2004年4月27日号(No.449)



目次

*『今週の問題』
*『たわごとコラム』
*『今週の歌』
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『今週の問題』

 皆さん、「craigslist(クレッグズリスト)」というサイトをご存知でしょ うか。ちなみにアドレスはwww.craigslist.org。いまニューヨークで最もホッ トなサイトのひとつである。
 そのcraigslistだが、見た目はなんてことはないタダのインターネット掲示 板である。デザインセンスのない人間がとりあえず立ち上げたサイト、という 感じだ。そういう意味では、Nutsのインターネット掲示板「ぶりてんNuts」 (www.nyct.net/~nuts/)に近い。
 ところが、である。いまニューヨークでアパートを探す際に、最も活用され てるのが、このcraigslistなのだ。
 アパートだけではない。仕事探しや「売ります・買います」でもパワー発 揮。ついでにニューヨークだけでなく、アメリカのほとんどの大都市をカバー している(最初サンフランシスコからスタートしたとのこと)。
 実際に見ていただければわかるが、craigslistは恐ろしく原始的なサイトで ある。
 無駄なものは一切なし。デザインも至ってシンプル。まるでインターネット 初期のウェブサイトのようだ。
 なのに、この人気である。毎日膨大な数の情報がポストされるサイトに成長 したのだ。
 craigslistの話を最初に聞いたとき、私はこれまでそういうサイトがなかっ たことにまず驚いた。
 だってそういうサイトだったら、ニューヨークの日本人コミュニティにもす でにいくつかあるわけでしょ。
 アパート探しやモノの売買ができる日本語のインターネット掲示板として は、前記の「ぶりてんNuts」にMedia Japanの「MJ Board」、新しいところで は「add7.net」などがある。
 たしかにcraigslistとは規模が違うが、でも基本的なコンセプトは同じであ る。アパートや売買などの生活情報をポストし、それを見た人がリスポンスす るというシステムだ。
 craigslistがブレイクしたのは、つい最近である。一方の日本語掲示板は、 4、5年前からバンバン活用されている。
 つまり日本語のコミュニティ掲示板サイトのほうが、メインストリームのサ イトより先を行ってたのである。進化が早かったってことね。
 普通に考えたら、メインストリームのサイトのほうが技術的にもコンセプト 的にも勝っているはずだ。でも、コミュニティ掲示板サイトにおいては、逆の ことが起きたのである。
 実を言うとですね、私はかなり前からそのことに気づいていた。
 だったら早く言えよという話だが、まあそこは勘弁していただいてですね、 私が最初にコミュニティ掲示板サイトの進化度の違いに気づいたのは、世界各 地の日本語サイトを調べたのがきっかけだった。
 ニューヨークに住んでる日本人であれば、「海外のコミュニティ掲示板サイ トなら、やっぱりニューヨークが一番だろ」とか思うわけでしょ。ちなみに私 もそう思っていた。
 ところがどっこい、現実は違うのよ。
 コミュニティ掲示板サイトのレベルは、日本人の数に比例しないのである。 どちらかというと反比例するね。
 たとえば、ボストンやシアトル、パリなどのコミュニティ掲示板サイトは、 驚くべきことにニューヨークのどのサイトよりも充実しているのである。
 日本人の数だったら、ニューヨークのほうが圧倒的に多いのよ。でも、ポス ティングの数はそれらの都市のほうが明らかに多いのだ。
 なぜこういうことが起こるのか。
 答えは簡単よね。
 ボストンやシアトル、パリなどは、ニューヨークに比べると、日本語の情報 量がかなり少ないのである。
 ニューヨークみたいに日刊の日本語フリーペーパーとかないわけだし、ボス トンとシアトルには週刊のフリーペーパーさえないのだ(パリはわかりましぇ ん)。
 また、日本食レストランや日系食料店も少なく、アパートなどの情報を張り 出す昔ながらの掲示板の数も限られている。
 つまり、それらの不便さによってビルドアップされた欲求不満が、コミュニ ティ掲示板サイトにおいて爆破したのである。
 ちなみに、20万人以上の日本人人口を抱えるロスでは、コミュニティ掲示 板サイトはそれほど進化していない。なぜなら、日本語フリーペーパーやテレ ビ、ラジオなどが充実しまくっているからである。
 「日本人コミュニティ内でやり取りされる日本語情報量が少ないほど、コ ミュニティ掲示板サイトは盛り上がる」というのが私の説だ。craigslistのブ レイクの遅さも、これで説明できる。
 要するにね、メインストリームのマーケットって情報がありすぎるわけよ。 情報量が足らないことによって起こる欲求不満というのが、それほど強くない のだ。だからcraigslistのようなコミュニティ掲示板サイトが、なかなかブレ イクしなかったのである。
 craigslistのブレイクの遅さについて、もうひとつ考えられるのは、ウェブ サイトの急激なビジネス化である。
 アパート探しにしても仕事探しにしても、それらの情報をビジネスとして扱 うサイトが次から次へと登場した。みんなビジネスに走ったのである。コミュ ニティ的な視点は、そこでは完全に無視されていた。
 craigslistがやったのは、アパート情報などのコミュニティへの引き戻しで ある。生活に必要な情報をコミュニティでシェアするという考え方だ。
 私たちニューヨークに住む日本人にとっては別に新しいアプローチではない が、メインストリーム軍団にはニューだったみたいね。もしかしたら craigslist現象は、ウェブサイトの使用目的があまりにもビジネス側に偏りす ぎたことへの反動かもしれない。
 というようなことを、ぼんやりと考えてみました。
                    ひろ
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『たわごとコラム』

 先日ひさびさにイチャイチャする日本人カップルというのを見た。
 場所は、日本行きの飛行機の中。彼らは、私の隣りに座っていた(私が通路 側で彼らが窓側)。
 最初ふたりは、友達のような雰囲気だった。
 「おれ、意外と○○○なんだよね」
 「へえ〜、そうなんだあ〜」
 そんなカンバセ−ションが離陸までの間、展開された。
 「このふたりは、友達同士なのか・・・」
 私はそんなことを考えながら、ふたりの会話を聞いていた。
 ちなみに男性は40半ば、女性は30半ばぐらい。風体から見て、彼らは明 らかに観光客だった。
 「友達でニューヨーク旅行って、ちょっと変・・・」
 そう、変なのである。
 友達同士で旅行することはあるが、今回のケースは男と女である。
 「付き合ってるふたり」という説も考えられるが、最初のカンバセ−ション はどう聞いてもお付き合いしてる同士のやり取りには思えなかった。なんか会 話に距離があるのだ。
 なかなかおもしろい素材だった。私は日本に着くまでの間、このふたりを観 察することに決めた。
 それが始まったのは、シートベルトのサインが消えた直後だった。ふたりが いきなりイチャイチャし始めたのである。まるでシートベルトのランプが、彼 らのGOサインであるかのように、私の隣りの2席は突然、「愛の巣」と化し てしまったのだ。
 私は、カップルのイチャイチャに関しては、かなりおおらかなほうである。 「イチャイチャ結構、お好きなように」が私のポリシーだ。
 そんな私を持ってしても、彼らのイチャイチャには特筆すべきものがあっ た。ふたりとも、デレデレなのである。
 ハグは当たり前。腕を絡ませ、足を絡ませ、キスしまくり。私が隣りに座っ ていても、お構いなしだった。
 シートベルトのサインが消えるまであんなに大人しかったふたりが、いきな りよ。そのギャップが私にとっては新鮮だった。
 「メリハリのある人たちだわ」
 私は映画『Monsters, Inc.』を観ながら、感心していた。
 彼らは飛行中、2度トイレに立った。「彼ら」と書いたのは、2回ともふた りでトイレに立ったからだ。
 1回目は8分、2回目は12分で彼らは戻ってきた(マイウオッチでチェッ ク)。
 一緒にトイレに入ったかどうかはわからない。確認しに行けばよかったと、 いまは後悔している。
 彼らは、寝てた時間以外はすべてイチャイチャしていた。睡眠中もしっかり 抱きしめ合っていた。
 「なぜここまでイチャイチャできるのか」
 今度は『The School of Rock』を観ながら、私はそんなことを考えていた。
 まるで親の仇を討つかのようなイチャイチャぶりである。「待ちに待ったこ の瞬間を逃してなるものか」。ふたりからは、そんな意気込みが感じられた。
 刑期を終えて出てきた男と、それを刑務所の前で迎える女。ふたりでタク シーに乗り、駅に向かう。男と女が一緒にいれるのは、そのタクシーの中だ け。すぐに別れ別れになる彼らは、タクシーの後部座席で、我慢できずに始め てしまうのであった・・・
 まさにそんな雰囲気だったのだ。
 「もしかしたら、これが俗に言う“不倫”なのか」
 そのことに気づいたのは、離陸9時間後だった。遅いよ。
 彼らのイチャイチャは明らかに、抑圧された者のそれである。お天道様の下 で正々堂々とイチャイチャできないからこそ、23Aと23Bの席でその欲求 を爆破させてしまったのかもしれない。
 私は彼らの左手に注目した。指輪だ。
 男性の左手の薬指に指輪を発見。次は女性のほうだが、死角に入ってなかな か見えない。「ちくしょう、ちょっとそれが邪魔よ。もう少し左に・・・。そ うそう、もうちょっと、もうちょっと、あと少し・・・」と我慢すること約1 0分。やっと女性の左手を確認した。指輪はなかった。
 「やはり不倫に違いない」
 2回目の『The School of Rock』を観ながら(他におもしろい映画がなかっ たのよ)、私はそういう結論に至った。
 日本に帰ったら、ふたりとも、それぞれの生活に戻らざるを得ないのだ。そ れまでの最後のひとときを楽しんでいるのだろう。
 シートベルトのランプが点いた。彼らのイチャイチャもストップ。シートベ ルトをしたままイチャイチャするのは、彼らにとってルール違反なのか。最後 までナゾだった。
 飛行機は無事、成田空港に着陸。
 預けたバッグをピックアップする際に、ふたりを見かけた。
 すっかり日本の顔になった彼らの間には、イチャイチャのカケラもなかっ た。
 飛行機の中のふたり、幸せそうだったなあ。
                  ひろ
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『今週の歌』

「来週は 5月というのに この天気
        油断してたら いきなり夏よ ひろ」
            


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「週刊Nuts」編集部


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