1999年11月30日号(No.298)




目次

*『今週の問題』
*『L.I.C. ジャパン・タウン化作戦6』
*『ピアノ・バー覆面座談会2』
*『VOICE』 ・投書『王様ビルディング』
*『今週の歌』
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『今週の問題』

 再び「在外投票シールの問題」である。
 最近気がついたのだが、私は在外投票シールの配布先を間違っていたのか もしれない。
 と言うのも、先日の朝、クイーンズからマンハッタンに行くFトレインに 乗ってるとき、背中のナップサックに漢字でウダウダと何か書いてる黒人少 年を目撃したのである。おそらく友達の中国人にでも書いてもらったのだろ う。7、8コの漢字が横に一列に並んでいた。何と読むかは解読不可能だっ たが。
 「こんな少年も漢字スキなわけね。ふふふ。クイーンズのガキにしちゃー シャレてるじゃねか」。彼のバッグの文字を見つめながら、私はそんなこと を考えていた。
 そのとき、である。私は自分のこれまでのおろかさに気がついたのだ。
 「あ、ヤベ。オレって相手を間違ってたんでねえの」
 相手とは、「シールを配布する」相手のことである。つまり、在外投票 シールを最も愛してくれそうな人たち。そのチョイスが間違ってたという話 だ。
 よく考えると、ニューヨークで異文化としての「漢字」を一番愛している のは黒人とヒスパニックたちではないだろうか。確かにイースト・ビレッ ジ・キッズ軍団も漢字Tシャツ等を着まくってるが、例の「希」に似た刺繍の 入った帽子をかぶっている人たちのほとんどは、黒人かヒスパニックという 現実。腕に漢字の刺青入れてるNBAプレーヤーも黒人だし。
 私はこれまで「日本好き or 日本食好き=漢字好き」と勝手に勘違いしてい た。だから10月の「日本の祭り」で在外投票シールを配り、サッポロ・レ ストランとサンライズ・マートに在外投票シール袋を設置したのだ。でも現 実は明らかに違うぞ。
 最初、このシール作戦を思いついた頃は、「日本人のまわりにいるアメリ カ人がこの在外投票シールを自分の部屋とか身の回りの物に張ってくれたら ラッキー」程度のことしか考えてなかった。でも途中からその予定が「だれ か在外投票Tシャツ作んねえかな」に変わり、しまいには「この”在外投票” の文字をニューヨークの流行りモノにしてしまおう」というところまでパ ワーアップしてしまった。もともとのアイデアがすっかりスーパーサイヤ人 状態。
 お祭りでシールを配布した際は、私のテンションはすでに「ニューヨーク 制覇」の域にまで達していた。そのゴールへのステップとしてのお祭り活用 であり、レストラン等での配布だったのだ。しかしそれは大したステップに はなってなかったのだよ。読みがあまいぜベイビー。だれがベイビーだ。
 そんなわけで作戦変更。何をどう変更するかについては次回お話しする。 ま、つまんない話だけどお付き合いいただきたい。
                       ひろ
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『L.I.C. ジャパタン化作戦6』

 さて、「L.I.C. ジャパン・タウン化作戦」話の第6弾なのであります。今回 から数回に分けて「日本的市場(いちば)のアメリカにおける可能性」につ いて語ってみたいと思います。要するに、「日本の市場みたな雰囲気のお店 を作れたらウケるんじゃないかしら」という話です。
 前回お話ししましたように、私たちNuts軍団は、フラッシングのコリア ン・スーパー・マーケットに行ってまいりました。今回の「日本的市場」案 は、そのときにポッとクリエイトしたものになります。
 よく考えたら、アメリカには日本の市場みたいな場所って、あんましない ですよね。肉、野菜、魚などを売っている「マーケット」的なものはありま すが、日本の「市場」の空気を持つ空間というのはほとんど存在いたしませ ん。
 その「マーケット」と「市場」の違いを説明するのは非常にむずかしいの ですが、ひとことで言いますと、「カタカナと漢字の違い」と言えます。こ れは別にボケじゃなくて。
 頭の中で「マーケット」を「市場」と訳してしまいますと、ここで私たち が説明しようとしている「違い」が逃げてしまいます。両者を視覚でとらえ てください。
 「マーケット」と「市場」。なんか違うでしょ。
 「マーケット」と言うと、なんかこざっぱりした感じがするじゃないです か。行くのにもオシャレが必要、みたいな。
 反対に「市場」は、かなりコテコテでしょ。「マーケット」よりももっと 密度が濃い感じ。下手すると、「臭い」とか「汚い」なんていうイメージも 湧き上がってくるじゃないですか。その違いがポイントなんです。
 私たちNuts軍団は、日本語としての「市場」が持つその濃密感と言います か、非オシャレ感というのをアメリカで爆発させたらどないだ、と考えてお るのであります。
 スペースがないので今週はこの辺で。続きは次回に。
 では。
                  「週刊Nuts」編集部
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  『ピアノ・バー覆面座談会2』 ひろ:じゃ、ぶっちゃけた話、全体(ピアノ・バーで働いてる女の子)の中 で”この人楽しそうにやってるな”っていう人はどのくらいいるの? 好き な人は楽しいと思うんだけど、イヤイヤやってるとか、何となくやってると か、目標をなくしちゃったとか、いろいろあるじゃない? 全体の中で、ど れくらいの人たちが自分をしっかり持ってて、自分がピアノ・バーで働いて ることも、ちゃんと認識してるのかな。
女B:つまり、ハマってなくって?
ひ:そうそう。自分の意志で選んで、自分がやりたいからやってる。オレは 個人的に、ピアノ・バーやって、昼間遊んで、ていう生活でもいいと思う の。どうして東京でやって怒られないのに、NYでやったら駄目かって話で しょ? ただ現実には、自分でやってることをわかってやってる人と、わか らずに何となくフラフラっていうタイプといると思うけど。
男:流されてるタイプ?
ひ:そう。それがどういう%かなあーって話。わかんないかな?なかなかむ ずかしいけど。パッと見た感じでさあ。
女A:でも、イヤイヤやってる子はいないよね? イヤイヤやってる?(と女 Bに)
女B:うん。
女A:でも、続いてるじゃん。
女B:っていうか、私は慣れた。慣れでカバーされてる。
男:仕方ないっていうか、諦めも半分あるんでしょ?
女B:うん、自分で割り切ってるから。
ひ:それって自分でその状況を覚悟できてるわけじゃない。でも、オレが言 いたいのは、この世界にはまっちゃって、抜けたいんだけど抜けられないっ ていうタイプの人。外から見るとね、不健康な世界じゃないかっていう気が するわけ。ピアノ・バーで働くと、非常にパターンにはまりやすい生活にな りがちじゃない?
男:それは、夜型生活ってこと?
ひ:うん。オレ、NYっていう入れ物はどうでもいいっていう考え方なんだけ ど、一般的に日本にいる日本人から見た場合、NYにいて夜働いて、昼間ずっ と寝てて、それで夕方頃起き上がって、仕事の準備して、仕事行って、日本 人の相手して。じゃあ、何でこの人NYにいるんだろってふうに思うじゃな い。
3人:うん、思うだろうね。
ひ:その深みにハマっちゃいがちじゃないかな、っていう思いがオレにはあ るのよ、外側から見ると。
男:でも、別に日本で出来ることをNYでやってもいいんじゃないかな。
ひ:そう、そこにね、まだギャップがあるわけ。古い世代とオレたちと。 だってさあ、店に来る駐在員のオヤジとかが働いてる子に「こんなとこで何 やってんだ」って言うじゃない。ってことは、何やってんだって言うような 商売だと思ってるんでしょ。自分たちが来るにもかかわらず。NYって結構” アメリカン・ドリーム”じゃない。なんと言っても”ニューヨーク”じゃな い。そういう現実とイメージとのギャップがあるでしょ。その辺の矛盾を しっかり理解してる子ってどのくらいいるのかな。
3人:うーん。
ひ:むずかしいかな。
男:でも、NYの水商売の方が楽じゃない? 日本の水商売に比べると。
ひ:そりゃ、そうなんだけどさ。
女A:NYじゃなきゃやらない子はいっぱいいるよね?
女B:うん、私、日本の水商売知らないけど、私から見て日本の方がもっと ドロドロしてる。あと、昔言われてたより、最近のほうがまだ何かしなが らっていう子が多いんじゃないの?
男:目的意識があって、水商売してる。
女B:まあ、私は昔を知らないけど、噂だけだけど。
ひ:まあ、最近は割り切ってるから。
女A:割り切ってる人、多い。あと、自分の仕事として完璧に認めてる人。
ひ:なるほどね、そりゃ、いい傾向だね。やっぱし、日本の方が水商売ドロ ドロしてるの?
女A:うん、ドロドロしてる。
男:上下関係厳しいしね。
ひ:日本の人たちが持ってる水商売のイメージってドロドロだよね?
男:うん、それは当たってると思う。
ひ:でも入れ物はNYじゃない? あのドロドロがNYにあるのかと思うとさ、 そのギャップが一段とすごく感じるわけよ。でも、実際は日本なんかより比 較的サバサバしてるんでしょ?
男:本当にアルバイトって感じ。日本でマクドナルドで働くのと同じよう に。お客獲らなきゃいけないと思ってないし。
女A:”お客さん来ても来なくてもカンケーないし”みたいな。
女B:日本ってもっとプレッシャー大きいの?
女A:うん、プレッシャー大きいよ。
男:だって、同伴グラフとか、売り上げグラフとかガンガンやられて、指名 とかも付かないと、本当にぽつんっと残されて、”あんた、ヘルプ行って、 仕方ないから”とか。すごい上からガンガン来るよ。
女A:そう、お姉さんたちに気に入られないと席に着けてもらえないとか。
男:そうそうそう、派閥あるしね。
女B:こわいー。
ひ:そういうのがあるお店って、こっちにもあるの?
女A:NYで?
ひ:そういう噂って聞いたことある?
女A:うん、少なーいけどある。
ひ:一部?
女A:うん。XXとか。
男:あー、あそこそうなんだ。
女A:うん。お局様多いんだよ、あそこ。日本でもやってて、NYでも長いか ら、ある意味プロ。だから、お姉さんのお客獲っちゃおうものなら、もうム チャクチャ恐いらしい。
ひ:あーそう。そういうプロの人たちって、完全にもう普通の人間が働くよ うにピアノ・バーで働いてるんだね。
女B:私はこれだけの給料を貰ってるから、これだけの仕事をするってい う。
ひ:その人たちのバックグラウンドって何なんだろう? どういう経緯でこ こに来たんだろう。
男:でも一番最初はやっぱり学生で来たんだと思う。
ひ:その人たちの世代って何歳ぐらいなの? 30前半とか?
女A:そんなぐらい。うん、30代ぐらい。みんな、大概、日本がバブルの 時、日本で腰掛けホステスやってて、ホントそれこそ泡のようにお金貰える じゃない? ちょっと笑顔振りまいただけで、チップをガ−っと貰って。人 の金でアメリカに遊ぶつもりで来て、別に勉強する気なくって、ステイタス のこととかも全然考えてないから3ヵ月で来て、そのままビザをオーバーし て、でもNYが好きだからそのままいるみたいな感じで、6年、7年、8年。 まあ、水商売しかできないけど、それで6年間十分生活できちゃったし。
男:でも、先は恐いよね? だってそのまま、ママとかチーママになれてお 店に残れるとは限らないしね。
ひ:うん。だって会社と同じでいつか退職があるわけでじゃない。退職した 後、どこ行っちゃうんだろう? 日本に帰っちゃうのかな?
                      つづく
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『VOICE』

@投書『王様ビルディング』
 ”New York is the top of the city in the world! Huh!"
 デリのおじさんが品出しをしながらラジオのアナウンサーの言葉を皮肉混 じりにくり返す。そうだ。そういやここは世界中の富と名声が集まる街だ。 忘れてた。
 NYでトップというと私が何を思い出すかというと、単純だがエンパイアス テートビルだ。これより背の高いビルは他にもあるけれど、ごみごみした 34丁目の真ん中に建っているところはまるで群集の中にいる王様のようだ (これまた勝手な意見だが王子様はクライスラービルだと思う)。昔、日本 からここに来てJFKからマンハッタンへ向かうタクシーの中から初めてエンパ イアを見た時、”来たのう”という実感がわいたものだ。
 その王様のお膝元で生活に追われて暮らしているうちに”カッコいいNY” という 自分の中にあったイメージが崩れてきた。そんな時の事だ。
 私は冬の日曜日の夕方、ダウンタウン行きのバスに乗っていた。その日は 友だちがつかまらなくて折角の休日を独りで過ごしていた。”な〜んかつま んないな〜”という思いでふと窓の外を見ると、薄暗くなった空にエンパイ アステートビルディングだけが夕日を浴びて冷たく光っていた。その時、自 分が得体の知れな い大きなものに屈服した気がしてきた。”畜生、、、なん か奴隷みたいな気分だ”。王様に見おろされながら私は急にあの事件を思い 出した。日曜日の夕方にエンパイアの屋上で銃を乱射して自分も死んじゃっ た男の事だ。なんでも彼は借金を抱えてにっちもさっちもいかなくなった 末、事件を起こしたらしい。冬の夕方、私は想像の中でその”彼”と行動を 共にした。ビルのエレベーターを上って屋上に上がり、王様と謁見を果たし た彼はそこでやおら銃を撃ち始めるのだ。王様とそのとりまきに。そして最 後は自分に。
 普段はおじいさんのような優しい王様にしか見えないビルなのに孤独がそ うさせたのか、あんな非情な姿に見えた事は無かった。追い詰められた犯人 が見たのも私と同じで、自分が卑小な奴隷に思えたのかも知れない。
 、、、しかし、こういう事をする人はどうして関係のない人を殺すのだろ う。相手が違うだろう。相手が。
  敵は人々を押さえ付ける見えない王様なのに。
                       修
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『今週の歌』

「かみさんが せっかくいない 大切な
          ときを仕事に 使うかオレは ひろ」

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「週刊Nuts」編集部


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