2001年10月23日号(No.372)
目次
*『「お仕事キープ」にしぼる』
*『テロに負けないために』
*『価格いのち回転いのち』
*『たわごとコラム』
*『今週の歌』
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『「お仕事キープ」にしぼる』
今週も再びテロ事件のお土産問題話である。まあ、しばらくはそうなるだ
ろう。問題がデカイからね。
先週は、今回のテロ事件の影響で出現した諸問題についてお話しした。
どれも厄介な問題である。
ただ、Nutsの力は限られている。全部相手にするわけにはいかない。
そこでNutsでは、やることを「NYJJ失業問題」だけにしぼることにした。
要するにニューヨークに住む日本人が「お仕事キープ」できるような作戦を
練るのである。特に旅行業界とレストラン業界支援に力を入れたい。
「新しい業界を立ち上げて、そこに仕事を創る」ということはいまはやら
ない。やってる時間がないのである。とりあえず現存の「お仕事」をなんと
かキープすることをゴールとしたい。
しばらくの間は、行方不明者探し等に集中しようかと思ったが、先週「週
刊Nuts」を配って回った際にその傷の深さに気がついたのである。日本食レ
ストランにお客さんが入ってないのだ。それもシャレにならないほど少ない
らしい。
ピアノ・バーも同様にヤバイそうだ。すでにつぶれたところも出ていると
聞く。その店で働いてた子たちは、いまどうしているのだろう。
また、ニューヨークを訪れる日本人観光客数も8割減という話を聞いた。
8割減ということは、これまで社員が10人いた企業が8人を首にしなけれ
ばならないということだ。これは完全に非常事態である。
最近つくづく思うのだが、今回のような問題に直面したとき、アメリカ人
に比べると、日本人は弱い。ただ、たじろぐだけで、流れに身をまかせてし
まいがちだ。それは私にも言える。
関西大震災などの本を読むと、「日本人もすごいよなあ」と思う。でも、
アメリカ人はそれ以上にすごい。事件当日の正午過ぎには献血のための列が
数百メートルの長さになっていたという話を聞いたとき、私は「こいつらに
はかなわない」と本気で思った。アメリカをあまり褒めない私でさえ、そう
思ったのである。
アメリカ人のすごいところは、ひとりひとりが状況に立ち向かおうとする
点だ。それは驚愕に値する。テロ事件直後、ニューヨークに住む日本人の中
で「ボランティアしたくても、するところがない」という不満が出ていた
頃、現場から引き上げる消防隊員にひとりでクッキーを配っているアメリカ
人の少女をテレビで見たとき、私は日本人とアメリカ人の実力の差をあらた
めて痛感した。
「よくもまあ日本はこんな国と戦争したもんだ。勝てるわけねえじゃねえ
か」とも思った。
そのすごさは政治の姿勢にも表われている。ニューヨーク市や各航空会社
への支援策、ニューヨークへの観光キャンペーン、そして先日開催された
ジョブフェアなどには、「テロなんかに負けてられっかよ」という政治の意
志が感じられる。
それはジュリアーニ市長を見てもよくわかる。
私は基本的に彼が嫌いである。それはいまでも変わらない。彼はマイノリ
ティには冷たい人間だ。
ただ、彼の危機管理能力はすさまじいとしか言いようがない。こういうと
きのために生まれてきた男と言ってもいいかもしれない。
彼の発言や政策には、闘争心というか、先に書いた「テロなんかに負けて
られっかよ」魂というか、それらの意志がクリアーに感じられるのである。
そしてそんな彼をニューヨーカーたちは強く支持しているのだ。
私たち日本人も、ぼーっとしているだけでは問題は解決しないのである。
何か手を打たなくてはならない。「仕方ない」ではダメなのだ。
今週は、アメリカ人たちの発言や行動を参考にしながら、そこのところを
じっくり考えてみたい。
ひろ
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『テロに負けないために』
テレビなどを見ている際に、がんばっているアメリカ人のコメントとして
頻繁に出てくるのが「テロに負けないために」という言葉である。政治家た
ちもよく口にするセリフだ。
テロに負けないために飛行機に乗る。テロに負けないために食事に行く。
テロに負けないために店を閉めない。テロに負けないために普通の生活をす
る。
一般の人たちがテロと物理的に戦うのはなかなかむずかしい。「オレも鉄
砲買って・・・」というわけには行かないのである。
でも、テロと勝負する方法はいくらでもある。テロの目的は通常、普通の
生活を混乱に陥れることだからして、混乱しなければこちらの勝ちというこ
とになる。
また、飛行機に乗らなくなったり、レストランに行かなくなれば、経済的
な悪影響が出る。そのことが新たな失業を生み、景気はどんどん沈下してい
くわけである。
テロリストたちは、そうなることを望んでいる。もしそうなったらテロの
勝ちになる。だからこそ、普通に生活しなければならないのだ。
そこをわかりやすく表現したのが上記の「テロに負けないために飛行機に
乗る」等である。一般の人たちがテロを戦う方法を具体的に提示したわけ
だ。
テロへの恐れはだれにだってある。ただ、恐れているばかりではテロリス
ト側の思うツボだ。だからこそ普通の生活に戻らなくてはならない。「テロ
に負けないために」も・・・
アメリカ人はこういうことが非常にうまい。問題を一般の生活レベルまで
分解して、人々が関与できるサイズにするのである。そうすることによっ
て、人々に当事者感覚を持ってもらい、ひとりひとりの問題に対するファイ
ティング・スピリットをかき立てるのだ。
ただ、私自身は「テロに負けないために」と言われても、イマイチしっく
り来ないのである。なんかこっぱずかしいのだ。テレビカメラに向かって
「テロに負けないために食事に行くんです」と明かるく言えるような人間に
は死んでもなりたくない、という思いがある。
でも、いまはこっぱずかしいとか言ってる場合ではない。「テロに負けな
いために」は、ニューヨークの日本人コミュニティにとっても非常に有効な
キーワードになるはずである。
テロに負けないために日本食レストランに行く。テロに負けないためにビ
アノ・バーに行く。テロに負けないために旅行に行く。テロに負けないため
に日本に里帰りする。
そうやってお金を流通させることによって日本人コミュニティ内の仕事の
数を確保する。つまり「お仕事キープ」案を実現するのである。
ところで、自分で言うのもなんだが、「テロに負けないためにビアノ・
バーに行く」というのはなかなかの名言だな。
というわけで、私は腹をくくった。はずかしくても「テロに負けないため
に」と言い続けるしかないのである。
でも、よく考えてみれば、私だってテロは憎い。テロリストたちに「へへ
へ」と笑われてしまうのは絶対にイヤである。できればやつらにカンチョー
したいぐらいだ。カンチョーぐらいでいいのかという問題もあるが。
もしかしたら、「テロに負けないために」の「負けないために」の部分
が、「あたし、負けないわ」的でちょっとクサイのかもしれない。だったら
自分の好きなように変えることもできる。
私の場合は、やはり「テロにカンチョーするために」になるだろう。これ
でなんとなくしっくり来る。
テロにカンチョーするためにサッポロにメシ食いに行く。テロにカン
チョーするためにPANYAにパン買いに行く。テロにカンチョーするために
Nutsを出し続ける。
「負けないために」がイヤな人がいたら、適当に変えていただきたい。
「テロににぎりっぺするために」でもいいし、「テロにバリウム飲ませて白
いウンコさせるために」でもいい。私の例はどうして下ネタに集中するのだ
ろう。ナゾだな。
今回不幸なことにテロ事件が起こった。そのせいで多くの日本人が職を失
い、日本に帰国、あるいはこれから帰国しようとしている。
このまま引き下がったら、私たちの負けだ。なんでテロごときのせいで仕
事をなくしたり、帰りたくもないのに日本に帰国しなければならないのか。
このまま行けば、彼らの勝ちになる。相手にカンチョーされっぱなしってわ
けだ。
今度は私たちがカンチョーする番である。テロリストたちを見つけだして
カンチョーするのは、とりあえずCIAやFBIに任せるとして、私たちは私たち
にできることでカンチョーし返さなければならない。
「テロに負けないために」。私の中では「テロにカンチョーするため
に」。その言葉を旗印として、私たちニューヨークに住む日本人も、アメリ
カ人と同じようにこれからもっともっと、もがき戦うべきだと思う。
そんなわけで、「テロに負けないために」である。よろしく。
ひろ
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『価格いのち回転いのち』
アメリカン航空が近々、「NYーロンドン往復99ドル」というディールを
出すらしい。
ニューヨークからロンドンに行って戻って99ドルである。ニューヨーク
の高級寿司屋のカウンターに座って気合入れて食べたら、簡単にひとり
100ドルは行く。それよりもNYーロンドンの往復チケットのほうが安いと
いうことだ。
彼らの狙いは明らかだ。「とりあえず皆さんに飛行機に乗ってもらいま
しょう」。それしかない。
事件前に比べると、各航空会社のセキュリティは格段に強化された。それ
は一般の人たちもわかっている。
しかし、飛行機に乗る人の数は相変わらず少ない。乗ることに対して、
いまだに精神的抵抗があるからだ。
安全になったのはわかるのだが、まだなんとなく恐い。そう感じている人
がいまアメリカには山のようにいる。それが、現在の航空不況の原因となっ
ているわけだ。
逆に言うと、そういう人たちが飛行機に乗り始めれば、状況は好転する。
まず大切なのは、できるだけ多くの人たちに飛行機に乗ってもらい、安全で
あることを身体でわかってもらうことなのである。
そのためには、値段を下げるのが一番だ。それが「NYーロンドン往復99
ドル」。このプライスは、なかなかのインパクトである。
このアメリカン航空の話を聞いたとき、私は「やっぱその方法しかないか
な」と思った。
なによりもまず値段を下げて、回転をよくするのである。飛行機の場合
は、すんげえ安くして、できるだけ多くの人たちに乗ってもらう。一応ここ
では、それを「回転をよくする」と表現する。
いまニューヨークの日本人社会にとっての最大の問題は、人々がこもりが
ちになっていることである。人が飛行機チケットを買わない。人が店に来な
い。日本から観光客が来ない。それらが失業や倒産を引き起こしているの
だ。
この状況を最終的に打破するのは「価格」しかないと私は思う。
先に書いた「テロに負けないために」や「がんばれニューヨーク」などの
コンセプトも重要である。そう励ますことによって、人々を前に前にと押し
出すのである。
でも人間、やはり「金」だ。「金」はなによりも具体的だし、訴える力も
強い。
いま、Nutsがやろうとしているのは、ニューヨークに住む日本人のお仕事
をなんとかキープすることである。「お仕事キープ」のためには、まず人々
が飛行機チケットを買ったり、レストランやピアノ・バーに行ったりしなけ
ればならない。でないと、金が流通しないのである。
「テロに負けないために」は、そのための精神的な理由づけだ。それぞれ
のファイティング・スピリットに火をつけ、人々を外に押し出すのである。
それに対して「価格」のほうは、金銭的な理由づけである。人間、安けれ
ばだれだって嬉しい。通常より異常に安ければ、だれだって魅力を感じるは
ずだ。
それらのアプローチによって、客の回転をよくする。できるだけ多くの人
たちが飛行機に乗るようにし、できるだけ多くの人がレストラン等に行くよ
うにするのである。
現在、ニューヨークの日本人社会に渦巻く「失業・倒産」の嵐に立ち向か
うには、精神的&金銭的アプローチが大切である。でないと、この問題は解
決しません。
具体案はいろいろある。詳細は来週お話しすることにしよう。
ひろ
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『たわごとコラム』
ニューヨークに来て9年半になるが、ここ数年、毎年続けていたことがあ
る。
年の始め、具体的には1月の第1週あるいは第2週に、ワールドトレード
センターの屋上に行って、数時間考えごとをするのである。今年は何をする
かとか、去年の反省とか。
必ず北側の窓際に座って、左手にメモ帳、右手にペンを持って物を考え
る。視線は摩天楼。エンパイアーが正面に見える。
そんなことをここ数年繰り返してきた。
でも今年だけは、ワートレではなく、エンパイアーだった。ついでにその
日はあいにくの雪で、エンパイアーの展望台にいた客は私だけ。いつもなら
見えるはずのワートレも、雪のせいで見えなかった。
なぜワートレではなく、エンパイアーになったのか、自分でもよくわから
ない。エンパイアーの屋上に行ったことがなかったというのも理由のひとつ
かもしれないが、それはこれまでも同じで、別に去年エンパイアーに行って
もよかったのである。
でも、よりによって、今年はエンパイアーに行ってしまった。そして9月
11日、ワートレは地上から永遠に消え去ったのである。
私とワートレの関係は、1年に数時間だけだった。別にワートレが好き
だったわけもないし、愛着があったわけでもない。ただ眺めがよかったから
使っていただけだ。
もともとあまり好きなビルではなかった。高すぎて気味が悪かったのであ
る。それでも毎年きちんと登ぼっていたのだから不思議なものだ。今年を除
いては・・・
なぜ今年はワートレにしなかったのか。
しょーもないことだが、自分の中でワートレは、そういう残り方をしてい
くのだろう。
ひろ
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『今週の歌』
「ワートレの 残骸見に行く 観光客
悲しいような 嬉しいような ひろ」
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