1995年12月5日号

(No.91)


                     Nutsの表紙です

@週刊Nuts「平成の目安箱」

村山首相様
前略
 ロックフェラーのクリスマスツリーにライトが灯りました。もう今年も終 わりです。
 さて、先週お休みした「ニューヨーク症候群」について、再び語ってみま しょう。
 先日、ロスから来た日本人の方にお会いしました。こちらの日本食料品店 で、この「週刊Nuts」を見つけて電話してきたそうです。
 いろいろとお話ししました。ロスの日本人の事、ニューヨークの日本人の 事、ミニコミの事、他のメディアの事、そして、お互いの個人的な事など。 中でも面白かったのが、ロス日本人とニューヨーク日本人の比較についてで した。その人が言いました。「ニューヨークって、ワケありの日本人が多い でしょ?」。こちらの日本食レストランなどに行き、そこのウエイターやウ エイトレスを見たり、話したりして、そう感じたそうです。何やら「陰」の ようなものを彼らの中に見たとのこと。うーん、かなり鋭い指摘だと思いま す。
 では、ロス日本人には、「陰」のようなものを見ることはないのでしょう か? この方によれば、「ニューヨークほどではない。」そうです。では、 この違いは、どこから生まれるのか? それについても、二人でいろいろ話 しました。ここで、その会話の中で出てきた、「違いの原因」をご-介しま しょう。
『ニューヨークは、アート系日本人が多い』 
 アート系というのは、「写真家、ダンサー、画家、ミュージシャン」など を目指す人々のことです。俗に言う「アーティスト」の方たちですね。「アー ティスト」というと、なんかある意味で、「その心の中に複雑なものを持っ ている」というイメージがあります。すべての人がそうである、などと言う つもりはありません。でも、私は、「アーティストは、相当変人でないと大 成しない。」と考えてますから、ついつい「アーティストというのは、変人 になるよう日々努力している人々=心が複雑な人」と取ってしまうのです。 全然悪意はないんですよ。で、そのアーティストの「複雑な心」が「陰」に 見えてしまうのではないか、と私たちは考えたのであります、ハイ。
『結構、トシの人が多い』
 これも鋭い指摘です。確かにロス日本人に比べて、その平均年齢は、高い かもしれません。具体的な数字はありませんが、ニューヨークに関して言え ば、「ふと気が付いたら30前。私の人生これでいいの? いやいやまだま だ行けるかも。そんなら気合い入れ直し、も一度がんばろ、ニューヨーク。」 というタイプの方が意外と多く、また、ロスでは、「高校卒業ついこの前。 まっすぐ来ました、ここロスに。金の心配ありません。我が両親は神様です。 広い空に青い海。人生一回きりだから、急がず騒がず、いざビーチ。」とい うカンジの方が結構多い、というのが一般に言われるハナシです。ですから、 このハナシに出てくる2つの例、「ニューヨーク人生やり直し」タイプと 「ロス若さで押しますどこまでも」タイプを比べた場合、明らかにニュー ヨークのタイプの方がトシ食ってるのであります。ということはです。やは りそちらの方が人生経験が抱負ですから、ワケありの人生を持つ可能性も断 然高くなるのです。
『ニューヨーク自体に「陰」がある』
 確かにこれは言えます。この街には、確実に淫靡(いんび)な部分があ ります。カリフォルニア・サンキストオレンジ系の太陽がある訳でもありま せんし、歩く脳天気・カリフォルニア産アメリカ人もいません。暗い建物、 かすんだ太陽、黒い冬空、吠えるタクシー。こういうふうにその特徴を挙げ ていくと、なるほど陰湿な街ですなあ。今回、お話しした方も、「ニューヨー クは、空気が沈んでる。」と言ってました。その他にも「この街は、病んで る。」という意味のことを言ってました。うーん。十分病んでるのでありま す。病んだ街、そして、その沈んだ空気の中に住む日本人。彼ら(私も入り ますが。)に「陰」の部分があるのも、ぶっちゃけたハナシ、当然なのかも しれません。
 私と彼が話し合ったのは、以上です。
 ここで、「ニューヨーク症候群」のハナシに戻るのですが、この「陰を持 つ」というのも、「ニューヨーク症候群」の中のひとつの症状ではないかと 思うのです。自分の「陰」の部分をニューヨークに持ち込んだにしろ、この 街の中で身に付けたにしろ、「陰を持つ」ことは、ある意味で、ニューヨー クにいることの証(あかし)になるような気がします。私は個人的に、ニュー ヨーク日本人たちが持つその「陰」は、ニューヨークに住む者の「勲章」だ と思います。いや、そう信じています。
 首相は、「陰」をお持ちですか? では、また来週。 草々
            「週刊Nuts」編集人  竹永浩之

「Nuts世界観光案内」アジア放浪編・パート14

 今回で「ムエタイ回し蹴り」のハナシは終わる。
 先週説明したように、「ムエタイ回し蹴り」の特徴は、その軸足の踵の使 い方にある。踵の回転によって、今まで素直にまっすぐ上がってきた蹴りが 、横向きに走り出す。そして、相手の脇腹かなんかに吸い込まれるのよね。  まず最初に、どのように踵が回るかをご説明しよう。ここにあなたの左足 があり、それがあなたの右足の「ムエタイ回し蹴り」を支えている。要する に軸足なのである。
 すでに右足の蹴りは、発射され、サッカーの蹴りのように下から上へと電 撃の速さで這い上がってくる。ここで、左足の状態に注目する。爪先立ち、 踵はまだ後ろにある。と、その時、一気にその踵が動き出す。左足の爪先の 位置は変わらない。その爪先を軸にして、踵だけが逆時計回りに回転する。 今まで、後ろ側にあった踵が、ここぞとばかり位置を変え、ぐるりと前に出 る。その「ぐるり」の力が駆け上りつつある右足に伝わり、その走る向きが 縦から横へと変わる。サッパリわかんないでしょ?
 簡単に説明するとこうである。ちょっと左足で爪先立ちしてみて頂戴。で、 その左足の踵をそれが前に来るように回転させてみて。爪先の位置は変えず に、逆時計回り。ゆっくりじゃなく、かなり速く。その時、どんな力が自分 の身体全体に働いたか、わかるかな? 身体全体が逆時計回りの方向に回転 したでしょ。「ぐるり」というエネルギーが働いたのにお気づきになったか な。その「ぐるり」がおわかり頂ければ、「ムエタイ回し蹴り」の「ぐるり パワー」も、もうわかったも同然である。
 つまりである。「ムエタイ回し蹴り」というのは、まっすぐ前に上がって 行こうとする蹴りに、踵を使った「身体全体ぐるり回転」による「ぐるりエ ネルギー」を横からぶつけることによって、その蹴りが走る向きをグィーン というカンジで急激に変化させるものなのである。だから、最初は、縦に走 るサッカーに近い蹴りでも、最終的には、横に走る回し蹴りとなるのである。  最後に空手とムエタイを比べると、空手の回し蹴りは、「大外回しのブン 殴り」タイプであり、ムエタイの回し蹴りは、「小内回しのひっぱたき」タ イプなのである。これがわかったからと言って、明日からの生活がバラ色に なる訳ではないが、とりあえず、そういうことなのである、ハイ。
 ここ数週間にわたり、「ムエタイの回し蹴り」について語ってきた。はっ きり言って、これほどつまんないハナシになるとは、想像できなかった。一 応、それなりに面白いハナシになるよう、努力したのであるが、蹴りのハナ シは、所詮、蹴りのハナシなのである。もう少し説明したいこともある。当 初の予定では、「ムエタイのヒザ蹴り」についても言及する予定であった。 でも、もうご勘弁。邪魔臭い蹴りのハナシは、蹴り出して、次回は、バンコ クを舞台にした淡い恋話でもすることにしよう。
 皆さま、ご苦労様でした。          Hiro

「VOICE」

@『日本英語のすすめ』
以前日本に一時帰国した時の事です。時差のせいか真夜中に目が覚めてしま い、しよう事もなくテレビをつけて見ていると、黒ぶち眼鏡をかけて悪く言 えば乱暴で下世話な、良く言えばくだけて庶民的な言葉使いで有名な名物司 会者が衛星中継でアメリカの局を呼び出し、米人アナウンサーに何やら質問 している場面に出くわしました。その時この司会者は自分がいかにも流暢な 英語が喋れるという事で得意になっている様子が見えたのですが、私は逆に その英語のあまりの下品さにビックリ仰天し、いくら日本のテレビ局に英語 のわかる人が居ないからと言って、これを放置しておいたのではテレビ局の 品位にもかかわると心配になったものでした。どうもこの司会者は外国語を 流暢に喋るという事と丁寧に喋るという事の違いが全然わかっていない様子 なのです。喋る事を職業としている人がこのありさまでは困ったものですが、 全体に日本人が外国語を習おうとすると先ず淀みなく喋る事を目標とし、そ れが丁寧か下品かという事は一切考慮にいれない傾向にあるのはどうした事 なのでしょう。この辺で発送を変え下手でも良いから丁寧に喋る事を心掛け てはいかがなものでしょうか。アメリカ人やイギリス人の「ように」喋る必 要は全然なくて、日本人は日本人の「ように」喋ればそれで良いのではない ですか。世界中には、アメリカ英語イギリス英語カナダ英語インド英語スイ ス英語とさまざまな英語があるわけですから日本英語があったところで少し も不思議はなく、アメリカでもイギリスでも純粋の標準語など喋る人はほと んど皆無で、誰もみなそれぞれのお国なまり丸だしの方言を喋って平然とし ているとあっては、日本英語もアメリカ英語の方言の一つと考えれば良いの です。現にアメリカの会社の中でも気の利いたところは日本に派遣する社員 にわざわざ日本英語を教えるのですから、そういう点ではアメリカ人のほう がずっと進んでいると言えます。ロウ プロファイルとかメカトロニクスと いういまや世界中の言葉に訳されている英語の語源が日本語だと知る人はア メリカ人でも少ないのですが言葉などというものはそんなもので、魯迅の言 葉をもじって言うならば元々地上には標準語などというものはなく喋る人が 多くなるに従ってそれが標準語となるのですから、沢山の日本人が日本英語 を喋っていればそのうちそれが英語の主流になるかもしれないのです。アジ アではすでにその徴候が見えており中国英語韓国英語ベトナム英語日本英語 などが渾然一体となったアジア英語が共通語となっているのです。
美華蝶
@ちょっとプロレスの話。
 「SAPIO」という雑誌がある。
 国際関係学に重点を置いていて、すごく面白い雑誌なのだけれど、「ニッ ポン殺しの世紀」だとか、「世界はナノセカンド(10億分の一秒)単位で 動いている」だとか、むやみやたらと大げさな表現を好んで使う。僕は愛情 をこめて「あおりのサピオ」とよんでいる。
 そのサピオの表紙に、すごく気になる見出しを見つけた。
「北朝鮮『平和スポーツ祭典』の欺マンーー(日本の各メディアは)「招待 取材旅行」にこぞって参加、愚にもつかないプロレス興行を大ヨイショ」
 このイベントは、既に行われ、メインイベントの猪木ーリック=フレアー 戦では猪木が勝利を治めている。(よくわからない人すいません。)
 ところで、「愚にもつかない」という修飾語についてだが・・・手元にあ る国語辞典では「ばかばかしい限りで話にならない」という意味だそうだ。
 もちろん、プロレスファンの僕はこれを見てあまりいい気持ちはしない。 確かにプロレスは八百長だとかスポーツじゃないとか嘲りの的になりやすい ジャンルである。サピオの看板ともいえる落合信彦氏もよくプロレスを馬鹿 にする。その彼を売り物にしているということで、サピオという雑誌自体も 自然に落合調になる。「愚にもつかない」は、「平和ぼけ日本」や「知能指 数が低い」などと並んで、いかにも落合信彦が使いそうな言葉の一つである。
 しかし、雑誌がでた当時ではまだ内容も決まってなかった興行に対し、愚 にもつかない興行とは一体全体どういうことだろう???
 すなわち、「プロレス」という言葉自体が、この見出しを作っただれかさ んのボキャブラリーの中から「愚にもつかない」という修飾語を引き出して しまったわけである。そこにはプライドもオリジナリティも何もない。偏見 にみち、プロレスをスケープゴートに使い、勢いでつけてしまった見出しで ある。
 日本の現状を厳しく批判するサピオの姿勢には敬意を払う。しかし考えな しにただ悪口を言っていては、所詮あおって本を売りたいだけか、とポリシー を疑われてもしょうがない。誰の脳味噌があの見出しを考えたかは知らない が、そんな融通のきかぬカチカチの脳味噌など酢づけにしてしまえ。
 サピオがよく使う言い回しに、次のようなものがある。「今やボスニアで は三つ巴のバトルロイヤルが繰り広げられているのである。」 ・・・その バトルロイヤルってのはプロレス用語じゃないんですかねえ。
   雅章
@皆さん、お元気でしょうか?
 さて、ひとつ話があります。ある日本人留学生の方についてです。
 彼女は、ある日本人家庭で住み込みのベビーシッターをしています。家賃 がいらないかわりに、そのうちの子供のお守りをするというヤツです。
 彼女はこの家族に自分の分の食費も払っています。自由な時間もあまりな いそうです。一応、学生ですから、勉強もしなければなりません。しかし、 その家族は、それについて理解も示さず、ただただ彼女をこき使うばかり。 当の彼女は、辞めるにも辞めれず、その顔色は日に日に悪くなるばかりだそ うです。
 私は、思います。「さっさと辞めなさい!」と。
 これが、彼女の選んだ道であれば、私は、何も言いません。でも、もし彼 女が、誰も知る人のいないここニューヨークで、どうしていいか分からず、 「ここにとどまるしかない。」と思ってその仕事を続けているのなら、私は、 自身を持ってこう言います。「そんなところにとどまる必要はありません。 ニューヨークには、もっと楽しく元気な暮らし方があります。せっかくの ニューヨーク生活なんだから、もっとどん欲に、自分のやりたい事、見たい 事、感じたい事を追い求めるべきだと思います。酒飲んだくれるのも結構、 毎晩カラオケに通うのも結構。その瞬間に「したい!」と思うことをやれば いいのです。そのためには、ある程度自由でなければなりません。しがらみ 生活は、日本だけで十分です。花のニューヨーク、自由にやろうじゃあーり ませんか」。
 このニューヨークで、どうしていいか分からず、ひとりで立ち止まってい る方がいましたら、ご連絡下さい。話し相手ぐらいにはなれると思います。 でも、恋の話はナシね。
 そんなとこです。では、また来週。        編集人

先日、うちのレストランのアメリカ人客が、みる貝を食った後、「こんなマ ズいひらめは、食ったことがない!」と言い放った。我々はこういう爆弾野 郎たちに、どう対処したら良いのだろう?
           ひろ

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Hiroyuki Takenaga ---hiro@interport.net