1996年1月9日号
(No.96)
Nutsの表紙です
@週刊Nuts「平成の目安箱」
村山首相様
前略
こんにちは。お元気でしょうか。
ニューヨークは、今(1/7、午後5時17分)、大雪です。外を見ると、雪
が左から右へと降っています。道路は、真っ白。道行く人々は、車が一台も
通らない道路の真ん中をゆっくりと、足下を確認しながら歩いています。
首相、辞任の話、聞きました。やたらと突然で、驚いてしまいました。
首相を応援していた者のひとりとしましては、何やらさびしい気もするの
ですが、首相がそうお決めになったのですから、仕方ありませんよね。明る
く「ご苦労様でした」と言いたいです。本当に、本当に、ご苦労様でした。
という訳で、このNutsが首相にお送りする最後の手紙となります。そこで、
私も考えました。何を書こうかと。できれば、「村山首相」宛ではなく、
「村山富市さん」宛、つまり、政治が、日本が、どうのこうのではなく、村
山さんの個人的なことをお話ししたいと思いました。そしたら、ある事を思
い出しました。
あれは、もう3、4カ月前のことでしょうか。あるNutsの読者の方からお
電話を頂きました。こんな内容の電話でした。
「ニューヨークの・・・というレストランに、村山さんの同級生がバーテ
ンとして働いています。」
この方の話によりますと、その首相の同級生という方は、かなり前にこの
ニューヨークに来て、ある団体で働き、そして、引退してから、道楽を兼ね
て、日本食レストランでバーテンをしているとのことでした。
「よし、この人にインタビューして、それを村山さんへの最後の手紙に書
こう。」と、私は、けなげに思ったのです。しかし、です。不幸なことに、
今日は、この大雪。「もしかしたら・・・」と思い、そのレストランに電話
しました。
「すいません、・・・さん、今日、出勤してますか?」
「・・・さんですか? いつもは、出勤なんですけど、今日はお休みです。」
「・・・・・、あ、そうですか。すいません。」
ダメでした。残念です。こんなふうになるんだったら、もう少し前に、
インタビューしとくべきでした。
もしこの方にインタビューできていたら、それは、首相にとっても、きっ
と面白いものになってたでしょう。そして、このニューヨークに住むという
ことが、もっと身近なものに感じられたことと思います。
「私たち、ニューヨークに住む日本人を身近に感じてもらうこと」。それ
が、この『平成の目安箱』コーナーの目的でした。だからこそ、私は、この
首相の同級生の方にインタビューしたかったのです。そして、首相に「ニュー
ヨークで生きる」ということを、もっともっと身近に感じて欲しかったので
す。
私たちは、在ニューヨーク日本人としてこの街で暮らしています。観光に
毛の生えたような生活ではありません。風呂入って、ウンコして、メシ食っ
て、仕事して、宿題やって、人スキになって、フラれて、泣いて、笑って、
ケンカして、また、明日を迎える。そんな普通のことが分かって欲しかった
のです。
今までに、このNutsも合わせて、67通の手紙を首相にお送りしました。
私たちの生活のニオイは、首相のところまで届きましたでしょうか?
結局、首相からお返事はもらえませんでした。でも、大丈夫です。今年中
に直接お会いしに参ります。その時にご感想をお伺いします。ちょっと復習
しててくださいね。
以上が、首相への最後の手紙となります。
ホントにご苦労様でした。しばらくの間、ゆっくり休んでください。
それでは、これまで、です。夏にお会いするまで、お身体には気を付けて。
お疲れ様、そして、ありがとう。 草々
村山富市ファン 竹永浩之
『Nuts世界観光案内』アジア放浪編 パート17
ムエタイのハナシ、復活。
ある日のこと。
空は、相変わらずの晴れ。10月だというのに、日差しには、まだ夏の勢
いがあった。その日差しの中で、私はいつものように「キック〜、パンチ〜、
回し蹴り〜」などと、外に吊り下げてあるサンドバックと戯(たわむ)れて
いた。ジムの中では、ムエタイ小僧たちが目をギラギラさせながら、親のカ
タキのようにサンドバックをブン殴ったり、蹴ったりしていた。特別何もな
い、ごく自然な午後であった。
ところが、である。そこに見知らぬ二人の東洋人が現れたのである。ひと
りは、メガネをかけたインテリ風。もうひとりは、短パン姿の行動派ってな
カンジだった。東洋人と言っても、一見してタイ人ではないことが分かる。
では、中国人? いや違う。かけてるメガネと、着てる服が中国人趣味では
ない。となると、残るは・・・、日本人。おそらく日本人であろう。一瞬、
みんなの視線がこの二人に注がれた。私もしっかりと彼らを見ていた。
彼らはドアから一歩入ったところにしばらく立っていた。二人ともタオル
を手にしていた。私は彼らの顔をよ〜く見た。そしたら、あなた、目がメラ
メラ燃えてるでないの。気合いが入ってるでないの。「はは〜ん。この野郎
ども、私と同じ”地球の歩き方・タイ編読んでムエタイにチャレンジ”組だ
な。」と、彼らの興奮目を見ながら、私は思った。「地球の歩き方・タイ編」
の中で、このジムが、「無料でムエタイの学べるジム」と紹介されていて、
私もそれを見て、このジムに殴り込んだのである。ということは、彼らは私
の同志たちなのであった。
彼らは、まだ、ドアのあたりでモジモジしていた。気持ちは、鼻血が出そ
うなくらい興奮しているらしかったが、どうしていいか分からないようだっ
た。ジムの連中の眼中には、すでに彼らのことはなく、また前のように殴っ
たり蹴ったりし始めていた。
「やっぱり助けてやるべきよね」。私は、そう思い、サンドバックと戯れ
るのを止め、汗ベトベトのまま、ドアの方に歩き始めた。ケモノのように飛
び跳ねる小僧たちの間をすり抜けて行く。向こうも私のことに気づいたらし
く、じっと私の到着を待っていた。そして、私は彼らの目の前に立ち、海外
における日本人関係は、すべてこの言葉から始まるとされる、お決まりの一
言を口にした。「あの〜、日本人の方ですか?」。
やっぱり日本人だった。「”地球の歩き方”を読んだら、このジムのこと
が載っていて、それできたんだ。」、という意味のことを言っていた。予想
通り、私の同志たちであった。「あ、そうですか。そんじゃ、あっち側に行
きましょ。」と、私は、さっきまで私がサンドバックを蹴っていた場所を指
さし、彼らをそこへと案内した。
外にでるやいなや、彼らは早速、練習の準備を始めていた。「サンドバッ
ク、蹴ってもいいんですよね。」、「よ〜し、シュッ、シュツ」などと異常
に気合いが入っており、シャドウボクシングなんか始めてしまった。二人の
間には、微妙にライバル意識なるものがあるらしく、お互いを牽制しながら、
同時にお互いの興奮を高め合っているようだった。「ちょっと待って、ちょっ
と待って。」と声をかけたくなったが、「でも、勝手にやらせた方が、面白
そうね。」などというイタズラ心が働いて、何も言わないことにした。そし
て、ジムは、休憩時間に入った。
「今、サンドバック使っていいんですかね?」、「ジムの中でやっていい
んですか?」と、誰も使っていない、数本のサンドバックを指さしながら、
彼らは、相変わらずの興奮目で、私に聞いてきた。
「別にいいんでないの。」と、私は、笑いを噛み殺しながら答えた。そし
たら、あなた、この二人、鉄砲玉みたいに”ボーン”ってカンジで、サンド
バックに向かって突進してったのよね。
バンコクの日差しの中、私は、ひとりでニヤニヤしていた。
つづく。 Hiro
『VOICE』
@『状況と人間』
学生時代山歩きをしていた時の事です。大勢で山に篭もる時など観察してい
ると困難な状況になるほど人間は地金を剥き出しにする傾向があるという事
がわかりました。普段大言壮語している者が意外なほどモロくすぐに弱音を
はいたり、何時もは頼り無い感じで目立たない男が極限状況ななっても全然
態度を変えず、相変わらず頼りない感じで目立たないながら一向に落伍する
気配も見せなかったり、普段チャラチャラした軽薄者と思われているものが
危機に遭遇して意外な決断力と指導力を発揮したり、それはもう実に様々で
した。それでわかった事は、普段無理をしてとりつくろってる者は山へゆく
とバケの皮がはげ普段何らかの欠点を持っている者は山ではその欠点が増幅
されて表出し、普段自律を心掛けている者はその修行の程度が正直に顕(あ
らわ)れるという事でした。これは何も山歩きに限った事ではなく、日常生
活とは全く掛け離れた状況におかれると人間はその正体を現すという事のよ
うで、海外旅行とか海外に住むとかいう事になっても大体同じ結果が見られ
るようです。ですから何時か編集人の書いておられたニューヨーク在住の女
性の一部の人が度はずれて態度がキツイというのもさして驚くには当たらな
いでしょう。ただ、山に登った人はせいぜいが十日かそこらでまた平地に下
りて普通の生活を始めるのですが、異国に住んでしまった人はそう簡単に日
本に戻るわけにはゆかないでしょうし、それにある程度長い間欠点を剥き出
しにして生きているとそれが普通になってしまい、日本に帰ってもそういう
姿勢が続いたりするので、それが問題と言えば問題かもしれません。
私は思うのですがアメリカ人の女性にも随分とキツイ人はいてそれが不美人
で頭が悪かったりするともう全然救いがないのですが、キツくて美人とかキ
ツくて不美人でも頭がよく事業の才覚があるなどなにか取り柄があると結構
幸せな人生を送れるようです。で、アメリカ生活が長くてキツクなってしまっ
た日本女性ですが、この人達は何をセールス・ポイントにするのでしょうね。
人間にはどう生きなければならないなどというモデルはないのでみな生きた
いように生きれば良いようなものですが、もしこのキツイ日本女性もそう思っ
ているとすれば、余計な事かも知れませんが私のアドバイスはただキツクな
るだけでなく、生きる姿勢に筋を通した方が良いかもしれません。そうすれ
ばキーンとかスターンとか言って敬愛はされてもフェロシアスなどといって
敬遠される事はなくなるでしょう。これが男なら話しは簡単でハードボイル
ド風に生きれば良いのですが、さて、女性は?
美華蝶
@さて、先週掲載しました青木さんの手紙の中に、もうひとつ、私への質問
がありましたので、それにお答えしようと思います。
質問:『以前「現地採用」の話がありましたね。ニューヨークの大学を卒業
されてアメリカの会社への入社希望者もしくは採用された方はどのくらいい
らっしゃるのでしょうか。それとも、みなさん竹永さんと同じように日系企
業への入社を希望されるのですか。』
お答えします。
「ニューヨークの大学を卒業されてアメリカの会社への入社希望者もしく
は採用された方」がどのくらいいるか、という話ですが、はっきり言って分
かりません。おそらく、その数字をつかんでる人間、及び、団体はないと思
います。でも、アメリカの会社で働きたいと思ってる人間は、結構いるはず
ですよ。ただ、ビザの問題とか、将来住む場所の問題、あるいは、英語力の
問題とかで、実際、入社する人というのは、あんまりいないような気がしま
す。
で、日系企業への入社希望者ですが、こちらの大学を卒業した日本人学生
が、「みんな、日系企業命です。」とは言いません。ただ、日系の方がアプ
ローチしやすいことは確かです。その辺のことも、イマイチ詳しいことは分
からないのであります。すいません。
ついでに私の話ですが、私は別に、日系でもアメリカ系でも構いません。
自分のやりたいことがあって、そして、自分を雇ってくれるような会社であ
れば、チュニジア系でも、トンガ系でも、なんでもいいのであります、ハイ。
そんなところです。
実を言いますと、先日、この青木さんとそのお友達に、実際にお会いした
のであります。楽しいひとときでした。
その時、印象に残った話がひとつあります。それはこんな話でした。
「日本にとって、『アメリカ人男性に騙され利用される日本人女性』の存
在は、恥ずかしいことかもしれないけど、でも、東南アジアに売春ツアーに
行く日本人男性に比べたら、まだ可愛いものでしょ。」
その通りだと思いました。
ハレンチ度、アホ加減度、HIV危険度、日本恥さらし度すべてにおいて、
「東南アジア売春ツアー日本人男性軍団」の方が勝っております。返す言葉
がありません。
ただ、です。それでも、ここでは「アメリカ人男性に騙され利用される日
本人女性」にフォーカスを置きたいと思うのであります。もし、どこか他の
ミニコミ紙上、あるいは、このNuts紙上で、もう少し後に議論したいという
方がいらっしゃいましたら、喜んでお付き合いさせて頂きます。その時まで
は、この「騙され利用され日本人女性」ネタで行きます。ハイ。
そんなところです。では、また来週。 編集人
『今週のひとこと』
「とうとう吹雪やがった。来るなら来い。でも、Nuts配達の日はダメよ。
ひろ」
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