◆◆◆◆◆New York Tabloid Magazine "Nuts Journal"◆◆◆◆◆
   『NYタブロイド・マガジン "Nutsジャーナル"』
  2000年1月25日号 NO.75
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================ ★あるタクシー・ドライバーとの会話★ ================
小西 樹里
「どこから来たの?」
マンハッタンのアパートに戻るため、ブルックリンにあるJFK国際空港から タクシーに乗ったKさんは、運転手にそう話しかけられた。
久しぶりに目にするニューヨークの風景と、正月を過ごした日本での日々 を重ねて物思いにふけっていたKさんは、しばらくぶりに発する自分の英 語の響きに戸惑いを覚えながらも、日本から、と答えた。
「へえー、日本への往復っていくらぐらいするの?」
旅の疲れもあり、静かに風景を見ていたいと思っていたKさんの気持ちと は裏腹に、東欧系の運転手は日本への空路のことを次々と質問してくる。 言葉少なにそれに応答しながら、Kさんは日本でタクシーに乗ったときの ことを思い出していた。天気や街の様子などたわいもないことを、あの運 転手も口早に話していたっけ。
「日本人について不思議に思うことがあるんだ。」
Kさんが学生で政治学を学んでいることを質問に対して答えた直後、その パキスタン人の運転手から返ってきたのは、こんな言葉だった。この人は 一体何を言わんとしているのだろう?Kさんは急速に興味を持った。
「ビジネスマンと学生。大きくふたつのグループに日本人は分かれている けど、学生のグループもまたふたつに分かれるだろ。ひとつは君みたいに 政治やコンピュータを勉強しているグループで、もうひとつは映画やファッ ションなどのアートを学んでいるグループさ。どちらかと言えば、アートを 学んでいる日本人の方が多いように思う。」
「確かに、ニューヨークには特に多いかもね。」
「だけど、中国や韓国とか他のアジア諸国から来た留学生の中でアート を学んでいる学生は、日本人に比べると圧倒的に少ないんじゃないかな。 アメリカって、「世の中すべて金」という部分があるだろ。みんな金儲けを 目指してアメリカに来るわけ。でも僕からしてみれば、日本人は現実より も夢を追いかけて生きているように見える。」
運転手の考えには納得できる部分もあった。しかし東洋人という枠の中 ではなく全体と比較すれば、アートを学んでいる留学生は日本人ばかり じゃないだろうし、第一アートがビジネスに繋がらないとは言えない。Kさ んがそう伝えると運転手は、そうだね、でも僕はやっぱり日本人は少し違 うと思う、と言い、それから再び「金より夢なんだよ」と繰り返した。
タクシーはすでにKさんのアパートの前に止まっていた。もう少しタクシー に乗っていることができたらと思いつつタクシーを降りたKさん、皮肉っぽ いと感じながらも「あなたはすごい洞察力があるよ」と最後に言った。
日本人をそういう風に見ている人がいるという事実が、Kさんには新鮮な 驚きだった。留学生はアメリカに夢を求めている?そうなのかも知れない。 豊かな反面、夢を追うのは困難だと言われる社会から脱出して、苦労を 経験するためにわざわざアメリカに来ている?もしそれが正しいのなら、 運転手が言うように「日本人は夢見がち」だと思われるのも当然だ。
そして、トランクに積んであったスーツケースを下ろしながら、爆弾でも入っ てるみたいに重いね、と皮肉っぽいジョークを返した運転手のタクシーは、 マンハッタンの騒音の中に紛れてすぐに見えなくなった。
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【今日のひとこと】 帰国のため、断りもなくジャーナルの発行を1ヶ月間もお休みしたことを お詫びいたします。今年もストリートの隅に転がっているような話題の 提供を心がけていくつもりです。また、読者の声をジャーナルに反映さ せていきたいと考えておりますので、ご意見・ご感想などがありましたら ぜひ下記のメールアドレスにご一報ください。今年もよろしくお願いいた します。(こ)
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「Nutsジャーナル」編集部

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