1995年5月16日号
(No.62)
@週刊Nuts「平成の目安箱」
村山首相様
前略
首相、お身体の方、大丈夫でしょうか。
さて、先日「海外在住日本人の選挙権」を求める世界各地の団体の代表とお会いに
なりましたよね。その時、「総理、”平成の目安箱”ってご存じですか?」と聞いて
きた若造がいましたね。それが私です。はっはっは。いや、あの時は失礼致しました。
突然、あんな質問しまして。
で、その際、首相は「いつも読んでるよ」とおっしゃいましたが、私はイマイチそ
の言葉が信じられず、実を言いますと、あの後、総理府の方にお邪魔したのであります。
訪問の理由は、「誰が目安箱、読んでまんねん?」というものでした。
総理府では、広報室の方にお邪魔しました。そこで「平成の目安箱」に送られてく
る投書がどのように扱われるのか、誰が読んでいるのか、を教えて頂きました。
いやはや、広報室の皆さんは、キッチリお読みのようでした。また、書かれている
内容によって、各省庁に送られるとは知りませんでした。こんな風に読んでもらえれ
ば、こちらも送り甲斐があるというものです。
でもですよ、首相。この状態を国民はもっと知らされるべきではないのでしょうか。
「”平成の目安箱”に送られてくる投書はこのように扱われている」と一般に説明さ
れたことがありますでしょうか? あったらすいません。でも、少なくとも私のまわ
りの日本人たちは知りませんでした。例えば、「最近の投書の数」とか「近頃の投書
の傾向と対策」などといったものをメディアに発表するなどして、「私たちは読んで
いるんですよ」とアピールすべきだと思います。でないと、こっちは読まれているの
かいないのか分かりません。このことも、広報室にお邪魔した時にお話しすればよか
ったのですが、何分あの時は、少々舞い上がっておりましたので、お聞きするのを忘
れてしまいました。
広報室の小川さん、高塩さん、その折はありがとうございました。今後もバンバン
送らせて頂きますので、よろしくお願い致します。
それと首相、お身体には十分お気をつけ下さい。ではまた。 草々
「週刊Nuts」編集人 竹永浩之
目安箱を読んでるのは誰だ?!
となりの”目安箱”コーナーでお分かりのように、首相及び総理府を攻めて参りま
した。では、詳しいことは、会話風に報告することにします。舞台は首相との会見後か
らスタートするのであります。
首相との会見が終わり、皆、席を立つ。そこに私は一瞬のスキを見つけ、首相の横に
忍び寄り、こう言った。
「総理、”平成の目安箱”ってご存じですか?」
「えっ?、ええ知ってますよ。」
「私、毎週ニューヨークから送ってるんですけど・・・」
「あっ、あなた」
”あっ、あなた”って、おっちゃん、ホントに知ってんの?
「で、総理、目安箱お読みですか?」
「えっ、ええ読んでますよ、読んでますよ。」
フッフッフ、ホンマやな。
「あ、そうですか。ありがとうございます。」
イマイチよくわからんな。こうなったら総理府に乗り込んで調べたろ。
舞台は変わって、総理府。入口で何の用で来たのか聞かれる。
「”平成の目安箱”誰が読んでるのか知りたいんですけど。」
「えー? ”平成の目安箱”ねえ」
おっちゃん、中に入れてくれなきゃ、ダダこねるよ。
「ちょっと、こっちに来て。」
守衛室に通され、そこの人が担当の課に電話をかける。そして私が出る。
「あのー、私、ニューヨークから来ました竹永と申しますけど、”平成の目安箱”誰
が読んでるか知りたいんですけど。」
「えっ? あ、そうですか。じゃ、こちらの方にどうぞ。2階になります。」
あっさり担当の課まで行くことになる。何かおかしい。テクテク歩いて行くと、ド
アの前で男の人が待っていた。
「ニューヨークの竹永さんですか? どうぞ中へ。」
物事が流れるように進んでいく。もしかして・・・。
席に案内され、目の前に男の人と女の人が座った。すかさず名刺交換。どこのだれ
ともわからんヤツにこの対応は一体どうしたことか?
「初めまして。ニューヨークから参りました竹永と申します。」
「初めまして。いつも楽しく読ませて頂いております。」
あらま、やっぱりご存じなのね。なんとこの方たち、私がやってくるのを知ってい
たのである。それはそうである。もうすでに送っていたNutsに「訪問するよ」と書
いていたのだから。
「いやー、そうなんですか。」
ここから本題に入る。まず、Nutsを誰が読んでいるか、という件についてだが、
まず最初に読むのが、ここ総理府広報室の方々。それから内容によって各省庁に送ら
れる。それと同時に首相にも送られる。であるからして、”平成の目安箱”に来る投
書はちゃんと読まれている、という話だった。
「ですから、決して”平成のゴミ箱”ではありませんので・・・。」
「あ、そうですか。いやー、はっはっは。」
一本とられた。
では、一体どのくらいの量の投書が毎日送られてくるのだろうか。
「大体、毎日二桁ですね。」
多いときは、数百通送ってきたこともあるという。相手の方たちが話す時に、「N
utsの場合は」という使い方をしていた。名前はすでに覚えられている。しめしめ。
話題が変わる。
「で、総理はお読みになってるのでしょうか?」
「ええ。一応、総理にはお送りしています。今回、お越しになる件も、(Nutsの)
その部分に赤線を引いておきました。」
赤線攻撃である。ということは、総理は私が来ることを知っていたのか。あの「あ、
あなた」という言葉は、本当に「え、わたし」だったのだろうか。
「総理も結構(”平成の目安箱”に送られてくる投書を)読むのを楽しみにしてらっ
しゃるそうです。」
「はー、なるほど。」
てなとこである。この後、最後の挨拶をして、そこを後にした。
さて、お楽しみ頂きましたでしょうか? はっきり言って、私が一番楽しませて頂
きました。いやー、日本政府も結構やるじゃん。そんな訳で、このNutsの”平成の目
安箱”コーナーは、”平成のゴミ箱”コーナーに変名する必要もないくらいに、力強
く読まれているのです。今後も激しく書きたいことを書き続けていきたいと思います。
皆さんもドンドン投書して下さい。では。
編集人
@VOICE
心臓の弱い人は読まないでください。
今日僕は、親知らずーWisdom teeth-をぬくため外科の病院へ行ってきた。NYで
外科に行くなんて滅多にないことだし、邪魔な部分を体から取り除くというのは、新
しい自分に生まれ変わるみたいですがすがしいことだ。そうに違いない。おかしな話
だけれども、治療の直前まで内心わくわくするものがあった。だから僕はリラックス
した気分で治療台に座った。
お医者さんとの親知らず引き抜きセッションは軽い会話から始まった。
「空手の練習とかすぐにやっても大丈夫でしょうか。」
「今日はだめだね。明日からならたぶん大丈夫。どの空手?」
「極真っていって、日本の伝統的なやつです。」
「実は息子が黒帯持っててね・・・。コンタクトありなの?」
「顔面パンチは禁止なんです。」
「そうか。まあ、歯ぬいたら君の顔も空手キックくらったみたいに腫れるかもしれな
いね。」
彼のタイムリーな冗談に僕は引きつったスマイルをくれてやった。
第一の関門はまず麻酔注射である。ほっぺたの内側から針が入って、それを耳のち
かくで感じるその感覚。これはあくまで局地麻酔。全身麻酔をかけて、目が覚めたら
終わってた、というわけにはいかないのだ。これから僕は、骨の一部がいじくられて
引き抜かれるプロセスを目撃しなければならない。
そして、例のチュイーーーン・・・という金属的な音。その時僕は、ベルの音を聞
いてよだれをたらすパブロフの犬のごとく、ほぼ条件反射的に、恐怖感が体の隅々に
しみわたっていくのを感じた。さあこれからあなたの口の中が工事現場になりますよ
とでもいわんばかりのその音!その音のヌシが、これから僕の親知らずをかき回そう
としているのだ。はたして正気を保つことができるのだろうか?しかも僕の意識は、
朝、シャワーを浴びたあとのようにはっきりとしているのだ!
それでも僕は、2本の歯が無事に抜かれるまで、両手で肘かけををぎゅっと掴んで
耐えなければならなかった。まろやかだが生理的嫌悪をくすぐる痛みに耐えながら、
なぜか僕の脳裏には、長州のサソリ固めを長時間耐える猪木の姿が浮かんだ。
歯を無事に抜き終わった医者が僕に聞いた。「Yeah, You made it!! どんな気分
だ?」「アァ、アァム、オオフェイ(OK)。」こういうのを、奥歯にはさまったも
のが無くなった様なしゃべり方とでもいうのだろう。
親知らず2本摘出、しめて800ドル。まだ感覚のない下顎を無理にうごかして、
受付のお姉さんに、何故、親知らずをWisdom(知恵)teethと呼ぶのかたずねて
みた。
「それは一番最後に生えてくる歯だからよ。」「え?」「だから、この歯が生えて
くるころには知恵も多くて賢くなっているだろうってこと。ほんとよ。」
この優しい受付のお姉さんは、僕が余計な質問をしたせいか、痛み止めの薬があ
ることと、それを僕にくれることをすっかり忘れた。
麻酔がきれてくるにつれ、痛みと恐怖が同時に襲ってきているのを感じ、目に涙
がにじんだ。どうせ僕が泣き顔作っても同情する奴などいりゃすめぇ、と僕は、
「こんなもの痛くない痛くない」と自分に言い聞かせながら、小雨の中薬局へと向
かったのだ!
大事なことを言おうとしている人に、余計なことを聞くな。知恵歯とひきかえに
得た知恵である。
雅章
@VOICE2
生きて帰って来たのであります。
日本はオウム一色です。どのチャンネルもオウムオウムと言っております。つい
でに青酸カリ事件はあるわ、成田で何かあるわ、で日本は大忙しでした。
さて、私に関してですが、何をやったかを簡単に説明すると、親に会ってその白
髪の増えたのに驚き、刺身食ってその愛らしさに感動し、東京に出てミニスカート
姿の女の子に「お、お、おーーー」となり、築地で寿司食って「Oh, my God!」し、
紀伊國屋にいって読書に埋没し、政治家に会って「君たち気合いが足らんよ」と言
いたくなり、浮かない顔した日本人を見ては「Hey, What's up?」と声をかけたく
なり、タクシーの初乗り650円に驚愕し、関空の300円アイスティーを売り子
の姉ちゃんに投げつけたくなり、東京のミニコミ屋に行って毎月送っているNutsに
再会して抱きしめてやったのであります。詳しいことは、来週号から掲載します。
では。
編集人
Nutsのメンバー達

よっちゃん作
下のアドレスを押すとメイルが送れまっせ
投書、意見、感想もどうぞ