その彼らについて語ってみたいと思います。
 では。
                「週刊Nuts」編集部
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『編集後記』

 先日、ある読者の方から「駐妻Nutsってどうなったんですか?」というご 質問をいただきました。
 また別の方からは、「Nuts TV作戦ってまだ続いてるんですか?」という 問い合わせを受けました。
 どちらの作戦も未だに進行中です。でも、忙し過ぎて、どちらかと言うと 後回しになっております。
 いけませんね。
 ただ、Nuts軍団といたしましては、私たちが正式に「や〜めた」と言わな い限りは、その作戦は生き残ってる、という見解でおります。
 言い換えますと、やめるときは「やめます」としっかりご報告いたしま す。
 それにしても、やり中の作戦の多いこと多いこと。おそらく全部で20コ ぐらいはあるはずです。
 まあ、ぼちぼちやっていきますか。
 では、また来週。
                「週刊Nuts」編集部
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『グリーンカードへの道・第78話』

 とうとう待ちに待ってたグリーンカードが来たのである。
 でも、私の生活には大した変化はなかった。
 仕事は相変わらず忙しいし、でも貧乏だし、国外に出る予定もなかった。
 確かに、グリーンカードが届いたその夜は、何度も封筒から取り出して、 「これがグリーンカードか・・・」と現物をじっとながめたり、ひっくり返 したり、透かしたりしながら、2年間の戦いの末に勝ち取ったその労働許可 書の手触りを楽しんだが、次の日からはグリーンカードのことなんかすっか り忘れて、ついでにどこに置いたかも忘れちゃって、職場でそのコピーが欲 しいと言われたときに大騒ぎして探したりした。
 あれだけ「グリーンカード! グリーンカード!」と言っておきながら、 いざ来るとそのありがたみも忘れてその辺にポイである。人間って、現金よ ね。
 でも逆に言うと、あまりにもホッとしちゃったからこそ、その辺にポイな のかもしれない。変な緊張感がなくなったせいで気持ちがユルユルになった のである。
 実際、心の上に乗っていた漬け物石を下ろしたような開放感を私はひそか に感じていた。いつも頭の片隅にあった「ビザ、どうしようかなあー」とい う心配のカタマリが、知らない間に消え去っていたのだ。
 もともと物があんまり入ってない頭の中が、以前にも増してスッカラカン になったもんだから、私の脳天気テンションはただただ上がるばかりだっ た。
 そんな私をうちのかみさんは冷めた目で見ていた。それは、冷めたと言う よりは、「調子こくなよ、イエロー・モンキー」というような目だった。
 かみさんのそんな視線を感じるとき、私は負けじとにらみ返した。その目 は、「おれはグリーンカードのためにおまえと結婚したのだ、ははははは は」とせせら笑っていた。
 戦争が終わって、時代はコールド・ウォーに突入しつつあった。
                     ひろ
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『今週の歌』

「ビレッジでの 最後の夏は ぜいたくに
         テイクアウトで カツカレーの日々 ひろ」

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「週刊Nuts」編集部


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