2002年1月22日号(No.383)
目次
*『日本人観光客が消えた2』
*『ニューヨーク引き潮現象』
*『なぜその写真を選んだのか』
*『自分のことは棚に上げて1』
*『今週の歌』
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『日本人観光客が消えた2』
「日本人観光客が消えた」問題について、早速日本の読者からお便りをい
ただいた。ありがとうございます。
いきなりご紹介することにする。ネタはニューヨークではなく、沖縄であ
る。
* * * *
はじめまして。うんこ話をいつも楽しみにしております、とみと申しま
す。NYほどシリアスではないのは分かりますが、私が住む沖縄も、廻りま
わってテロの影響で観光客が激減しております。
何故なら基地があるから。
いや、9/11直後は、こちらにも何らかのテロがあるかもしれない、と
思ったんですが、別に何か変わるわけでもなく、しかし気が付いたら、各基
地のゲートに保安強化、テロ対策ゆうて日本の警官が詰め所作って立ってい
ました(まだ居ます、本人たちも大変だろうけど)。
これはいつ見ても変。兵庫県警やら福岡県警やらのパトカーと警官がわざ
わざ来て、警備してるんですから。よけいなお役人の責任回避だなー、と思
います(何かあったらちゃんと対策はしてた、という)。
でもそれを見た観光客はやっぱり危ないんだ、と思いますよね。それより
海兵隊のやらかす暴行や飲酒事故、盗難のほうが多いのに。でもそとから来
る人はそう思わないから、そういうことを見ての風評もあると思います。
また観光客が減って、リゾートホテルの売上が落ちてそこに納品している
業者の売上も落ちてシーツのクリーニング会社が潰れたり酒類卸が潰れたり
してます。
「風が吹けば桶屋が儲かる」を地で行ってるなあ、と。
まあそんな中、沖縄をキャンセルした観光客はよそに流れているわけで、
おなじ地場産業が観光業しかない北海道とタイアップしたりして北と南で交
流したり、いろいろ頑張っています。
長々と失礼致しました。また配信、楽しみにしております。
とみ
* * * *
というわけらしい。
おそらくニューヨークと沖縄で起きた「日本人観光客が消えた」現象に関
しては、共通する部分がいくつかあると思う。その辺も探ってみたいので、
ニューヨークネタだけに限らず、沖縄ネタもドシドシお送りください
(nynuts@rcn.comまで)。
来週もいただいた投書をご紹介する予定だ。
お楽しみに。
ひろ
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ニューヨーク引き潮現象
日本に住む人たちのニューヨークに対する関心度が、だんだん低くなって
きていると私は見ている。最近特にそのことを感じる。
Nutsでは、「Nutsジャーナル」というメールマガジンを月曜から金曜まで
週5回発行している(結構お休みするけど)。内容は、日本に届かないよう
なニューヨークのローカルニュースが中心。市の政策とか殺人事件がどうの
こうのとか飛行機から死体が降ってきたとか、そういうコテコテ情報を発信
している(購読したい方はwww.nynuts.comからどうぞ。当然無料です)。
その「Nutsジャーナル」の購読者が最近、急激に減少しているのである。
ここ数年、購読者数は1900あたりをいつもウロウロしていた。増えも
せず減りもせず、という感じだった。読者はおそらく日本に住む人が多いは
ずだ。「日本に住んでてもニューヨークの情報ほし〜い」という人がマジョ
リティだと思う。
それが12月頃から購読者数が急に下がり始め、週10人ぐらのペースで
減っているのである。
私は胸に手を当てて考えてみた。「最近、内容がつまんない?」。そんな
ことはなかった。以前と大して違いはない。「まじめに発行してる?」。昔
からまじめに発行してないので、それが原因だとは考えづらい。
では、なぜなのか。
私が考えたシナリオはこうだ。
『以前からニューヨークが大好きなA子さん。現地の情報をGetするために
その手段のひとつとして「Nutsジャーナル」を日本で購読してました。で、
9月のテロ事件が発生。ニューヨークがどうなったのか心配で心配でたまり
ませんでした。その後、炭そ菌事件が起き、再び大騒ぎ。あれから数ヵ月
たって、ニューヨークもだいぶ落ち着いて来たという噂を聞きます。でも、
まだなんとなく恐いのでした。今ニューヨークに行くつもりもありません。
しばらくお預けです。だったら「Nutsジャーナル」を読んでてもしょーがな
いので、とりあえず購読を中止することにしました』
こういうA子さんのような人が意外にいるんじゃないかしら、・・・という
のが私の読みなのだが、いかがだろうか。
テロ事件後、ニューヨークを訪れる日本人観光客数は、例年の80%減と
なった。それだけの日本人が「ニューヨーク」という存在から遠ざかったの
である。またそれは観光レベルだけでなく、「ニューヨークに留学したい」
「ニューヨークに住みたい」などのNYJJ予備軍にも同じような影響が及んで
いると見るほうが妥当だろう。
つまり日本では、ニューヨークへの関心が引き潮状態なのである。
ただ、いつかは上げ潮に戻るだろう。問題は、それが「いつか」というこ
とだ。
日本人観光客やNYJJ予備軍が減ることは、ニューヨークの日本人コミュニ
ティにとっては完全にマイナスに働く。ただでさえマイノリティなのに、こ
れ以上人口が減ってどうすんの。人口が減るということは、マーケットも小
さくなるわけで、そしたらここに存在できる仕事の数も当然減ることにな
る。いいことはひとつもないのである。
この「ニューヨーク引き潮現象」に歯止めをかけるにはどうすればいいの
か。
ま、とりあえずは声を上げ続けることでしょうな。「ニューヨークにい
らっしゃい」とか「ニューヨークはもう元気よ」とか、なんらかのメッセー
ジを日本に送り続けるのである。
送る先は日本のマスコミでも友達でも構わない。みんなで宗教団体のよう
に「こっちゃこい、こっちゃこい」と勧誘するだ。はははははは。
日本は引き潮みたいだから、みんな気合入れていこか。
ひろ
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『なぜその写真を選んだのか』
テロ事件から4ヵ月がたった。
このぐらい時間がたつと、あのとき無意識のうちにやってたことなどが、
だんだんわかってくる。先日、9月11日に撮った写真を整理している際
に、あることに気がついた。
ツインタワーのひとつが崩れ始めたとき、私はそこから3ブロックほど離
れた場所にいた。偶然そこにいたのではなく、取材のために現場に行ったの
である。
1棟目が崩れた直後、白い塵煙がこちらに向かって来るのが見えた。まわ
りの人々は歩いたり走ったりしながら逃げ始めていた。
私はその場でデジカメのシャッターを押し続けた。最終的に塵煙に飲み込
まれるまで、全部で10数枚撮った。
その中に、同じ位置で、同じアングルで撮った7枚の写真があった。逃げ
る人々と、彼らの後ろから迫ってくる塵煙とを撮った写真だった。
私はその中の1枚を、私が編集を担当しているサイト(Nutsじゃないわ
よ)で使った。
なぜその写真を選んだのか。
理由は簡単。その写真が一番大変そうに見えたからだ。「大変」というの
も変な言い方だが、それが一番人間たちが焦ってるように見えたのよね。
今回写真を整理した際に、私はそれら7枚の写真をじっくり見比べてみ
た。
確かに、私が選んだ1枚が一番「事件」らしかった。走って逃げようとし
てる人が何人か写ってるし、塵煙の迫り具合もよかった。
それに比べると、他の6枚はイマイチだった。あまり慌ててるようには見
えないし、歩いてる人間ばかりが写っていた。
と、そのとき私は考えたのである。「どっちが本当の姿なのか」と。
7枚の写真のうちの6枚に「比較的、余裕カマしてた人々」が写ってい
る。多数決でいくなら、そちらのほうが「本当の姿」なのではないのか。
ニュースとすれば、私が選んだ1枚が最も好ましい。一番ニュースらしい
からだ。だれも「塵煙が迫ってきてるにもかかわらず、のんびり歩いて逃げ
る人々」の写真など見たくないのである(このときの情景についてはまた別
の機会に書く予定)。やはりニュース写真とすれば、人々が慌ててないとい
けない。
でも、現実は違ったのである。あのとき、人々は驚くほど冷静だった。
「冷静」という言い方はおかしいかもしれない。「鈍感」と言ったほうがい
いだろう。多くの人が歩いて逃げていた。少なくとも全速力で走ってる人
は、私はひとりも見なかった。
その1枚の写真よりも、残りの6枚のほうが、あのときの現場を忠実に描
写していると私は今思う。しかし、私が使ったのは、6枚のほうではなく、
その1枚だった。
これと同じことが、他のメディアでも起こった可能性が高い。要するに、
一番センセーショナルな1枚、あるいは映像を各メディアが選んだことは間
違いないのである。それがメディアの性(さが)だからだ。
その結果、何が起きたのか。
それぞれが持つ一番センセーショナルなイメージを、メディアが寄ってた
かって世界中に巻き散らし、映像であれば繰り返し繰り返し流し続けること
によって、現実よりも数倍に誇大化された絵を、読者や視聴者の脳に植え付
けたのではないか。
私はそう考えるのである。そして私もその犯人のひとりだと。
「ニューヨークに日本人観光客が帰ってこない」とか言いながら、その原
因を作ったのはてめえじゃねえかという現実。ツライわ。激しく反省しなけ
ればならない。
テロ事件の際の写真や映像に関しては、もっと言いたいことがある。続き
は次回に。
ひろ
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『自分のことは棚に上げて1』
今週が第1回目だからして、ニューヨークの日本語メディアで最近一番目
立ってる書き手を取り上げるのがスジだろう。
Dr. NOVA。ニューヨークの週刊紙「ジャピオン」にコラムを持つ書き手で
ある。おそらく男性だと思うが、I am not sureだ。
氏のコラムは、私が知る限りでは2つ。「Dr. NOVAの小声で怒れ!」と
「珍犬六郎の”ウラ”ニューヨーク犬聞録」である。両方とも毎週掲載され
ている。
最初に言っておくが、毎週コラムを書くということはものすごく大変なこ
となのである。「毎月」とは比べものにならないくらいヘビー。書くパワー
も必要だが、なによりも「ネタの供給」がむずかしい。
そのヘビーな状況にもかかわらず、掲載を続けてることは称賛に値する。
まずは氏に拍手を送りたい。パチパチパチ。
しかしそれは、おもしろくないことのイクスキューズにはならない。そこ
が表現者のツライところよね。オーディエンスは残酷なのよ。
まず「Dr. NOVAの小声で怒れ!」だが、これは最初の切り口の設定が危険
だと思う。
ちなみにこういう怒り系の読み物を業界用語では「プリプリコラム」と呼
ぶ。ウソだけど。
そんなことはどうでもよくて、「Dr. NOVAの小声で怒れ!」のような世の
中の何か(1月11日号では「セールスコール」、18日号では「ヨーグル
ト)に対して怒るコラムというのは、ま、ありがちな企画ではある。取り急
ぎ怒ればいいわけだから、だれにでも書けそうな気がする。シロウトの書き
手や編集者が簡単に手を出しそうなネタだ。
しかし、プリプリコラムをおもしろくするには、実をいうと書くテクニッ
クがかなり必要なのである。
第一に、文というのは、あんまし感情的に書いてしまってはダメだ。読者
がシラケちゃうのよ。ついていけなくて。
だから、できるだけ冷静に淡々と怒るほうが通常おもしろい。腹が立つ原
因を分析し、皮肉をバリバリきかせてネタを転がすのである。日本の書き手
でいえばナンシー関あたりか。
私が見るに、Dr. NOVA氏の怒り方はストレートすぎる。普通に怒っている
のである。読みながら「待て待て」と言いたくなる。
もっとイヤミや皮肉をきかせたほうがいいと私は思う。
それと、取り上げるネタが非常にノーマルだ。ノーマルなのはいいが、そ
れをそのまま書いても読者は「はー、そうですか」としかならない。ノーマ
ルなネタなら、料理方法を工夫する必要がある。でないとおもしろくならな
いのよ。
というわけで、プリプリコラムというのは、最初から書くのがむずかしい
のである。でも、始めたのが運の尽き。大して字数もないスペース(400
字ぐらいか)でおもしろく仕上げるのは大変かと思うが、がんばってほし
い。
3ヵ月あげよう。その間に鍛えなさい。
次に「珍犬六郎の”ウラ”ニューヨーク犬聞録」だが、これには毎週、文
と写真が掲載される。氏はきっと大変に違いない。文だけならまだいいが、
写真付きというのはかなりキツイ。ご苦労さまです。身体に気をつけてくだ
さい。
「珍犬六郎」に関して私が言いたいのはただひとつ、「もっと犬になれ」
ということだ。
タイトルや挿し絵から判断して、このコラムは「犬」の視点で書かれるこ
とになっているはずだ。でも、そのへんがあやふやなのである。中途半端と
言ったほうがいいかもしれない。「犬」になったり「人」になったりするの
だ。
せっかく「犬の視点でニューヨークを見る」という、これまでだれもやっ
たことのなさそうな切り口を設定したというのに、もったいない話だ。犬の
六郎がかわいそうである。もっと活躍させてあげればいいのに。
「珍犬六郎」に関しては、1ヵ月あげよう。その間になんとか六郎を救出
してほしい。
健闘を祈る。
ひろ
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『今週の歌』
「完全に 忘れ去られた Rockaway
旅客機墜落 人種差別? ひろ」
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