1996年1月2日号

(No.95)


                     Nutsの表紙です

@週刊Nuts「平成の目安箱」

村山首相様
前略
 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。
 首相、日本のお正月はいかがですか? そちらは晴れてますか? 
 私は今、1月1日午後四時半、自分のアパートの屋上にいます。正月の ニューヨークが、目の前に広がってます。いい眺めですね。左手には、ワー ルド・トレード・センターが二本、立ってます。そして、右手には、ビルの 陰から、エンパイヤー・ステイト・ビルディングがちょっとだけ顔を覗かせ ています。
 空は曇り。西の雲の裂け目から赤い色が漏れてます。あの雲の向こう側に は、元旦の夕陽が隠れているのでしょうね。
 平和な正月です。ラップトップ・コンピューターをヒザの上にのせ、パジャ マ姿でこの文を打ち込んでいる自分を考えると、幸せな気分になります。セッ タを履いた足が少し寒いですけど、それもなんだか正月の季節っぽくて、私 の平和で幸せな気分は、雪だるま式に大きくなっていくのでした。
さて、今週は、今年の私の抱負などをポロポロと書いてみようと思います。 思うままに書きます。軽く読み流してください。
 抱負は2つあります。ひとつ、日本語のラジオ番組を始めること。ふたつ、 日本人向け生活相談電話をやること、です。
 それでは、最初の日本語ラジオからご説明しましょう。ここニューヨーク には、日本語のコミュニティー・ラジオ(略:コミラジ)が現在ありません。 以前、ビジネス系や音楽系などの日本語ラジオ番組がありましたが、コミラ ジというのは、このニューヨーク日本人史上、登場したことがないようです。
 ニューヨークには、視聴者や読者と仲が良く、身近な存在で、なおかつ情 報を伝える力の強い日系メディアというのが存在してません。テレビは相変 わらず一方通行ですし、読み物に関しても、読者とコミュニケーションをと りながら、その声を紙面に反映させ、そんでもって、かなりの大型出版物、 というのがないのであります。ついでに言いますと、旬で新鮮とれたての情 報を発信するメディアというのもないですね。
 そこで私は考えたのです。視聴者や読者と時にはケンカし、でも、基本的 には仲が良く、ある程度の「声」の大きさもあり、なおかつ、新鮮とれたて 情報をニューヨークの日本人の皆さんに提供する日本語メディアは、ないも んだべな、と。そして、思いついたのが「コミラジ」だったのです、ハイ。
 この「週刊Nuts」にも言えるのですが、私がやりたいのは、情報のキャッ チボールです。「あんたが投げれば私が返し、私が投げればあんたが返す」 というような情報の交換ごっこをやりたいのであります。で、その時に、投 げモノは、できるだけ軽いに限ります。紙(つまりNutsのような出版物)よ りも電波の方が明らかに軽く投げやすいです。だからこそ「ラジオ」なので す。
 問題もあります。まず、「コストが高い」。次に「音質のFMか、それと も、飛びます飛びますAMか」。そして、「何時やりますの?」。最後に、 「誰が聞きまんねん?」。これらの問題が私たちの行く手に横たわっている のであります。でも、こういうの考えるのだけでも結構楽しいですけどね。 ま、とりあえずやってみます。
 首相、ちょっと寒くなってきたんで、部屋に戻ります。知らない間に、ま わりがすっかり暗くなってしまいました。
 次に日本人向け生活相談電話について。これは、前々からやりたかったの であります。もうちょっと正確にお話しますと、私のような人種(20、 30代、学生、仕事、フラリ型滞在日本人)を対象にした生活相談電話です。  一応、年のために言っておきますが、これは、人生及び恋愛相談電話では ありません。「彼は、あたしのことスキなの。でも、素直じゃないからそれ をうまく表現できないの。カワイー、でも、あたしツラーい。」とか「彼女 のココロは3百万光年の彼方にあるようだ。ヒカリは見える。でもでも、つ かめない。つらいボク。」などという電話を頂いてもですね、私としまして は、「フンガー」状態になるだけですから、こういう電話相談をやるつもり はありません。
 さて、その相談電話を開設する手順ですが、こちらにある「ニューヨーク 青年会」という団体に相談してみようと思います。この「ニューヨーク青年 会」の活動のひとつとして、この相談電話を採用してもらえないもんかなあ、 と考えております。
 私が言い出しっぺですから、それについては、ちゃんと責任持ってやりま す。最初は、個人ででやろうかな、などと思ったのですが、やはりこういう ものは、コミュニティー系団体が持ってた方が、何かと良いのではないかと 考えました。その方が長続きするような気がするのです。
 また、私は、「ニューヨーク青年会」も、そういう日頃からコツコツ積み 重ねる活動を必要としているのではないかと思いました。金がかからず、な おかつ、人々の役に立つ活動です。相談電話をやるのに必要なのは、「電話」、 「机とイス」、「人」、そして、「情報」です。これなら、あんまりお金は かからないでしょう。まあ、とりあえず、「ニューヨーク青年会」の方にお 願いしてみます。はてさて、どうなりますやら。
 さて、以上が私の1996年の抱負になります。ま、がんばってみます。  首相、もう一度、屋上に戻ってみます。ちょっと待ってくださいね。  夜景がきれいです。ちょっと空気が霞んでますが、ビルの明かりは、私の 所まで届いています。元旦の夜ですから、どちらかと言えば、ひっそりとし た明かりですが、それも正月らしくて、いい感じです。
 頭上には、雲があります。東の方がうっすらと明るいのは、きっとお月さ んでせいですね。
 今年もこの空の下で、私たちは暮らして行きます。そして、この空の下の 私たちの声を、去年と同じように、毎週、首相にお届けします。今年こそ、 お返事頂けるのを夢見ながら・・・。
 それでは、繰り返しになりますが、本年もよろしくお願い致します。  
                                                     草々
              「週刊Nuts」編集人  竹永浩之

『VOICE』

@週刊Nuts編集人 竹永浩之様
 いつも楽しく読ませていただいてます。一度お手紙を書きたいと思いなが ら機会がありませんでした。でも今回(#92)は、竹永さんのご質問にお 答えできそうなので、書くことにしました。
 残念ながら、私は質問されてる相手(編:簡単にアメリカ人男性に利用さ れ騙される日本人女性)には属さないかもしれませんが、この手の話題(簡 単にアメリカ人男性に利用され騙される日本人女性、イエローキャブ等)に 出会う度に思うことがあります。これは、日本人女性とアメリカ人男性の問 題ではなく、日本人の男女関係、日本での女性の在り方、または捕えられ方 に原因があるのではないかと。浮気は男の甲斐性、妾の一人も・・・・と、 いう言葉に何人の女性たちが我慢してきたでしょう。我慢と引替に自分の地 位を確保してきたのかもしれません。現代においてこれらの言葉は死語となっ たことを願いますが、現実はどうなのでしょうか。日本人男性の中で誰が、 そのような女泣かせの男を殴ったでしょうか。相手がアメリカ人であるとい うことで、竹永さんが正義感に燃えていらっしゃることは不思議です。何が みっともなく、何が間違っているのかをはっきりさせる必要はありませんか。
 そして、日本人女性はいつまでたっても子供扱いされているのだと思いま す。マスコミをあげて日本人女性の行動は話題の的で、みなさんが心配して くださっています。子供だから子供扱いされるのか、子供扱いされるからい つまでも大人になれないのかはわかりません。
 日本人の男女関係が変わらない限りこの問題は続くのだと思いますが、ど のようにお考えになられますか。同じ日本人として男性の意見をお聞かせく ださい。
 それから私から一つ質問があります。以前『現地採用』の話がありました ね。ニューヨークの大学を卒業されてアメリカの会社への入社希望者もしく は採用された方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。それとも、みなさ ん竹永さんと同じように日系企業への入社を希望されるのですか。
 では、次号楽しみにしています。がんばってください。
                      青木とも子
@青木さん、お手紙ありがとうございます。それと、この手紙の掲載を了解 頂き、重ねて「ありがとうございます」です。
 それでは、ご質問にお答えしましょう。
質問:『日本人の男女関係が変わらない限りこの問題は続くのだと思います が、どのようにお考えになられますか。同じ日本人として男性の意見をお聞 かせください。』
 私も「日本人の男女関係が変わらない限りこの問題は続く」と思います。 この問題の底には、「日本人の男女関係」というのが、グタリと横たわって います。
 ただ、です。この問題をデカく捉えようとする、言い替えると、「日本人 の男女関係は、こうなのだ、ハッハッハ。」調に捉えようとすると、今まで 行われた議論の繰り返しになる恐れがあります。要するに、いきなり一般論 的に「日本人の男女関係」というふうにこの問題を取り扱うと、この問題の 持つ色、ニオイ、肌触り、味が薄くなってしまうような気がします。血の通 わない他人事の議論になってしまうのです。それに、「日本人の男女関係」 というテーマ自体がデカ過ぎます。漠然とし過ぎてて、どっから手をつけて いいか分かりません。それが大事なテーマであることは、よく分かっていま す。でも、いきなり「日本人の男女関係」いうふうに話を持って行くと、一 応、この問題を考えたような気分になるのですが、結果的には、とってもとっ ても薄い味噌汁のような議論になってしまう可能性があります。
 青木さんがおっしゃってるように「日本人の男女関係」を考えることは、 非常に大切です。でも、私は、やり方をちょっと変えてみたいのです。「男 女関係って、やっぱりこうあるべきよね。」、「女性の権利って・・・」と いう一般論的話をする前に、今回のテーマ、『簡単にアメリカ人男性に利用 され騙される日本人女性』にできるだけしがみついて、他人事ではなく、自 分のココロの中のことを深く深く掘り下げてみたいのです。おそらく結果的 には、「日本人の男女関係」という問題にぶつかると思います。でも、それ が「ココロをじっくり観察しました、ハイ。」の後であれば、かなり味のあ る、他人事でない自分事の議論ができるはずです。
 例えば、です。先日、私がお話しした、「『簡単にアメリカ人男性に利用 され騙される日本人女性』を見て、私がスッと思うこと」などを積み重ねて ですね、それをお互いの目の前に並べて、「なるほど。全体的に見渡すと、 こんな傾向にあるな。おっ、でも、ここの部分は、特徴的やね。そんなら、 ちょっと深く行こか。」調にやってみたいのであります。それまでは、「日 本人の男女関係」というデカいテーマに、いきなり戦いを挑むのは、危険だ と思うのです。
 私は何週にも渡り、「あなたたちに質問したいのであります。答えて頂戴。」 と繰り返しとるのはですね、それをやって頂かないと、私がやろうとしてい る議論が始まらないからなのです。
 こんな意見もあります。「自分自身、『私はアメリカ人男性に利用され騙 されているのね、うふっ。』などと思ってる人はいない」。なるほどですね。 でも、彼女たちのココロの部屋の畳の下には、そんな自分に対する不安、疑 問が隠されているのではないでしょうか。
 私は別に、彼女たちのココロの部屋に土足で踏み込んで、畳ひっぺがして、 「ほら〜、こんなところに隠してやがったぞ〜。」などとやるつもりはあり ません。もし、「私、今の自分がなんか変だと思います。ですから、畳ひっ ぺがしてみたいのです。」とお考えの方がいましたら、いっしょに考えましょ か、と言っとるのであります。そして、自分でも自分の畳をひっぺがしてみ たいですし、それをお手伝い頂ける女性の方がいらっしゃれば、非常にハッ ピーなのであります。私は、そういう方がきっといると信じています。
 もしかしたら、過去に「利用され騙された」日本人女性の中に、「昔の部 屋の大掃除」ということで、「ひっぺがし」に参加されたいという方がいる かもしれません。私とすれば、とっても大歓迎です。
 ここでちょっと「ごめんなさい」をしておきます。今回のテーマを考える 時に、一番、「痛い、痛い」するのは、日本人女性です。日本人男性ではあ りません。私の中には、この問題を通して、”日本”とか”日本人”という ことについて考えてみたいという思いがあります。で、はっきり言って、 『簡単にアメリカ人男性に利用され騙される日本人女性』に、その犠牲になっ てください、と言っとるのであります。自分勝手です。「日本人女性イジメ」 と取る方もいるかもしれません。でも、やらせて頂きます。ごめんなさい。
 話を強引に戻します。
 青木さん、私はまだ、「日本人の男女関係」について話す準備が出来てま せん。今はできるだけ、『簡単にアメリカ人男性に利用され騙される日本人 女性』のテーマにとどまって、それについてのお互いのココロの有り様を 「あーだ、こーだ」、言ってみたいのであります。そのうち、「日本人の男 女関係」について話す機会が来ることと思います。その時まで、ちょっとお 待ちください。
 もうひとつの「どの企業に入社」の質問ですが、今週は、ちょっとスペー スが無くなりましたので、来週にでもお答えします。
 今週も「Nuts世界観光案内」休みました。来週、来週ね。
 ニューヨークは、ほぼ完全に、通常の生活状態に復活しました。この辺が アメリカよね。
 なにはともあれ、皆さん、今年もよろしくお願い致します。
                    編集人   

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Hiroyuki Takenaga ---hiro@interport.net