2000年7月4日号(No.322)
目次
*『今週の問題』
*『日本の問題』
*『VOICE』
・投書『おじさん・後編』
*『今週の歌』
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『今週の問題』
このテーマは本来「日本の問題」コーナーで取り上げるべきなのだが、そ
のあまりの巨大さのため、ここで取り上げることにした。名付けて「今ボ
ク、ニューヨークに住んでるんです」の問題である。
まず最初にその概要について簡単に説明しておく。
私が今から語ろうとしているのは、私たちニューヨークに住む日本人が日
本に一時帰国し、その際に他人に対して「今ボク、ニューヨークに住んでる
んです」と発表する瞬間の心模様、もっと具体的に言えば「読み」「計算」
「期待」「自慢」「ナンパ心」「恥じらい」「躊躇」などについてである。
つまり、自分がニューヨークに住んでいるという事実を在日日本人たちに対
してプレゼンする際に、その脳裏を駆け抜けるグヒヒ感あるいはトホホ感を
みんなで考えてみたいのだ。迷惑ですか。
ほら、日本で「実はニューヨークに住んでるんです」って発表する場合の
相手のリアクションってあるじゃない。「すご〜い」とか「へえ〜」とか
「ふ〜ん」とか。私たちは心のどこかの部分でそのリアクションを待ってた
りする。しないか? 絶対するだろ。そうに決まっている。
まあとりあえず、私がこの問題を取り上げる原因となった、先日の日本で
の出来事をまずは紹介することにしよう。
私はそのとき、正確には6月19日(月)の夕方、新宿の紀伊國屋書店に
いた。目的は当然「本買い」。日本に一時帰国する際の醍醐味のひとつだ。
新宿の紀伊國屋に行ったことのある人はご存知かと思うが、あそこの2階
ではよくコンピューター学校の勧誘みたいなものが行なわれている。私が
行ったときも、若いおねえさんが3人ぐらいで通り過ぎる人たちに「いかが
ですかぁ〜」と声をかけていた。
私は、自慢ではないが、そういう勧誘に対して弱い体質を持ってこの世に
生まれてきた。どうしてもおねえさんたちと目が合ってしまう性格なのであ
る。また、昔から道端でいろんな物を配ってきたこともあって、通行人に無
視される痛みを知っており、そのこともおねえさんたちを邪険に扱えない原
因のひとつなのである。
そのときも私は、彼女たちを正面から見て一番右、文庫本売り場に近い側
に立っていたおねえさんと見事に目が合ってしまった。
「いかがですか。ちょっとご覧になりませんか」
「いや、あの、どうもスイマセン・・・」
私は早足でその場を去った。心の中で「おねえさんゴメンナサイ」とつぶ
やきながら。
文庫本売り場を1周し、歌・詩のところを通過後、私は外国紀行モノの
コーナーにたどり着いた。「なんかニューヨークモノは出てるかな」と本棚
を物色し始めた私は、顔の左サイドに熱い視線を感じた。ふとその方向を見
ると、さっきの「いかがですか。ちょっとご覧になりませんか」のおねえさ
んが私のことをじっと見つめていた。
「さっきから何回も目が合ってますよね」
私に目をそらす隙も与えずに彼女がそう言った。
心を読む女。マインド・リーディング・ウーマン。ここでは彼女のことを
「マリウー」と呼ぶことにしよう(「マインド・リーディング・ウーマン」
のそれぞれの最初の文字を取ったわけね)。
私が目合い男(なんじゃそれは)であることを知りながらの「さっきから
何回も目が合ってますよね」なのか。もしかしたら、私の目配りに目合い男
体質であることが表われているのかもしれない。そこを見逃さなかったのか
マリウー。すごいなマリウー。感動だマリウー。
それにいきなり「さっきから何回も目が合ってますよね」か。普通は言え
んぞそんなセリフ。ナンパじゃないんだから。道端で会った男から突然
「さっきから何回も目が合ってるよね」とか言われたら、マリウー、キミ
だって「なに言ってんだ、このカンチョー野郎」とか思うだろ。でも奇妙な
ことに女側から「さっきから何回も目が合ってますよね」と言われたら、男
どもはまんざらでもないんだなこれが。その辺が勧誘のプロのテクニックと
言ったところか。女であることを最大限に生かした攻略法だ。
そんなことはいいとして、私は彼女の攻撃に「え? いや、その
〜・・・」とただモジモジするだけだった。
確かに私は勧誘に対して弱い体質を有している。しかし、普通はモジモジ
したりはしない。このとき私の心の中には、自分の決断力を鈍らすなにかが
存在していたのである。それは一体なんなのか。
ここで話がズレる。
私はいつからか、他人に「ボク、ニューヨークに住んでるんです」と発表
することを嫌悪する人間になっていた。
詳細は覚えてないのだが、私がニューヨーク初心者(ニューヨークに住み
始めて間もない人)の頃、日本においてその「ボク、ニューヨークに住んで
るんです」を必要以上に他人に対して連発したため、ある種の反撃を食らっ
てしまい、自己嫌悪に陥ったのではないかと私は読んでいる。要するに
ニューヨークに住んでいることを自慢したがってる自分に腹が立ったのだろ
う。その後遺症で、私は「ボク、ニューヨークに住んでるんです」とは簡単
に言えない人間になってしまったのである。
数年前に日本に帰ったとき、今回と同じように勧誘のおねえさんに声をか
けられたような気がする。当然私は、「いや、ボク、ニューヨークに住んで
るんです」とか言ったのだろう。そのときおねえさんがどうリアクションし
たのかは定かではないが、私が思うに「それを先に言えよおめえ」というリ
スポンスを食らったに違いない(おねえさんが具体的にそう言ったわけじゃ
なくて、そんな態度だったてことね)。「それを先に言えよおめえ」リスポ
ンスに深く傷ついた私は、それ以来、ニューヨーク在住の事実について語ら
なくなったそうな。よくわからんけど。
ニューヨーク初心者、あるいはニューヨーク素人(しろうと)という言い
方もあるが、彼らは日本に一時帰国すると、人が聞いてもいないのに「オレ
今、ニューヨークに住んでんだよね」と言いたがる。私もそうだった。みん
なに自分がニューヨークに住んでることをわかって欲しくて、思わず渋谷の
交差点のド真ん中で「オレ、ニューヨークに住んでんだぞ〜!」と叫びそう
になったりしたなあ。
自分がニューヨークに住んでるという事実をうまくハンドルできないので
ある。つまり自慢したいわけよ。そんな幼児期を経て、私たちは次第にその
事実との付き合い方を覚え、必要以上にニューヨーク在住について語らなく
なるのだ。でも中には、何年経っても「オレ、ニューヨークに住んでんだけ
どさ」とか言いくさるボケもいるがね。
ここで話は私のモジモジ場面に戻る。
以上のような理由で、私はもともとの虚弱体質と、過去の心の傷もあり、
勧誘のおねえさんに対して一種の恐怖心を持っている。それが私をモジモジ
させたのだ。
「このおねえさんと話してはいけないのよ。そしたらいつかニューヨーク
に住んでることを白状しなくちゃいけなくなるのよ。それはダメ。それは
ダメよひろぴー」
私が自分にそう言い聞かせた。
しかし相手はうまかった。
「コンピューターとか使われてますか」
「え? あ、えーと、はい」
「PCですか。それともマック?」
「あの〜、一応、両方」
「両方使えるんですか。すご〜い」
私は完全に彼女の術中にはまっていた。それはまるでアリ地獄に落ちてい
くアリさんのようだった。最初の質問に答えたが最後、ズルズルとカンバ
セーションという名のブラックホールに引きずり込まれて行くのであった。
その辺もやっぱテクニックよね。質問1が済んだら2、2が済んだら3、
そしてときどき「すご〜い」と好意的な感情を表現して見せる。私はもう逃
げられなかった。
「これ、どうぞ」
彼女からパンフレットを渡されてしまった私。渡されてないで逃げろよ。
それはコンピューター学校のパンフレットだった。そのコンピューター学
校の生徒を増やすこと。それが彼女のゴールなのである。
その学校はどう考えても東京かその近辺あるのだろう。だったらニュー
ヨークに住んでる私がパンフレットなんかもらってもしょーがない。「ボク、
ニューヨークに住んでるからちょっとね」とか言えちゃえば問題ないの
だが、それが言えない悲しさよ。
「どんなソフト使われてるんです? ワードとか、エクセルとか?」
「あ、はい」
「いろんなもの使いこなしてらっしゃるんですね」
「いや、あの〜・・・」
私はどんどん深みにはまって行くのであった。
つづく。
ひろ
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『日本の問題』
皆さんは日本に帰る際、どこで最初に「ああ、日本に帰ってきたんだな」
と感じますか。あるいは何を見たときに「アイ・アム・イン・ジャパン」と
思いますか。
いろんな説があると思う。「やっぱり成田かな」という人が多いような気
がする。ではその瞬間が成田空港であるとした場合、成田の何を見て「あ
あ、日本に帰ってきたんだな」と思うのだろう。あのパスポートにスタンプ
を押してもらうための列か。そのあとの荷物取り場か。
「飛行機から見える田んぼの風景」という説もある。でもこれは窓際に
座ってないと見れんからな。
「渋谷のハチ公前」とか「新宿アルタ前」などの説もあるかもしれない
が、それらはあまりにもデープに入り過ぎている。私がここで問題にしたい
のは(別に問題というほどのもんじゃないけどね)、そんなデープ・インサ
イドじゃなくて、ホントに日本に入りかけの部分での「ああ、日本よね」地
点あるいはモノである。
私は5月に日本に帰ったとき、この点、つまり「どこで最初に日本を感じ
るか」に注目しながらJFK空港を発ったのである。ちなみにそのときは日系の
航空会社を利用した。
これまでの経験によると「成田から京成スカイライナーで都心に向かう途
中の風景がクサイな」という思いがあった。特に荒川を渡ってすぐの風景。
下町の路地を自転車に乗った奥さんが通り過ぎたりして、またこれが前のカ
ゴにスーパーの買い物袋かなんかが入ってて、その袋からネギとかがニョ
キっと出てたりするんだよなあー。あー、まいった。
でも、先にも書いたように、それではあまりにもデープ過ぎる。もっと前
の時点での「ああ、日本よね」感の出現はなかったのか。
日系の航空会社を使ったから、当然スッちゃん(スチュワーデス)たちは
日本人である。彼女たちのサービスや身のこなしから日本を感じないことも
ないが、いまいちインパクトにかけるのも事実だった。
機内食に関しても、いつも日本食を食ってる私には別に違和感はなかっ
た。スナックに「OTSUMAMI」と書かれた柿の種の入った袋を渡されたが、
柿の種だってニューヨークでしょっちゅう食ってるから余裕である。
また、機内で流してる映画にしても音楽にしても、それほどのインパクト
はなかった。
「一体どこで日本を感じるのか。やはり成田まで待たねばならないの
か」。私は焦った。なにを焦ってたのかよくわからんが。
私はそんなことを考えながら、機内での最初のトイレに立った。目的は
「大」だった。
「ヨッコラショ」と便座に腰かけた私は、「ふ〜」と大きく息をはいた。
そしてふとトイレの壁の部分を見たのである。
そのときである。私の脳裏を「これだわ」という思いが駆け抜けたのは。
そこには壁に埋め込まれたトイレット・ペーパーがあった。それは普通の
トイレット・ペーパーだったのだが、ひとつだけ違うのはその切れ端がきれ
いに三角に折ってあることだった。
「ディス・イズ・ジャパン」。これこそ日本だった。
日本にお住まいの方々のためにちょっと補足しておくが、私の知るかぎり
ではトイレット・ペーパーの三角折りは日本に強く見られる文化である。ア
メリカではほとんど見ない。それと、トイレット・ペーパーのホルダーへの
はめ方にも両国の間には大きな違いが見られるし、トイレのドアの上下の空
きスペースについても明確な違いがあるのだが、これらのことについては別
の機会にお話しするつもりだ。でも、日本とアメリカは、やっぱりウンコに
関する罪悪感というか、ウンコすることに対しての罪の意識っていうのがベ
リー・ディファレントということだろうか。
ひとりトイレの中で踏ん張りながら、私は自分自身が日本の領域に侵入し
つつあることを痛感していた。
これもつづく。
ひろ
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『VOCIE』
@投書『おじさん・後編』
そんなこんなで日本人のイメージは変わってくると思うよ。Asianのイメー
ジを変えるのはほぼ不可能だろうな。いくらChinatownに住んでいる人全員
をイタリアに1年住ませてもChinatownは変わらないだろうし、Chinatown
が変わるとAsianのイメージが寂しくなると思うけどChinatownがある限り
今のAsianのイメージはしばらく安定し続けるだろうな。でもどうして
Chinatownにいる人達はK-Mart系の服があんなに好きなんだろう? そう
いうなぞはNutsの人にまかせよう。とにかく止めよう。だらだら書きすぎ
た。でもやっぱりもう少し続ける。若いやつら、これ(投書)はなかなかい
いぞ。気分がすっきりする(書くのは面倒だが)。これが載せられるかどう
かわからないけど、とにかくこれは言いたい放題だ。"Nutsを書いているオジ
さんの憂鬱"から始まって "今日のキーワード:日本人のイメージ"なんて言っ
ていたが、これはただ憂さ晴らしだ。文章、文体、話の筋なんて知った事
か。Nutsのまわし者ではないので強くはすすめないけど、キミも何か言って
みたら?ぐちとか悪口が手っとり早いだろうけど、できるだけすっきりした
ものに仕上げよう、と注文もつけておく。おわり。
匿名希望
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『今週の歌』〜事務連絡歌〜
「発行が とびとびになって ゴメンナサイ
7月からは ちゃんと出します ひろ」
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